「しんぶん赤旗」2020/6/18
盲ろう者 コロナ禍で増す不安
 新型コロナ感染防止のため、マスクの着用や、人との距離を保つなど「新しい生活様式」が求められるなか、視覚、聴覚ともに障害を持つ人たちはどのような状況に置かれているのでしょうか。「長崎盲ろう者友の会・あかり」の古川幸枝会長(51)と古川竜一郎事務局長(45)夫妻=佐世保市=を訪ねました。

 「あかり」の会員数は盲ろう者と支援者を含め約190人です。県内の盲ろう者は約360人、全国には1万4000人いるといわれています。

 障害者事業所で働く幸枝さんは全盲・全ろうです。コミュニケーションの手段は、手話をする人の手にふれ手話の形を読み取る触手話です。夫で鍼灸院を営む竜一郎さんは全盲で難聴です。耳元で大きな声で話してもらうか、小型マイクを使いコミュニケーションをとります。

 「市に通訳介助の派遣依頼をしたら、密を避けるためになるべく控えてほしいといわれました」というのは竜一郎さん。コロナが流行りだしてから大好きな買い物の数を減らし、用件をまとめて1回で済むようにしています。

「インターネットができる盲ろう者はまだいいけれど、できない場合は情報がまったく入らず、外出もできない。相当なストレスがあると思う」と心配します。「会として情報がきちんと届くよう県や市に要望していきたい」と語りました。

 幸枝さんの通訳介助をする副島輝美さん(66)は、「盲ろう者は必ず手をさわっての触手話が必要。ふれることがダメと言われれば、盲ろう者は情報がなくなる。ルールは横に置いておかないと支援ができず、戸惑いがある」と語ります。

 全国では、触手話などのため、ゴム手袋や薄い手袋の着用が必要かもしれないなどの意見が交わされ、盲ろう者への優先的な支給を求める声もあがっています。

 盲ろう者の生活にかかせない通訳介助者ですが、佐世保市での登録はわずか30人。常時動ける人は10人しかいません。交通費は市が負担しますが、移動支援に支払われる報酬は、距離や時間に関わらず2000円です。

 2人からさまざまな要望を聞いた日本共産党の小田のりあき佐世保市議は、「国も自治体も介助者の善意にまかせてしまっている。盲ろう者の生活に直結することで、改善するためにどうすればいいか考えていきたい」と語ります。

 今後、第2波も懸念されるなか、竜一郎さんは「盲ろう者がもしコロナに感染して入院すれば、本人以外は入れず看護師か医者ということになるが、点字や触手話ができない。私たちは、コロナにかからないように自宅にいるしかないのか。このことは全国的に問題になっています」と不安を口にしました。