2007年4月8日(日)「しんぶん赤旗」

諫早湾閉め切り10年 第1部

沿岸漁民の叫び(3)

漁に支障でる導流堤


写真

(写真)排水対策用の導流堤(上、試験中のもの)とブロック=農水省提供

 調整池から放流される汚濁排水をめぐってホットな問題が起きています。

 諫早湾が一九九七年に閉め切られるとすぐに諫早湾内の漁場に影響が出るようになりました。

汚濁排水

 とくに北部排水門から三キロほどしか離れていない諫早市小長井町の漁場に淡水の汚濁水が直撃するようになりました。

 小長井漁協など諫早湾内の四つの漁協は、農水省に対策を要望。農水省は、海底に「導流堤」とよばれる新たな堤を設置し、汚濁排水を諫早湾中央部へ導くことを提案しました。しかし、佐賀、福岡、熊本の三県漁連の了解が得られず、着手されずにきました。

 今回問題の導流堤は前回計画のものと異なり、海水と淡水が混ざるようにした攪拌(かくはん)作用と導流作用をかねたもの。縦横六メートル、高さ二・三メートルの内部が空洞のコンクリート製ブロックを排水門沖に並べる計画です。農水省は、北部排水門の沖四百メートルにブロックを二列八百メートル、南部排水門沖に一列四百メートルを設置すると発表しました。

 農水省は、昨年二月から全長五十メートルの試験用導流堤を設置、農水省は「有効性を確認できた」として、三月初めに着工。「湾内四漁協が導流堤設置を了承し、県漁連にも説明し了解が得られている」(農村振興局)と説明しています。しかし、組合員の総意ではなく、小長井漁協(組合員九十八人)の昨年秋の臨時総会では三十六人が反対、注目されました。

漁民反対

 反対票を投じた同漁協の松永秀則理事は「導流堤の設置で潮流が変われば、どういう影響がでてくるかもわからない。アセスメント(環境影響調査)もなくやるのは反対だ」と主張。「工事は、スズキやコハダなどの漁の操業や船の移動に支障が出る。生活にかかわる大事な問題の議決は、三分の二以上の同意が必要なはずだ」と訴えています。

 松永さんらは三月六日から、工事現場海域で操業、有明海周辺の漁民らの支援も受け、九州農政局に工事中止を求めました。

 農水省は「導流堤は、もともと湾内四漁協の要望」とのべ、アセスメントもしない方針です。諫早湾の漁場を悪化させてきたのは調整池からの汚濁排水です。排水の流れをどう変えようと、その汚染源がなくなるわけでも量が減るわけでもありません。研究者からも「海のなかに障害を増やすだけで根本的な解決にならない。税金(約十一億円)の無駄遣いだ」との声が上がっています。
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