長崎県社会保障推進協議会は3月24日、唐鎌直義専修大学経済学部教授を招いて「小泉構造改革と格差社会 −格差から貧困へ」というテーマで学習講演会を開催しました。

  唐鎌教授は、格差の実態として青年層だけではなく「中年家族持ちワーキング・プア」が出現していると指摘。現在、日本の全勤労世帯の平均年収が636万円、このうち下位から1/10にあたる世帯の平均年収は305万円に対し、上位1/10は1137万円の所得があり、勤労者の平均値ですら4倍近い差があること。さらには家計の下方硬直性によって所得弾性の低い費目、即ち水光熱費や保健医療費、通信・教育費などが低所得層での家計の逼迫をさらに進めている、と述べました。

 また、年間自殺者が3万人を超え自殺率は世界第4位、「ローンの返済等を考えると、病気になるのも自殺するのも時期を考えないといけない時代になている」と指摘しました。

 日本の国内総生産は世界第二位、1人あたりの国民所得は世界第4位で370兆円もあるのに、税収が40兆円しかないのは、法人税率や最高税率の引き下げによって、大企業や富裕層の負担を免責してきたからだと述べられました。

 最後に、米国のニューオーリンズのハリケーン禍を見ていると、GDPが大きいことが国民に幸福をもたらすものではないことが分かる。ある程度のGDPがあれば、あとはそれを国民間でどのように配分するか、そのシステムをどうつくりあげるかが重要、と結びました。

 参加者からは、「生活保護世帯が全国で100万世帯を超えた。すごい数だが、その背景には、まだまだ保護基準以下の所得で生活している人の数が4倍(400万世帯)もあるとは驚きだ。」、「今の日本は、貧困層はより貧しく、富裕層はより裕福になるような社会の仕組みになっていることがよく分かった」、「社会保障給付費の対GDP比はEU諸国の平均で26.2%、日本は17.5%、10%近く少ないのに、国の借金は800兆円。これが社会保障費削減の口実に意図的に創られたものとは知らなかった」などの感想が寄せられました。

小泉構造改革とは
長崎県社保協が学習講演会