「しんぶん赤旗」2022/2/21

JR九州の駅無人化に抗議の声を上げる

 JR九州は各地の駅の無人化を強行し、3月からさらに6県29駅を無人化しようとしています。特に大きな影響を受けるのが障害者です。長崎県でみてみました。
 足に障害があり車イスを使用している長崎県長与町在住の管田多津子さん(41)は、2020年3月のダイヤ改正により、長与駅が無人となる時間ができたことで、JRを利用する際に「事前予約」を強いられ、自由に列車を利用できなくなりました。

 管田さんはアクセサリー作家で「長崎バリアフリーサークルAmi」の代表。仕事でJRを利用していました。通常、車イス使用者は列車の乗降時、列車とホームの間に駅員からスロープを渡してもらい乗車します。無人の駅では事前に予約し、最寄りの駅から駅員が派遣されることになっています。

21年7月、長与駅から乗車するため、事前に電話で予約していましたが、倒木でのダイヤの乱れを口実に列車が到着しても駅員が来ず乗車できませんでした。しかも、駅員不在だと思いタクシーで移動しようと改札へ向かうと、駅員は駅員室で談笑していました。乗車できなかったことはこれ以前にも2回あったといいます。

 7月の件があってから管田さんは、「次も同じことを繰り返されるのではないか」との不安と恐怖からJRを利用しようとすると過呼吸や動悸(どうき)が起き、列車に乗ることも駅に向かうことすらできなくなりました。1人での外出もままならなくなり、現在も心療内科に通い治療を続けています。

 管田さんは憤ります。「なぜ、障害者だけこのような目にあうのか。私たちは普通に生活をしたいだけなのに」と。

 管田さんは、ダイヤ改正実施後の20年10月、JR九州に対し、予約しないと乗車できない状況の改善などを求め署名活動を始めました。21年10月に同社に2907人分の署名と要望書を提出。しかし、同社から文書回答は数回あったものの、誠実な対応がなかったため、国土交通省に「状況の報告と改善の指導を求める要望書」を提出しました。

 これを受け、同省鉄道サービス政策室は11月、JR九州に対し「利用者の立場に立った対応を心がけ、適切に対応するよう」口頭で指導しました。
 しかし、指導を受けた後も、同社は不誠実な対応に終始。1月26日に初めて、長崎支社の営業課長と長崎駅長から直接謝罪がありましたが、課長の話によると障害者が乗車できない事例が他にも起きていることがわかりました。「再発防止に努めているといいながら。指導が徹底されていないのではないか」管田さんは語気を強めます。

 経営合理化のためとして、さらに無人化をすすめるJR九州。管田さんは言います「豪華な観光列車や『長崎新幹線』に使うお金があるのなら、スロープの設置や社員教育などに使うべき。無人駅にするなら、きちんとバリアフリーにしてからにしてほしい。全国には声をあげられず外出をためらう障害者がいると思う。これは、障害者だけの問題ではなく社会全体の問題。今後、どのような対策を取るのか、JR九州に問い続けていきたい」