「しんぶん赤旗」2022/6/1

長崎市 女性記者暴行事件 地裁判決が示すもの
“黙らされてきた人 声あげていいと”

 2007年、当時の長崎市原爆被爆対策部長(故人)から取材中に性的暴行を受けたとして女性記者が長崎市(田上富久市長)に損害賠償などを求めた裁判で長崎地裁(天川博義裁判長)は30日、市に約1975万円の支払いを命じました。地裁判決が示したものを見ました。(内藤真己子)

 判決は、部長の行為を同意のない性暴力で違法と認定。取材への協力という職務に関連する行為(職務権限)に際して加害に及び、記者の権利を侵害したとして長崎市を断罪しました。
 女性記者が取材中に警察や高級官僚、政治家らから性暴力を受けてきたことは2018年、福田淳一財務次官のセクハラで浮き彫りになりました。しかしこれまで多くの人が泣き寝入りを強いられてきました。
 原告を支援する新聞労連の吉永磨美委員長は30日、判決後の会見で「情報をもらう側という関係で記者はコントロールされやすい。被害の構造が認められたことは非常に大きい。どの時間帯でも取材行為の中で起きれば、取材上の問題でありプライベートの問題ではない。長い間、黙らされてきた人が声をあげていいというメッセージになった」と語りました。
 原告代理人の中野麻美弁護士は「記者の取材と報道の自由は民主主義の動脈としての社会的共通資本。侵害は最もつつしまなければならない。市の責任が認められたのは大きい」としました。
 判決は、二次被害の発生が予見されるのに、防止する義務を怠ったことについて市の責任を認めました。また市が「原告の対応次第で事件を回避することができた」などと、性暴力の責任を女性に転嫁する「強姦神話」を展開し、女性の過失を主張したのを全面的に排斥しました。
 同日の会見で原告代理人の角田由紀子弁護士は判決を評価しつつ、「2022年において長崎市が『強姦神話』につかった主張をしていることは考えなければならない。長崎市は平和の問題では先進的だが、女性の性暴力については時代遅れな主張をしていることに違和感を覚えた」と指摘。同市の姿勢を厳しく批判しました。