よみがえれ有明海/座談会 諌早干拓を問うB

「宝の海」へ計画の転換が大事/環境再生と防災の両立は可能

しんぶん赤旗九州・沖縄面2001年3月24日

水門を開けた場合の問題

◎東幹夫・長崎大学教育学部教授
 宮入さんが言われたように、調整池がどんどん埋まってきています。泥の中に有機物や重金属などがたまっていく一方なんです。そうしたものを体内に蓄積してきた海の生物が死滅してしまったわけですからね。

 水門を開けた場合、堤防のそばの硫化水素を合んだへドロを巻き上げる可能性があります。硫化水素をふくんだ泥がアサリ漁場などを直撃したら困るというのは分かるんです。そういう場合は、それは政府や県が責任を持って補償しなければならないと思います。

◎小沢和秋衆院議員
 研究者の方たちにぜひ、そういうヘドロを巻き上げない方法で水門を関ける方法を検討していただきたいですね。長崎の漁民のみなさんにしてみると、水門を開けることに大きな不安があることは事実だと思うんです。その点で韓国の始華(シーファ)潮の経験は教訓的ですね。水門を開けた直後はヘドロを巻さ上げて悪くなったが、何年かたったら魚も帰ってさて良くなったといいますね。私は、水門を開けて二年三年という時間をかければ中に海水も入って干潟も回復するし、そういう長さで調査をやっていけば、諌早も同じ状況がはっきり出てくるのではないかと思います。

干拓事業の失敗認めて

◎宮入興一・長崎大学経済学部教授
 いま重要なのは、「ひん死状態」の有明海を再生することだと思うんです。そのためには、有明海の「子宮」であり「腎臓(じんぞう)」でもある諌早の干潟を回復することなしには、「宝の海・有明海」は回復しないわけですから、干拓事業は失敗だったということをきちんと見据えて、有明海再生計画に転換していくことが大事だと思います。

 水門を開けるか開けないかということ自体は目的ではありませんから、有明海再生計画の中で水門開放問題も位置づけて、できるだけ自然に負荷を与えない形で開放することだと思います。
 その上で、瀬戸内海保全特別措置法がありますが、有明海再生特別措置法を提起してもいいかもしれません。そういうことを積極的に打ち出すことが重要だと思います。

◎松本正明・有明町漁業協同組合長
 私ごとになりますが、四年前息子に「跡を継がんか」といって、ほかの就職を全部断りました。「地元でがんばれ」と残したんです。いまになると跡を継がして良かったのかと考えるわけですよ。漁業を営む上では自分に誇りを持っているわけです。息子にも誇りを持って漁業をしてもらいたいし、息子の息子にも漁業を続けていってもらいたいと本当に思っています。だから「元の宝の海に返してほしい」しというのが漁業者としての気持ちです。

洪水対策に役立たない

◎小沢和秋衆院議員
 もう一つ、水門を開ける上での抵抗は、防災の話ですよね。「水門を開けろ」という話を衆院予算委員会でやったら、諫早出身の自民党議員がすぐ横に座っているんですが、この人が「諌早市民を見殺しにするのか」とやじるわけです。実際には、閉め切った翌年、諌早に集中豪雨があり、九割の市民に避難勧告が出て、かなりの被害がありました。それで、建設省があわてて本明川のしゅんせつを始めたというんですね。潮受け堤防が完成しても諌早市民の役に立たなかった証拠です。

◎宮入興一・長崎大学経済学部教授

 防災には、高潮、洪水、低地における排水不良の三つがあります。洪水という点でまったく役割を果たさないというのは、内閣の答弁書の中でも認めている。建設省(現国士交通省)は、自分たちの責任で「河川は私たちに任せてくれ」と、まだ工事は完成していないけれど、川底をしゅんせつすることも含めて、堤防を補強することで、洪水については100%とはいわないけれど問題ないといっているんですから。

 低地の排水は、水路を拡幅したりしゅんせつして、どこでもやっているようにボンプアップすれば解決でさる問題です。高潮は、佐賀や日本中どこでもやっているように、海岸堤防をきちんと整備すればいい話です。それを何十年問にもわたって放置して老朽化するにまかせてきたわけですから、その行政責任こそが問われます。

 漁民の方たちの生業が将来世代にも十分続くように有明海の環境を再生することと、防災を両立することは十分可能だと思います。(つづく)

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