「しんぶん赤旗」2022/3/30

長崎・「ひと」 安達和美さん(60)

 2004年3月10日、朝元気に登校した長崎市立中学2年の次男がその日の午後、学校で自ら命を絶ちました。「なぜ学校で命を落とさなければならなかったのか」。事件から18年。これまでの歩みをつづった本の出版に向け執筆を続けています。

 次男の雄大さんは、たばこの所持が見つかり、担任から窓全面が銀紙で目隠しされた多目的室で「指導」を受けるなどし、その最中に自殺しました。学校は、翌日には「行き過ぎた指導はなかった」と記者会見し幕引きを図ろうとします。

 学校の対応に傷つき孤立するなか、同じように学校に事実を隠蔽され苦しむ遺族たちと出会います。「子どもの権利条約」を初めて知り、「理不尽に子どもが亡くなったことは最大の人権侵害」だと学びます。「彼らに出会わなければ生きていけなかったと思う」

 「『指導死』親の会」共同代表などを務め、今は同様の経験をした遺族を応援。社会福祉士の資格も取得し、NPO法人「子どもの権利オンブズパーソンながさき」の理事もします。

 命日には32歳になった雄大さんの同級生らがお参りに訪れました。子どもを連れてくる同級生もいて「この子たちもこれから学校に関わるようになる。困った時には助言できたら」と語ります。「子どもたちにとって安心、安全な学校にするため、子どもや保護者、教師、地域、みんなが力を合わせ考えないと。この本がそのきっかけになれば」