「しんぶん赤旗」2024/3/23

「子どもの権利オンブズパーソンながさき」が提言

 学校には行けるものの教室に入ることができない「別室登校」が小・中学校で増加している事をふまえ、長崎県は校内別室で児童・生徒が過ごせるよう支援員を派遣する事業を2024年度から始めます。県の取り組みに先駆けて、校内別室支援事業を独自に取り組んでいるNPO法人「子どもの権利オンブズパーソンながさき」(長崎市)は県と県教委に提言書を提出(13日)しています。

県の事業は24年度に9市町で実施。市町が小・中学校に子どもたちの居場所として「校内教育支援センター」を設置し指導員を130人配置する予定で、その報酬や交通費を県が2分の1を上限に補助するというもの。

 こうした事業について、提言書では、①学習するためだけの場所ではなく、休息や傷つきの回復などケアを優先する②「教室へ戻る」という結果のみを目標としない支援にする③子どもが「学びたいと思った時に学べる環境」として設置する―の3点を十分に考慮してほしいとしています。

 同法人は子どものいのちと権利が大切にされる社会を目指し、相談活動などに取り組んできました。独立行政法人福祉医療機構の助成を受け支援事業を21年度から実施。長崎市立の小・中学校各1校ずつで取り組み、23年9月からは西海市立の小学校1校、10月からは佐々町での実践を地域の団体と連携して始めています。

支援員が子どもたちと一緒にゲームをしたり、話し相手になるなど、生徒との信頼関係を深めながら居場所づくりをしています。校内の廊下などを歩き回っていた生徒に支援員が丁寧に寄りそう中で、授業を抜けても歩き回らずに自ら別室に来るようになった例など、成果を上げています。

同法人では、子どもの権利を理解し、意見や意思を尊重できるよう支援員に養成講座を受けてもらい、研究者など専門家とも連携し定期的なミーティングを行っています。

「自分たちが3年間で得た学びを生かしてほしい」と行った申し入れに関して、古豊慶彦代表理事(36)は、三つの提言をいかすために、県は市町に校内教育支援センターの持つ役割について明確にすることと、指導員の人選や研修の重要性などを強調しました。

15ページに及ぶ提言書では、別室を利用している子どもたちの多くが心身ともにギリギリの状態で登校し、別室にたどり着くだけで既に疲れきっていると指摘しています。古豊さんは「子どもたちが、しんどいことがあってもここならゆっくりできるという場所であることが大事」だとのべ、「安心できる環境や関係を経験することで将来、理不尽や困難に直面した時に、頼れる場所を探そうとする力につながるのではないか」と語りました。