「しんぶん赤旗」2021/12/23

原爆被害者すべて救済を
長崎原爆被災者協議会会長 田中重光さん

被爆指定地域外にも
 広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」被害の救済について、厚労省が被爆者健康手帳の交付の新たな審査基準をつくるために、広島、長崎両県・市とともに会合を開き、疾病条件などをつけようとしていることについて、関係者に話を聞きました。(加來恵子)

 1980年に国が出した原爆被爆者基本問題懇答申で、核戦争被害も含め、戦争犠牲の受忍を国民に強いた態度がいまでも続いていると思います。
 被爆者認定について、「科学的合理的根拠に基づいて」と繰り返し、長崎の被爆地域拡大についても否定し続けてきました。
 国が被爆地域と認定する12キロ圏内には被爆しているにもかかわらず、被爆者と認められない「被爆体験者」がおられます。そうかと思えば、12キロ以上の地域で被爆者健康手帳が交付される地域もあるという矛盾があります。
 原爆投下当時、風は西から東に吹いており、ラジオゾンデ(爆圧等計測機器)が東長崎に流されたり、原爆投下による灰やいろんな燃えカスが東の方にも降っています。原爆による灰や雨とは知らず人々は、微粒子となった放射性廃棄物の入った水や野菜を口にし、内部被ばくしました。下痢や脱毛などの急性症状が出た人も数多くいました。
 被爆指定地域にかかわらず、原爆症と同じ病気で苦しみ、救済されない被害者がいるのです。
 広島高裁判決では、内部被ばくを認め、「原爆の放射能により健康被害を生じることを否定できないことを立証すれば足りる」と広く救済するよう明言しました。
 菅前首相は「同じ事情の方々について早急に救済するよう検討する」として、いま国、広島、長崎両県・市で申請基準を検討していますが、国が「黒い雨」に遭ったことや疾病を要件として出してきました。内部被ばくを認めた広島高裁判決のうえに、長崎の被害者も対象に検討するよう強く求めます。