山場迎える「三方山水源訴訟」
「責任のなすりあいでなく、市民の水源をまもる努力を」
長崎市神浦(こうのうら、旧外海町神浦)にある神浦ダムから二`上流に位置する高さ約四百bの「三方山(さんぽうざん)」。長崎三共有機が、その山の産業廃棄物処分場に下水汚泥や焼却灰などを二十数年間にわたって投棄し、流れ出た汚濁物質や重金属によってダムの水が汚染され続けています。二〇〇一年一月市民有志は、業者と長崎市、国を相手に「操業停止と搬入禁止」「原状回復」などを求めて、長崎地裁に訴える「三方山水源訴訟」に立ち上がりました。 (長崎・田中康)
「訴訟」が大きな山場を迎えるなか、市民の水がめを守ろうの声をさらに大きくしようと、「支援する会」(代表世話人・菅政和医師)が二十日、長崎市で報告集会を開きました。
問題の産廃処分場は、立地条件から操業内容にいたるまで顕著な環境汚染源となっているもので、「存続の許されない恥ずべき処分場」(弁護団)です。指導監督権限のある長崎市の連帯責任はもちろん、垂れ流し構造のまま使用を長期間放置してきた国の責任も重大です。汚染は進行しており「責任のなすりあいをしている」(同)状況ではありません。
訴訟では、同事業所に五年間勤務し、自ら「私が投棄した」と証言する渡辺貞臣氏Jと、裁判所、原告、被告がそろって立ち会い、〇三年、〇五年と二回の現地検証が実施されました。これ自体、問題の重要性を示す異例の措置です。
集会で渡辺氏は、「私が指定した場所から予想通り大量の汚泥がでてきた」「その後掘削されたのはまだ一部分。処分場内の道路周辺以外のほとんどの場所にまだ相当量が残っているはず」と報告しました。
神浦ダム奥の流れ込み地点では、年を追って淡水赤潮が増加、春先から濃いコーヒー色に染まる水面を現認することができます。
日本共産党長崎市議団は昨年九月、現地に入り、大量の汚泥が掘削された現場や、環境基準を上回る総水銀が検出された流域、高濃度の硝酸性窒素がいまなお検出され続けている流域と井戸を視察。議会でも、ことの重大性を繰り返し指摘してきました。
長崎市は、「(不法投棄でなく)業者の不適正処理」「ダムの現状に問題はないが将来は何ともいえない」と責任逃れに終始。行政の監視役であるべき市議会の論議も注目されています。
原告代理人の梶山正三弁護士は、市の姿勢を、「『不適正処理』は行政法上のこと、民事上の人格権訴訟では違法は明らか。市民のいのちと健康を守る義務がある自治体が、居直って問題をわい小化することは許されない」と批判します。
同弁護士によれば、訴訟は、原告、被告がそれぞれ四月下旬までに、「どの範囲をどれだけの深さで掘削するか」の案を提出するよう求められている段階。責任の所在は明らかです。
重要なことは、市民の水道水の安全と安心を将来にわたって確保することです。そのためにはダム上流から有害物質を除去する(原状回復)以外に方法はありません。住民参加で、学識者や原告、被告を含めた「除去監視委員会」をつくり、オープンにして解決への努力をつくすときではないでしょうか。
「しんぶん赤旗」2006/2/25