被爆体験者支援事業を考えるシンポジウム
内部被爆の影響 検証を


 被爆者と認められず、被爆「体験者」いう名でやっと実施された医療費給付事業−。
 それがわずか三年で改悪され、対象者の三割が切り捨てられた問題で、被爆地域の拡大・是正を求めて運動を続けてきた長崎被爆地域拡大連絡会(峰松巳代表)は二十二日、長崎市で「被爆体験者支援事業を考えるシンポジウム」を開きました。

 「なぜこんな理不尽な被爆行政がまかり通るのか、共に考えよう」と被爆者や市民約百人が参加。放射線の人間への影響について研究を続けている沢田昭二・名古屋大学名誉教授が講演を行い、長崎被災協の山田拓民事務局長と被爆「体験者」二人が報告しました。

 沢田氏は、「国は初期放射線による対外被爆しか認めず、残留放射能による内部被爆を無視している。被爆未指定地域問題も原爆症認定基準問題と同じ構造」と被爆行政の根本的問題点を指摘。残留放射能の影響は「被爆者の体内におこったことから調査する以外にない」とのべました。

 同氏は、長崎原爆の特徴を「残留放射能の大部分が放射性微粒子となって黒い雨の範囲を越え、広範囲に降下した」とのべ、体内の残留放射能がガンなどを発症させるメカニズムを解明。「根拠も示さず被爆『体験者』の疾病を精神障害にわい小化しているのは間違い。今からでも科学者の力も借り、内部被爆の影響を検証すべき」と国の被爆行政を批判しました。

 十一歳のとき伊王島(爆心地から十一`)で被爆した河野左郷さん(72)は自らの被爆体験を語り、「被爆当時の聞き取り(スクリーニング)調査は、被爆体験者を救済するためでなく、ふるい落とすためだった。同じ場所で被爆したのに兄は認められ、弟は除外された。こんなことは絶対に許されない」と声を震わせました。
 爆心地から八`の矢上で被爆した北川吉雄さん(66)は、同じ地域で被爆したのに除外された六十五人の「体験者」の怒りの声の綴りを紹介、「事業を元に戻せ」と訴えました。

 この問題で、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員と長崎市議団は昨年十一月、被爆「体験者」の叫びを直接聞き、「政府のやり方には科学的合理性がなく、もともと被爆者である『被爆体験者』に二重三重の苦痛を与えるもの」と抜本的是正を要求しています。

「しんぶん赤旗」2006/4/25