よみがえれ有明海/座談会 諌早干拓を問うC

“漁業守れ、自然守れ”声あげ始めた人々/豊かな海再生は次世代への責任

しんぶん赤旗九州・沖縄面2001年3月25日

幼稚魚が育つ大事な揺りかご

◎東幹夫・長崎大学教育学部教授
 去年の長崎県水産試験場の研究でひじょうに画期的な研究があったんです。ガンバ(トラフグ)が、自分の生まれた海に帰ってくるということが立証されたんです。有明海で生まれたガンバは、外海に行って日本海や東シナ海の方にも行って育った後、また帰ってきているんです。同じようなパターンの魚がいっぱいあるはずなんです。

 ところが、帰ってきたけれど、そういう育つナーサリーランド(揺卵場)がなくなってしまった、潮受け堤防でふさがってしまって入れないという問題になるわけです。長崎県の沿岸漁業の有明海から離れた外海の方の漁業にとっても、諌早湾というのはひじょうに大事な揺りかごなんです。水産県・長崎には、そういう観点に立った対応をしてもらいたいですね。

八代海漁民や球磨川漁協も

◎小沢和秋衆院議員
 いま強烈な印象を持っているのは、有明海の問題が八代海の漁民に大変な衝撃を与えていることです。八代海に注ぐ球磨川の源流、川辺川にダムをつくる計画に、いままでもダムが海の生産力に影響を与えると感じてきたが、有明海の問題が起きて、「上にダムをつくらしたら水がだめになって海にも影響がでる」と、37の沿岸の漁協が「自分たちにもダムをつくったらどんな影響が出るか調査をしろ。それまでは川辺川のダムの着工まかりならん」と言い出した。球磨川漁協の人たちがダムの漁業補償を否決したのも、有明海の影響があると思うんですね。

 そういう意味で、連鎖反応を起こして、九州で漁業を守り、自然環境を守っていくという運動に大きく広がっていく一つのチャンスだと思います。この問題を大事にして、ひとつ一つをつないで大きな力にしていきたいと思っています。

環境まもる二十一世紀型社会への転換の契機に

◎宮入興一・長崎大学経済学部教授
 諫早のところで、タイラギがだめになったという話のときには、まだ全体に火がつかなかったですが、いまノリをふくめ有明海全体、四県にまたがって、いよいよ広域的な環境の問題になってきました。環境というのは、人々のいちばんの土台ですから、そこから直接の人もいれば間接的に生業が成り立っている。それ自体がわれわれの生有のいちばんの基盤なわけですから、それを大事にしていく大きなうねりになってきた。
 そういう意味では、二十一世紀型への転換の歴史的契機だと思います。

 二十世紀は自然を破壊し、自然に負荷をかけながら、もっぱら高度成長とか物的富追い求めてきたが、そういうことが行き詰まってきている。その負(マイナス)を積み重ねた結果、その最終の姿が地球環境の悪化ですよ。そういう二十世紀型の公共事業ではなく、二十一世紀を展望できるような、自然を回復し、自然を保全し、そのなかで人々の生業が、漁業が成り立ち、そして人々の豊かな生活が成り立っていくような公共事業に転換する大きなきっかけになるような新しい事業として、二十一世紀有明海再生プロジェクトともいうべきものをおこなう。そのことが、将来の世代に向けてもわれわれの責任であると思うんです。

◎小沢和秋衆院議員
 私は有明海の再生をめざすという大きな共同を組むことができれば、そうとうな要求を実現できる可能性がある状況だと思うんです。吉野州可動堰もつぶし、中海干拓も止まり、次はこの諌早だと思うし、川辺川だと思うんです。それが見えてきていると思います。そういう意味で、松本さんも息子さんとともに、有明海を再生し漁業を続けられる展望を作り出せますから、がんばってください。

島原5漁協が市・県に申し入れ

◎松本正明・有明町漁業協同組合長
 漁民は、せっぱ詰まっても、ある程度の水揚げがあって、少しのことは辛抱しようかという気性もあるですもんね。環境アセスメントで「湾外には被害がない」というのを信じて、「しょうがなか」と賛成してしまった漁民がいるのを考えてしまったり、一人が声を上げてもだれもついてこないのではないかという不安もあるわけです。本当にせっぱ詰まっても、みな声を出しきらんような性格なんです。

 こんど3年たってやっと、諌早湾干拓のせいだという声が広がってきたから、漁船漁業の人たちもだいぶ変わってきた。最初は、私が(漁連など)会議の中で(諌早干拓の中止や水門開放を)言ってもとりあげてもらえなかった。島原市の五つの漁協が声を上げて、島原市や県の振興局に申し入れましたが、大変喜ばしいことです。これから先は、こういう声を大事にして、上の方にも聞いてもらいたいと思って、行動しようと思うわけです。(おわり)

出席者(敬称略)
 東幹夫・長崎大学教育学部教授(動物生態学)
 小沢和秋・日本共産党衆院議員(九州・沖縄ブロック選出)
 松本正明・有明町漁業協同組合組合長
 宮入輿一・長崎大学経済学部教授(財政学)

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