「しんぶん赤旗」2021/12/27

石木ダム水没予定地にミュージアム&ギャラリー
イラストレーターの石丸穂澄さん(39)

 長崎県と佐世保市が建設を強行する石木ダム。工事が進められている川棚町・川原(こうばる)地区に建つ通称「団結小屋」に、この秋から毎週土曜と日曜、「ISHIKIRIVERMUSEUM」(石木川ミュージアム)の看板が立てられるようになりました。水没予定地で生まれ育ったイラストレーターの石丸穂澄さん(39)のミュージアム&アトリエです。

半世紀に渡り、13世帯の地元住民らが抗議行動を続けるなか、石丸さんは10年ほど前から「自分にできることは何か」と模索。水彩画で川原の自然や生活、石木川周辺の生き物などを描き、フリーペーパーやステッカー、カレンダー、個展の開催などでその魅力を発信してきました。

 トタン張りの小さな小屋は、40年以上前にダム建設に反対する地元住民らの手で建てられた「たたかいの原点」。今も95歳の松本マツさんが週2回通い守っています。石丸さんはいいます。「強制的にダム建設を進めるとなれば、ここも取り壊される。そうさせないためにもここはとても大事な場所」

今年1月、母親から手前の倉庫をアトリエにしてはどうかと提案され、地元の住民らの了解も得て、仲間の協力で内装工事に着手。壁のペンキは自分たちの手で塗りました。

外観からは想像できない美しいピンク色の室内。石丸さんの水彩画が映えます。「絶対生き残る、ここまで来て負けられない、そのために前向きな活動をやりたい」との思いから、「できるだけポップにしたかった」といいます。さらに「私は、ダムに沈む町の思い出として今を描きとめているわけではない。未来に向けて、私たちはこの場所で生きている。そのことを表現しているのです」

たたかい続ける住民らを描いたドキュメンタリーが全国放送され、「近くまで来ていたのに知らなかった」と訪ねてきた人もいます。「土・日が休みの若い人たちが、ふらっと立ち寄れる場所を提供したい。ここで、絵を観て、話を聞いてもらって石木ダムのことを知ってもらいたい」。ミュージアムへの思いを語りました。