「しんぶん赤旗」2022/12/3

長崎・“被爆地域”外の被害がん7種に医療費助成 厚労省方針

 国が指定した長崎県被爆地域外の原爆被害者を対象とした被爆体験者事業拡大に関して、厚生労働省の検討会が1日開かれ、厚労省は7種類のがんを医療費助成の対象に加える方針を発表しました。対象は、胃がん、大腸がん、肝がん、胆のうがん、膵(すい)がん、乳がん、子宮体がんです。検討会では、事業の対象者に県外在住者も含めるべきだとの意見が出されました。 

 国は、長崎大学の研究成果を踏まえ、長崎県、市と協議し、他のがんの追加も検討していく方向です。4月から運用を開始するとしています。

 国は被爆地域を長崎市と隣接する一部地域(東西約5〜7キロメートル、南北12キロメートル)に限定。被爆体験者は原爆投下時、爆心地から12キロ圏内にいたものの、被爆地域外にいたとされて被爆者と認められず、被爆者援護法による救済が受けられません。

  被爆体験者事業は、2002年に国が導入した被爆地域外の原爆被害者に対し、人体への放射線の影響を認めず、原爆体験による精神疾患が認められる場合にのみ、がんを除く疾患・症状を対象として医療費を免除してきました。

 2021年の広島「黒い雨」高裁判決を受け、厚労省は広島の「黒い雨」被害者に対する「新指針」を施行。しかし、「同じような事情」にあった長崎の原爆被害者を対象から外しました。

 長崎県、市はこれに抗議し、独自の専門家委員会を設置し、広く原爆被害者を救済するよう要求。多くの被爆体験者は、被爆者と認めるよう繰り返し求めています。

被爆体験者を被爆者と認めよ

 長崎県保険医協会・本田孝也会長の話 被爆体験者事業は放射線の人体への影響を認めず、精神的病気をこじつけてつくられました。広島の「黒い雨」被害者には被爆者手帳を交付するのに、長崎についてはがんを一部加えてごまかしていることは、とんでもないことです。

 長崎・被爆体験者訴訟の岩永千代子原告団長の話 医療費助成にがんが加えられたことはありがたい。しかし、私たちが望んでいるのは爆心地から12キロ圏内で暮らしていた被爆体験者を被爆者と認めることです。この地域が大気も土壌も放射能で汚染されていたというデータがあり、当たり前のことです。