「しんぶん赤旗」2022/9/24

西九州新幹線開業 低い費用対効果 在来線切り捨ての懸念

  武雄温泉駅(佐賀県武雄市)と長崎駅(長崎市)の66キロの区間を約30分で結ぶJR九州の西九州新幹線が23日、開業しました。運行する列車は「かもめ」(6両編成、1日47本)です。沿線自治体は観光客の増加を見込んでいますが、国の試算(2018年度)で同区間の費用対効果は0・5倍に低下。不採算路線となれば、並行在来線や九州全域のローカル線の切り捨てが加速する懸念があります。(丹田智之)

 開業した区間は、国が計画する福岡市と長崎市を結ぶ整備新幹線ルートの一部です。武雄温泉駅で新幹線と在来線の特急列車を乗り継ぐ「リレー方式」で暫定開業し、博多(福岡市)―長崎間の所要時間は最速1時間20分。開業前と比べて30分だけ短くなりました。

 博多―長崎間で自由席を利用する場合の運賃・特急料金は5520円。開業前より460円の値上げです。

 開業した区間の建設工事では、国と長崎県、佐賀県の財政負担を含む計6200億円が投じられました。未着工の区間も約5700億〜約1兆1300億円の建設費を要すると試算されています。

 現在の博多―佐賀間の所要時間は、在来線特急で約35分。佐賀市を経由する新幹線が実現しても、短縮される時間は、わずか15分ほどです。

 

「求めていない」

 巨額の建設費に見合うメリットがない佐賀県は、全線フル規格の新幹線を「求めていない」と主張。岸田文雄政権の与党検討委員会が地元を無視して協議を進め、佐賀県民の怒りが広がっています。

 今回の開業後の23年間は、JR九州が並行在来線の長崎線を運行することが決まっています。その条件として、同線の佐賀県と長崎県にまたがる区間で、駅や線路の維持管理費を両県が負担する「上下分離方式」がとられます。将来的な路線の存続を自治体まかせにし、住民に不安を広げています。

 JR九州は2016年の完全民営化後、駅無人化や在来線の大幅な本数削減、車掌が乗務しない「ワンマン運転」の拡大を進め、利便性と安全性の向上に逆行する経営を続けてきました。通勤や通学などで鉄道を利用する住民が不便になり、生活にも影響が出ています。 

住民の足守ろう

 日本共産党は、12年に国が認可した整備新幹線(北海道、北陸、西九州)の3区間で総事業費が3兆400億円にのぼると指摘。採算性も疑問視され「建設継続の正当性が問われる」として凍結・中止を求めてきました。住民の足と地方再生の基盤を守るための鉄道路線網の維持が重要だとし、国の責任でローカル線の廃止に歯止めをかけることを提案しています。

 佐賀・長崎の両県議会で日本共産党は、大型公共事業の推進ではなく、住民の暮らしを守ることが最優先だとして「身近な公共交通の充実にこそ予算を回すべきだ」と主張しています。