「しんぶん赤旗」2020/
石木ダム建設事業 連日の座り込み、緊迫する道路工事現場
 長崎県と佐世保市が川棚町に計画している石木ダム建設事業で、県はダムが完成すれば沈んでしまう県道を付け替える工事を強行しています。住民と支援者は道路が完成すれば、ダム本体の工事が始まるとして連日の座り込みを実施。しかし県は、座り込みをしている場所に大量の土砂を搬入し、現地は緊迫した事態となっています。

 (長崎県・前川美穂)

 「こういうことをしながら、話し合いができるわけがない」―。水没予定地の住民の岩下和雄さん(73)が怒りをあらわにします。

 16日、午前の座り込み行動を終えた住民らが帰宅した後、県は座り込んでいた場所に重機3台で大量の土砂を投入しました。これに気づいた住民らが駆けつけ、重機の前に立ちふさがって抗議し工事をやめさせました。

 石木ダムは、佐世保市の水の確保と川棚町の洪水対策を目的に計画されましたが、佐世保市の給水量は減り続け、洪水対策も疑問視されています。1975年の国の事業採択から45年経った今も未完成です。道路の付け替え工事も座り込みを続ける周辺約140bの区間が手つかずのままです。

 土砂投入に先立ち、県は12日に住民らが使用する休憩用のイスやテーブルについて、「所有者は26日までに申し出ること。また速やかに撤去するよう」にとの看板を設置。同日に県石木ダム建設事務所長や河川課長らが、13日には土木部長が現場を訪れ、「話し合い」を要望しましたが、住民らは「工事の中断が先」と応じませんでした。

 「話し合い」を求める一方で突然、土砂を投入したことに対し、住民らは、平日の午前だけだった座り込みを、午後や土曜日も行うことにしました。

 住民の岩永信子さん(64)は「また夜中に工事をするのではないか、私たちが帰った後にやるのでは、と考えると熟睡できない。自分の時間があっても何も手につかない」と苦しい胸の内を語ります。

 コロナ禍の下でも続く抗議の座り込みは既に900日を超えています。工事現場では、常に県の職員10人前後が立ちはだかり、支援者が来るとカメラで撮影し、抗議行動を監視しています。

 住民13世帯約50人の土地・家屋が県によって収用されてから11月18日で1年となります。すでに住民の土地・家屋の名義はすべて国に移っており、中村法道知事によって住民を強制的に排除できる行政代執行が可能となっています。

 しかし住民・支援者のたたかいの中で、県は昨年11月にダムの完成目標時期を2022年度から25年度に3年延期を決めました。延期は9回目となります。

 長崎市在住で座り込みにも参加し、県庁前でダム建設反対のスタンディング行動を続ける森下浩史・元長崎大学教授は語ります。「県は本腰を入れて座り込み現場の工事を進めたいのだろう。これからは、行政代執行は絶対にさせないという運動を皆さんにも募って広げていきたい」