「しんぶん赤旗」2020/6/2
五島市 カネミ油症事件50年記念誌発行
 1968年に発覚し「国内最大級の食品公害」といわれるカネミ油症事件で、多くの被害がでた長崎県五島市はこのほど、『カネミ油症事件50年記念誌』を発行しました。事件発覚から半世紀が経過し事件のことを知らない世代が増える中、二度とこのようなことが繰り返されないために、事件の重大さを多くの人たちに継承していこうというもの。市民が閲覧できるように学校や図書館、公民館などに配布しました。

 カネミ油症はカネミ倉庫(北九州市)製造の米ぬか油に脱臭工程でPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入し、その油を摂食したことで発生。吹き出物や内臓疾患、倦怠感など「病気のデパート」と言われるほど症状は多様で、子や孫の世代にも汚染の影響が現れています。しかし、認定基準が厳しく、症状があっても患者と認定されない被害者が多く存在。患者団体らは、国の責任で認定基準を見直すよう求めています。

 『記念誌』には、事件の経過や2018年に開かれた50年記念行事の様子、被害者による座談会、寄稿、写真や関係資料などが収められています。

 被害者の座談会では、「カネミ油を食べた母親から生まれ、問題なく認定されるはずなのに、国はいろんな規制をして認定せず憤りを感じる」。油症特有の症状がありながら認定されない我が子について、「いつまでこんなつらい思いをさせなければならないのか」など悲痛な思いが語られています。