「しんぶん赤旗」2021/5/17
大村入管で外国人と面会を続ける柚之原寛史牧師
 菅政権が成立を狙う入管法改悪案の審議では、入管施設内での人権侵害が問題になっています。長崎県大村市の「大村入国管理センター」に16年に渡り通い続け、およそ30カ国、延べ4000人の外国人と面会し、施設内でミサも行ってきた、長崎インターナショナル教会(大村市)の柚之原寛史牧師(53)に話を聞きました。

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 2019年6月24日、大村入管に長期収容されていたナイジェリア人男性が「餓死」したことは、全国の入管で起きていた病死や自死とは違い衝撃的な事件でした。

 食べ物を受け付けず、体重が70`から47`まで減少しているのに、入管職員は収容施設から解放する「仮放免」の許可を出さなかった。大村入管ではそれまで死者はなく、「絶対に死者だけは出さないでほしい」と求めてきましたが、とうとう出てしまった。「葬儀をさせてほしい」と申し入れたが聞き入れられず、施設内の収容者は全員、1日断食をして悲しみを表しました。

 収容所の病人への対応はひどいものです。面会を重ねていたミャンマー人の男性は、目が見えにくくなり、左手足にしびれが出始めました。「脳梗塞の疑いがある。外部の専門病院の診察を」と訴えましたが、そのまま放置。悪化して脳梗塞の手術を受けましたが、後遺症で話すことができない障害者になって戻ってきました。入管の判断が全てで、仮病扱いし本人の声を聞かない。そこに一番の原因があるし、ブラックボックスになっているのです。

 入管施設のつくりは2週間から1カ月程度の収容が想定されたもので、長期に人が住めるようになっていません。室内のトイレはドアなどなく、同室の人に丸見えです。

 収容者は「灰色の生活空間」に置かれ、緑のない世界に暮らしているため共通して視力の低下が著しい。こんな環境のなか、身体だけでなく精神を病んでしまう人が多いのです。

 収容者と面会をするようになったのは、東京の教会から中国人女性との面会を依頼されたことがきっかけです。彼女と面会を重ねるなかで、他の外国人の面会希望者が増えていきました。彼らの話を聞き、強く感じたことは、あまりにも外国人への扱いがひどい。ここまで虐げられている人たちが、日本社会の片隅に置き去りにされていることに「黙っていられない」との思いでした。「私のできることをしていこう」と決意し、支援を続けてきました。

 一方で難民行政そのものを変えていかないと今後も犠牲者はどんどん出てくる。いま審議されている改定案では収容者の状態は何も変わりません。入管法改悪反対の立場で、日本共産党の藤野保史衆院議員始め、野党の国会議員も頑張ってくれている。反対の世論も広がっており、絶対に廃案にしなければいけないと思います。