「しんぶん赤旗」2022/5/31

記者に性暴力賠償命令 長崎市幹部の職権行使認定

 長崎市の2007年当時の原爆被爆対策部長(故人)から取材中に性的暴行を受けた上、同市により虚偽の風説を流布され二次被害を受けたとして、女性記者が市に対し約7400万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟で30日、長崎地裁の天川博義裁判長は「職務権限を行使して性暴力に及んだ」と認め、市に対し約1975万円の支払いを命じました。(関連15面)
 判決では、部長と友人関係にあった市幹部職員らが「男女の関係だった」などの虚偽の風説を広めたことも認定。これを把握した市が二次被害の防止を怠ったのは注意義務違反だとし、国家賠償法上の責任があるとしました。
 女性にも過失があったと主張し、「強姦(ごうかん)神話」に基づく過失相殺を求めていた市の主張は認められませんでした。
 訴状などによると、07年7月、部長は取材に応じるふりをして女性記者を深夜に呼び出し、性的暴行を振るいました。しかし、部長は「合意があった」などと市長らに語り、性暴力を否定。女性はPTSD(心的外傷後ストレス障害)との診断を受け、休職を余儀なくされました。
 中野麻美弁護士は「基本の部分において全て主張が認められ、市の責任が追及された」と判決を歓迎。「市にはきちんと責任を取って、謝罪を求めたい」と述べました。
 判決後の記者会見で原告女性は「つらく、苦しく、倒れこむこともしばしばあった」と振り返り、「今日の判決が、この社会で暮らす女性にとって一筋の光となることを希望します」と語りました。

 女性記者が取材中に長崎市の部長(故人)から性暴力を受けたとして同市(田上富久市長)を訴えた裁判で、長崎地裁(天川博義裁判長)は30日、部長の職権乱用による暴力を認め市に損害賠償を命じました。同日午後、原告が初めて記者会見に姿を見せ「努力した15年が報われた。事件の責任は市側にあると判断してもらえたことに喜んでいる」とかみしめるように語りました。

 「勝ちました! 勝訴です」。同日午前10時すぎ、支援してきた新聞労連の吉永磨美委員長と南彰前委員長、代理人の平山愛弁護士が「長崎市は謝罪を」の垂れ幕を手に地裁玄関から出てくると、全国から駆けつけた新聞労連組合員や支援者から拍手が湧き起こりました。
 吉永委員長は女性役員と抱き合って勝利を分かち合います。法廷で判決を聞いた特別中央執行委員の中塚久美子さんは「職権乱用が認められたことは記者にとって大きな意味を持つ。こみ上げるものがあった」。出版労連の酒井かをり委員長は「性被害をなかったことにしてはいけない。勇気を持って立ち上がった原告に敬意を表したい」と話しました。

 同日午後、女性が会見場に姿を見せると万雷の拍手。穏やかなほほ笑みをたたえた女性は片手を胸に当て、会釈して応えました。「被害者の悲しみや喪失を力に変えていけるようにともに歩んでくれた方々のおかげで、よき日を迎えることができた」と支援者に謝意を表明。「私たちはよくやった、そうねぎらいあいたい」と力強く語りました。