「しんぶん赤旗」2024/9/5

改悪入管法施行から3カ月現場では
▽「傾聴の会」川田邦弘さん(72)に聞く

 外国人の人権侵害を拡大し命を危険にさらす改悪入管法(出入国管理及び難民認定法)の全面施行(6月)から3カ月が経ちました。長崎県大村市の入国管理センターに収容されている外国人を支援するボランティア団体「傾聴の会」で12年に渡り、被収容者に寄り添い続けている川田邦弘さん(72)に施行後の被収容者の様子などを聞きました。

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 現在、被収容者と定期的に面会を続けています。健康状態はどうか、困っていることはないかなど聞きとり、差し入れもしています。 

 改悪入管法で導入された監理措置制度では、家族や知人らを「監理人」にして、その保護下で社会生活を送ることを見通しているようです。この制度では「被監理者」が就労したり、勝手に県外に出た場合などの違反について「監理人」は入管に報告する義務が科され、家族が「監理人」の場合、家族間で密告をしなさいというようなものです。報告を怠れば罰金制度まであり、まるで密告者を育てているようなもの。普通の人の感覚とは相容れません。ましてや弁護士や支援者団体が引き受けるわけがないし、「監理人」になる人はいないのではないか。見つけられないと「あなたは帰るしかない」と送還されてしまう。

 入管職員は、国内に親類縁者、友人・知人もいない被収容者に「監理措置を頼んだ方がいい」と説明しているようで、本人も監理措置を頼むつもりだと話していました。頼れる人が誰もいない人に監理措置を案内しているとはどういうことなのか。「監理者を見つけられないなら帰国するしかない」と引導を渡すつもりではないでしょうか。

 先日、2人の被収容者と面会した時に1人が「今まで仮放免担当者と言っていた人が監理措置担当者に変わった」と話していました。また、2月に大村入管に収容され仮放免申請したが5月に却下された人が「監理措置が有利ですよ」と勧められたそうです。監理措置になった被収容者はまだ見ていませんが、そちらにシフトしだしたのではないでしょうか。

 一方、仮放免制度は病人が出た場合のための逃げ道の一つとして維持し、元気な人には監理措置を勧めている。しかし、被収容者は監理措置と仮放免の違いもわかっていません。

 「傾聴」という言葉の通り、私たちは耳を傾けて寄り添うことしかできません。1カ月以上面会があくと、「もっと早くきて」と言われる。僕らにとっては20〜30分だけど、僕たちを待ちわびている人もいます。

 難民申請を聞き入れられず、12年間も収容されている人もいます。それぞれ一生懸命に生きていこうとしているのに、日本に来たことが不運だと言わんばかりに切り捨てているのはあまりにもおかしい。彼らを人として扱わないことが腹立たしい。人権をないがしろにする政治を変えるしかありません。入管に限らず、このままでは日本は大変なことになる。