諫早干拓事業の再評価
水門開放は不可欠
(写真)刊行された『市民による諫早干拓「時のアセス」2006−水門開放を求めて』(A4判202ページ、1000円・送料別)
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解説
始まったら止まらない公共事業に対する批判が強まり、一九九八年から五年ごとに第三者が事業を検証する再評価制度(時のアセスメント)ができました。諫早湾干拓事業も今年度が二回目の再評価の年に当たっています。
農水省は八日、六人の第三者委員(委員長・加藤治佐賀大教授)を選定。現地視察もおこなわれました。
市民団体の報告書(市民版「時のアセス」)は、この再評価第三者委員会の発足に合わせて作成されたのが特徴です。
市民団体が市民版「時のアセス」をまとめるのは二回目。前回の再評価第三者委員会では、市民版「時のアセス」をもとにした真剣な議論も展開されました。委員の中から事業の中止を求める意見も出されました。委員会の答申では「環境への一層の配慮を条件に事業を見直されたい」との表現で事業の継続に注文をつけました。追いこまれた農水省は、「干拓事業の縮小」を表明。農地造成地を半減しました。
しかし、諫早湾を閉め切ったことによる有明海への悪影響については何の見直しもされずに、被害が拡大しました。今回、市民版「時のアセス」が算定したとおり巨額のマイナスをもたらすにいたっています。
その改善案として、今回の市民版「時のアセス」では、諫早湾を閉め切った堤防の水門を開放する複数の案を検討し、効果を試算しているのが大事な特徴です。これは海水導入によって自然の浄化力の回復、干潟の再生や潮流速の回復が期待でき、海洋・漁業環境の改善につながるからです。
現行の干拓工事をつづけて完成したとしても、諫早湾・有明海への悪影響、漁業不振を将来にわたって引きずることになります。
今回の「時のアセス」は、その社会的損失を考えれば、現行計画の見直しや改善案を採用した方が社会的には得策と主張。その検討には、中・長期開門調査によるデータの蓄積が不可欠と訴えています。
第三者委員会には、学者の良心をかけた答申が期待されています。
(松橋隆司)
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