「しんぶん赤旗」2021/8/10
世界大会ナガサキデー 共同広げ核兵器廃絶へうねりを
 9日開かれた原水爆禁止2021年世界大会ナガサキデー集会での主催者報告、長崎市の田上富久市長のあいさつ、第1セッション「核なき世界への共同」、第2セッション「日本と世界、草の根の運動の交流」での発言、長崎現地企画を紹介します。

○主催者報告
世界大会実行委員会議長団 安斎育郎さん

 広島、長崎の原爆のきのこ雲の下で起きた非人道的な被爆の実相に目を向け、「核兵器は絶対に使ってはならない」との認識を深め、核兵器廃絶の根源的なエネルギーにしなければなりません。
 核保有国は、核不拡散条約(NPT)の「核軍縮交渉に誠実に取り組む」の約束を果たしていません。非核保有国や核兵器廃絶を願う世界の人々は、核兵器の非人道性を軸に巨大な運動を展開し、核兵器禁止条約が今年1月、発効しました。核保有国が条約に反対していますが、「核抑止力論」が成り立たなくなるからです。
 核保有国とその国民に核兵器の非人道性を訴えましょう。条約の賛成・署名国に早期批准を求めましょう。条約に背を向ける日本政府を私たちの手で転換させましょう。
 この大会を、核兵器廃絶へ向けた実践の契機としましょう。

 

○来賓あいさつ
  長崎市長 田上富久さん

 被爆者は思い出すのもつらい体験を伝え、核兵器の廃絶を訴え続けてきました。この小さな流れが世界を巻き込んだ大きな流れとなり、人類史上初めて核兵器を違法とする核兵器禁止条約が発効しました。
 この条約を世界の共通ルールに育て、核兵器廃絶を実現するためには、私たち市民社会が連帯し、これまで以上にねばり強く声をあげることが必要です。その礎となるのは、今日のような機会を通じて多くの方々が核兵器廃絶への思いを共有することだと思います。
 一つひとつのかけがえのない行動がたくさん集まって大きな流れをつくり、やがて世界を動かす力になると確信しています。
 核兵器のない世界をめざしてともに歩み続ける、力強く、大切な仲間として、平和の輪を大きく広げられることを心から願います。

 ○第1セッション

国際平和ビューロー(IPB)共同会長 フィリップ・ジェニングズさん

 「平和の波」行動を通じて、私たちは世界を変えました。今や私たちは、核兵器を禁止する国際条約を手に入れたのです。
 世界的感染流行、気候危機、軍事化、不平等が示したのは、私たちの準備が足りなかっただけではなく、持続可能な平和から遠ざかりつつある世界において優先順位が間違っているということです。
 いまや世界を創造し直す時なのです。核のエスカレーションを阻止せねばなりません。拡散にブレーキをかけ、核兵器を制御する仕組みを新たに確立することが必要です。
 広島・長崎の被爆者の不断の努力と、世代を超えて広げてきたメッセージが核兵器を禁止する世界的な条約を実現したのです。すでに55カ国がこの条約を批准しています。世界の世論は私たちの側にあります。
 2022年1月予定の第1回締約国会議までに日本がこの条約に署名することを、世界は歓迎しています。

アジアヨーロッパ人民フォーラム国際組織委員 ティナ・エブローさん

 今日、9カ国が約1万3400発の核兵器を保有しています。軍産複合体に影響され、核大国は通常兵器と核軍備のグレードアップを続けています。
 さらに、人間の安全保障、エコシステム、気候などは、アジアを中心としたアメリカと中国の地政学的な激しい競争によって危険にさらされています。
 中国は大がかりな軍備の近代化を行い、アメリカには核軍備全体を新たに再構築するという1・7兆ドルにのぼる計画もあります。
 東シナ海や南シナ海で偶発的であれ事件や事故が起これば、米中間の大規模な衝突に発展し、中国と日本や台湾などの近隣諸国、南シナ海の領有権を主張している国々に広範な破壊をもたらします。
 冷戦を逆転させ、新たな壊滅的戦争の勃発を阻止するために、私たちが最初にすべきことは、速やかにアジア太平洋地域を非武装化し、非核化する努力を再び活性化することです。

世界宗教者平和会議日本委員会事務局長 篠原祥哲さん

 世界宗教者平和会議(WCRP)は、世界のさまざまな宗教が平和のために連帯し、共同する運動体です。世界100カ国にWCRPネットワークがありますが、創設は51年前の日本の京都です。
 創設のきっかけは、悲惨な第2次世界大戦を防ぐことができなかったという世界の宗教者の反省です。創設以来、特に力を入れてきたのが被爆者の方々と連帯した核兵器廃絶の運動です。
 強調したいことは、早急な核抑止論の再検証の必要です。核抑止論の本質は相手に対する威嚇や脅迫のほか、疑念に基づく不信から生まれているものです。宗教者は決して核抑止論にくみするものではありません。その議論の際、被爆者が身をていして訴えてきた被爆の悲惨な実相から決して目を背けてはなりません。
 WCRPは再び被爆者をつくらないという切実な訴えと、過去の戦争に対する宗教者の反省を心に刻み、全面的な核廃絶に向けて力を尽くしていきます。

 

○第2セッション

ベトナム枯れ葉剤被害者協会会長 グエン・バン・リンさん

 日本とベトナムには多くの類似点があります。戦争での大量破壊兵器の使用により苦しみを経験しました。明日8月10日は米軍がベトナムに有毒化学物質を散布し始めて60年です。米軍の枯れ葉剤による化学戦争はベトナムの人々に非常に深刻な被害をもたらしました。米兵や米国の同盟国の兵士の健康にも影響を及ぼしました。
 戦争での大量破壊兵器の使用は、ベトナムと日本の人々に重くのしかかる永続的な結末を与えました。その影響を克服するために、両国人民は団結して助け合い、同時に世界の人々から貴重な援助を受けました。日本とすべての国の人々に対し、ベトナムの人々が枯れ葉剤の影響を克服するために支援を続けるよう呼び掛けます。
 大量破壊兵器の研究・生産・貯蔵・使用を阻止し、戦争の防止、平和な世界を実現するために、世界の人々が連帯を強化するよう呼び掛けます。枯れ葉剤被害者も核被害者も戦争被害者も二度とつくってはなりません。

 

○被爆者・若者…国内の取り組み紹介

 核兵器廃絶、日本政府に禁止条約に署名・批准を求める日本国内の取り組みが紹介されました。
 兵庫県の神戸健康共和会・平和アクションプラン推進チームのメンバーは、若手職員による核兵器禁止条約の発効を受けた街頭での宣伝・署名活動、学習や戦跡めぐりなどの取り組みを紹介。「日本が署名・批准するよう、若者のなかで訴えや署名を広げていきます」と語りました。
 「〜ヒバクシャの願いをつなぐ〜核兵器禁止条約をひろげる長野ネット」の代表は、被爆者、県原水協、県原水禁などの共同が広がり、平和行進では、善行寺境内を原水協、原水禁が合同で歩いたと報告。「署名・批准を求める圧倒的な世論と県民的共同を築いていく」と語りました。
 東京高校生平和ゼミナールの代表は、日本政府に署名・批准を求める高校生の署名活動を始めたことを紹介。「被爆者のみなさんが条約への歴史を築いてきました。次は私たちが廃絶への歴史を刻んでいきます。平たんな道ではありませんが、よりよい未来のために行動していきます」と力を込めました。