「しんぶん赤旗」2022/9/17

冷害・カモで収穫できず 干拓営農者の訴訟

 国営諫早湾干拓事業の干拓農地(長崎県諫早市)に入植した農業生産法人2社が、調整池があることで起こる冷害やそこに飛来する野鳥が農作物を食い荒らすなどの被害を受けたとして、農地を管理する県農業振興公社と国、県を相手に損害賠償や潮受け堤防排水門の開門を求めた訴訟の口頭弁論が15日、長崎地裁(天川博義裁判長)でありました。

証人尋問でマツオファームの松尾公春社長(島原市)は、冷害やカモが飛来する時期は収穫できず、知り合いの農家や市場から作物を購入し、卸し先の業者に納入していたと明かし、「カモ被害などがなければ購入の必要はなかった」と深刻な被害を語りました。

 グリーンファームの勝田考政社長(諫早市)は「公社や農政局の職員から『優良農地』だと熱心に誘われ、仕事を辞めて家族で入植したが、農地は石がゴロゴロし、配管のような物まで出てきて耕運機が壊れてしまった。少しの雨でも畑が田んぼのようになり、排水不良もひどかった」と主張。「しかし、公社は、補償など何もしてくれなかった」と証言しました。

 松尾社長は「調整池に海水が入ってこないために冬は寒く、調整池のカモが畑を荒らす。開門して元の海に戻し、農業する環境を良くしてほしい」と述べました。