「しんぶん赤旗」2023/3/4

最高裁 司法の役割放棄 諫早湾干拓


 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、潮受け堤防排水門の開門を命じた確定判決の無力化を国が求めた訴訟で、最高裁第3小法廷が漁業者側の上告を退ける決定(1日付)をしたことに対し、「よみがえれ!有明訴訟」弁護団が2日、「司法本来の役割を放棄したもの」との声明を発表しました。

 声明では「確定判決に基づく強制執行が軽々に権利濫用(らんよう)と判断されることになると民事訴訟制度の根幹が揺らいでしまう」と指摘。2022年3月の福岡高裁請求異議差し戻し審判決は「厳格な基準に基づく判断を放棄する不当なものであり、『漁業者側の言い分を踏まえると、単純な評価は困難と言わざるを得ない』と述べるなど、自らの判断への自信のなさを露呈している。こうした杜撰(ずさん)な判断で確定判決に基づく強制執行を権利濫用とすることは許されないことは明らかだ」と批判しています。

 今回の最高裁決定は「憲政史上初めて確定判決に従わなかった国を免罪」していると糾弾しています。

 その上で、「採貝、漁船漁業の被害や、近年はノリ養殖においても甚大な被害が続いている」と強調。「こうした被害を生み出さない根本的解決のため、有明海再生に向けた開門と開門調査は不可欠であり、そうした漁業者の利害関係を堂々と掲げ、有明海沿岸の人々それぞれの利害関係にも配慮しながら、真摯(しんし)に話し合いに臨む所存である」と述べ、「いまこそ、紛争解決のための話し合いの実現を」と呼びかけています。