長崎NOW
佐世保小六事件から一年、「第三者機関の誠実な再調査を」
                              2005/6/17「しんぶん赤旗」

 長崎県佐世保市でおきた小学六年生の女児による同級生殺傷事件から一年余が経過しました。
 白昼に、学びの現場で、同級生が|。どこをとっても学校のあり方、教育のあり方が正面から問われ、いまなお影響が残る進行中のこの事件。これまで何が明らかになったのでしょうか。子どもの教育環境は改善されたのでしょうか。
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 長崎県教育委員会は、昨年十二月、佐世保市教委とともに自ら調査した結果を「報告書」(五十九n)にまとめ公表しました。教職員を中心に聞き取りをし、見解をまとめたものです。見解は、事件の「予兆はできなかった」「防止は困難」としています。
 繰り返される少年事件に心を痛めるだれもが「なぜ?」と問います。「また起こるかもしれない」と自認しているようで、およそ教育の専門家としての結論とは思えない内容だったからです。
 長崎で子どものカウンセリングにかかわってきた広木克行・神戸大学教授は、報告書について、「なぜ事件になる程のストレスを子どもたちがかかえていたのか。教師が子どもと向き合っていないとすればなぜなのか、多忙なのか|。だれもが知りたいことに、教育のことばで迫る努力のあとが見たかった」「裁判所の文章でなく、問われているのは教育委員会の専門性ではないのだろうか」と指摘します。
 何の社会的救済も保障されていない、被害女児の父親・御手洗恭二さんは「手記」のなかで綴っています。「予測不可能な事件と結論付けられても納得いきません。第三者による調査システムをつくり、学校や先生は『何ができて、何ができなかったのか』究明すべきです」と。
 教育学や発達心理学、犯罪心理学、社会学などの専門家で組織する、第三者機関による事実の発掘・再調査が強く求められています。
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 十二日、事件がおきた市立大久保小学校に近いビルの六階で、「子どもの事件から私たちが考えること|子どもの育ちを支える大人のあり方」と題する講演会が開かれました。会場は、事件に心を痛め、子育てや教育に苦悩する母親や市民でいっぱいです。
 そこでは大久保小学校の保護者や市民らが次々に発言、「報告書」や教育委員会への批判が相次ぎました。
 ある保護者は、「一年たっても大人たちはウソをつき続けている。事件現場で見たり、聞いたりしたことと違う」と訴える中学生(当時同小六年)の声を紹介。「子どもの名誉を守ってやりたいと、何回も市教委などに訴えるが取り上げてもらえない」といいます。
 告発は続きます。
 「市教委は『事件の影響のある子はいない』といって、いまも学校に行けない子どもがいることを認めない」「大久保小では最近、カッターナイフを使った授業が行われ、(子どもたちの間で)事件のことが話されている」など、訴えはリアルです。
 これが事件が起こった学校のいまの現実だとすれば、「子どもたちの心の傷はこの一年、癒されてきたのだろうか」と疑念さえおぼえます。
 子どもたちを第一に考えるべき、現場の教師たちの声が聞こえてこないのも不安です。 別の保護者が涙ながらに訴えました。「あるカウンセラーから、『親が騒ぐからそれに子どもが反応する』とまでいわれ、また不安が大きくなった」と。
 事件を知る子どもたちや父母らがなぜ一年たっても苦しみ続けなければならないのか、心に響く解明なくして不信と不安は消えません。