「しんぶん赤旗」2020/11/16
総局日誌・西日本 被爆者の涙
 レンズに写った長崎被災協・田中重光会長は、瞳に涙をいっぱいため今にも泣きだしそうでした。10月25日、長崎市の平和祈念像前で行われた核兵器禁止条約の発効確定を祝う集会でのこと。被爆者の喜びの表情を撮ろうとしていた私の手は一瞬止まりました。

 涙ぐみながらあいさつに立った田中さんは「生きていてよかった」と心から喜び、数十万の原爆死没者と被爆者運動に死力を尽くした先達に感謝の思いを述べました。

 「生きているうちに核兵器のない世界をみたい」と語っていた被爆者の谷口稜曄(すみてる)さんら、志半ばで倒れた仲間へ思いをはせていたのでは…。涙の意味に思い至りました。

 「核抑止論による安全保障政策をとり続けてきた日本政府。今日からはこの言い分は通らない」ときっぱり語った田中さんは、速やかな禁止条約への参加を求め「命の限り平和を願うみなさんと、核兵器も戦争もない世界に向けて歩み続けます」。涙の中に固い決意を感じました。

 (長崎県・前川美穂)