「しんぶん赤旗」2023/8/9

被爆者渡辺千恵子さんの歩み展

 車いすの被爆者として国内外で被爆体験を語り続けた渡辺千恵子さんが64歳で亡くなって30年。その歩みを紹介する企画展が、長崎県立図書館郷土資料センターで開催されています。(同センター主催、20日まで)

渡辺さんは、学徒動員先の三菱電機製作所で17歳の時に原爆に遭い、鉄骨の下敷きとなり脊椎を骨折。下半身不随となりました。

展示では、渡辺さんの人生を「第一」から「第四」までに区切り、寝たきりで、自暴自棄になり自殺も考えたという時期から、さまざまな人たちとの出会いで被爆の語り部として海外を旅するまでになる、その変化の過程や生きざまを写真や当時の新聞記事、手書き原稿などの資料84点(関連映像4点を含む)で紹介しています。

 「第三の人生」(1955年〜)では、渡辺さんに深い影響を与えた社会学者の鶴見和子さんとの往復書簡。自宅にこもっていた日々から4人の被爆女性とともに結成した「原爆乙女の会」発行の「原爆だより」。「第2回原水爆禁止世界大会」に母親にかかえられ参加し、壇上から「みじめなこの姿を見てください」と核廃絶を訴える写真とその手書き原稿など、貴重な資料が並びます。

「第四の人生」(77年〜)では、50歳で車いすの生活を始め、本格的に自立した渡辺さんが、車いすの被爆者として国内外で被爆体験を語り続ける様子を紹介。執筆した書籍も展示しています。

 長崎総合科学大学長崎平和文化研究所所蔵の遺品の調査・分類に取り組み、展示に協力した木永勝也客員研究員は「原爆被害を外に向け訴えることが、被爆者の人間性を回復することになる。渡辺さんの訴えがみなさんに影響を与えていると思う。彼女の歩みを多くの人に見てほしい」と語りました。