「しんぶん赤旗」2020/8/3
ひと 竹田信平さん(41)
爆心地に被爆者の声紋を書き写したアーティスト

 長崎市の「爆心地公園」の地面に、十数本もの白い波形の線。原爆の碑や遺構の中で異彩を放ちます。

 集めた12人の被爆者の声を目に見える「声紋」にして書きました。このアートプロジェクト「声紋源場」は長崎原爆被災者協議会(被災協)の同市被爆75周年記念事業の一環です。
 「僕がやりたかったのは爆心地で起こった出来事との接点をつくること。原爆の惨状がこの現実と違いすぎる。もう一回気づいてほしい」。3年以上模索し、たどり着きました。

 活動拠点のドイツから帰国した際の自宅待機と豪雨で制作が遅れましたが、7月22日午前4時に完成。9日までスマートフォンのアプリと連動して声を聞くことができます。翌10日に公開消去の予定です。

 大阪生まれ。被爆者との出会いは、翻訳の仕事で長崎の被爆者、下平作江さん(85)の同時通訳をした2000年代前半でした。「肌が垂れている」という言葉をどう英語で説明するのか―。自分の中に取り込んで再び表現するうち、被爆者の声の収集がライフワークに。10年、世界中に離散した被爆者たちの生の声を収集し、ドキュメンタリー映画にしました。

 日本政府には核軍縮への「戦略がない」と強調。被爆者がいなくなり、記憶の継承が現実の問題になっていると危機感を語ります。「どうやって若い人を巻き込もうかと悩んでいます。モニュメントだけではダメだと思う」