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「しんぶん赤旗」2024/9/22 |
被爆体験者訴訟 国の控訴 |
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国が定める被爆地域外で被爆したために被爆者と認められない長崎の「被爆体験者」が被爆者と認めるよう求めた地裁の判決を受け、国は控訴することを表明しました。一方で岸田文雄首相は、裁判の原告かどうかにかかわらず、全ての「被爆体験者」について、「被爆者と同等の医療費助成を行う」と明らかにしました。 またも、被爆者援護法で救済せず、あらたな「事業」で対応する―。ここに「被爆体験者」を被爆者と認めようとしない国のかたくなな姿勢があります。 内部被ばく認めず 国は、2021年の「黒い雨」広島高裁判決を受け入れました。しかし、閣議決定した「菅談話」で「“黒い雨”や飲食物の摂取による内部被ばくの健康影響を科学的な線量推計によらず、広く認めるべきとした点については、容認できるものではない」と、「黒い雨」による内部被ばくを認めない姿勢を示しました。 被爆者援護法1条3号(身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者)には「黒い雨にあったこと」と「11疾病のいずれかにりかんしていること」の要件はありません。しかし、広島については2要件を導入して被爆者と認定。一方、長崎については、「被爆体験者」事業に七つのがんを医療費助成の対象としただけにとどまりました。 国は今回も「黒い雨」による内部被ばくを認めない姿勢を持ち込み、「黒い雨」が降ったことを認めた三つの地域の原告への判断は受け入れられないとして控訴しました。 原爆被害を矮小化 国は、原爆被害者に対し、一貫して分断と差別を持ち込み、形を変えて被爆者援護法の外で援護を拡充し、「医療費助成」などを行うかわりに、被爆者とは認めない姿勢を取り続けています。 新たな事業創設により、「被爆体験者」に対し、幅広い一般的な疾病について被爆者と同等の医療費助成を行うことで、被爆者と何が違うのかの矛盾を広げることになります。 原告団長の岩永千代子さん(88)が「医療費が欲しいのではなく、被爆者と認めてほしいのです」と述べているように、被爆者援護法による救済を求めています。 国は、被爆者と認めないことで、原爆被害を矮小(わいしょう)化しています。被爆80年を前に、「被爆体験者」は高齢化しており、速やかな救済が求められます。 岸田首相が「唯一の戦争被爆国」と声高に訴えるなら、すべての原爆被害者を被爆者と認め、被爆者援護法に基づく救済を行うべきです。(加來恵子) |
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