諫早湾干拓堤防閉め切り9周年にあたって
2006年4月14日
日本共産党長崎県委員会
1.中・長期開門調査をただちに
諫早湾干拓堤防閉め切りから丸9年。よみがえれ!有明海訴訟が2002年11月、干拓工事の差し止めをもとめる原告884人の民事訴訟と、漁民106人による仮処分決定申請が、佐賀地裁に提訴されてから
3年3ヶ月が過ぎました。
2004年8月、佐賀地裁が「工事差し止め」を命じた仮処分決定は、着工から15年も経過し、2490億円(当時)もの巨費をつぎ込む大型公共事業が、周辺環境への被害を理由に工事中断されたのは我が国で初めてという画期的な決定でした。しかし、その後、福岡高裁、最高裁、公害等調整委員会と次々に漁民側の主張は退けられましたが、そのことが漁民の怒りと結束をさらに強め、民事訴訟の原告は、884人から2,533人にとふくれあがり、新たに「開門・調査・事業凍結」を求めた新仮処分のたたかいへと発展しています。長崎県の漁民原告は12倍にも増えています。
昨年7月11日、島原市議会は地元漁民が、国に堤防排水門の中・長期開門調査を求めた請願を賛成多数で採択しました。また、13年連続でタイラギ漁の休業が続いている諌早市の小長井町漁協で、理事と漁民有志が「国営諫早湾干拓事業で、国の想定以上の漁業被害が生じた」と、中川農林水産大臣に宛てた「漁業再生のための協議を求める要望書」を諫早干拓事務所に提出するなど、有明海の再生を願う漁民の切実な運動はますます広がっています。
佐賀地裁の仮処分決定や漁民の主張を退けた福岡高裁の決定でも、国が「ノリ不作等調査検討委員会」の提言通り「中・長期開門調査」を行うべきと指摘しています。公害等調整委員会は歴史上初めて「有明海をめぐる環境問題について、国をはじめとして更なる調査・研究が進められて、的確な対策が実施され、かってのような豊かな有明海の再生が図られることを念願するものである」という委員長談話を発表しました。マスコミも共通して「中・長期開門調査」の必要をくりかえし主張しています。
日本共産党は、閉め切り9周年にあたり、漁業被害に苦しみ、自殺者さえ出す深刻な事態に置かれている漁業者や「再び宝の海を」と願う県民と力をあわせ、事業を中止し、中・長期開門調査を早急に行うことを国と県に強く求めます。
2.たとえ「完成」しても、多額の税金をつぎ込み続けることに
「もう99%完成したから」と、国・県はあくまで工事完成につき進んでいます。とんでもないことです。
調整池の水質は97年堤防閉め切り後、COD濃度は2倍以上に悪化し「水質汚濁に関する環境基準」をはるかに上回わり、潮受け堤防の外側の海や浜のヘドロ化も顕著になっています。今後浄化のためにどれほどの県費が必要になるか分からない状況です。干拓事業が完了しても、調整池をきれいにするためには、岡山県児島湾の閉め切りが証明しているように莫大な費用が費やされ、際限ない県民の税金投入が懸念されます。
県は干拓農地について、50数億円の県費を支出し、リース方式で農業者に貸し出そうとしています。
しかし、県の営農意識調査では造成農地の3倍以上の入植希望者があったと発表しています。それが事実であれば、「リース方式」による県費の新たな負担はすべきではありません。
九州新幹線長崎ルートや国営諫早湾干拓事業など「これら大型事業に対する県民の視線は総じて厳しい」(長崎新聞 知事選関連特集2006/1/10)と指摘され、諫早湾干拓事業に賛成の県民は15.2%だったのに対し、反対は48.2%に達しています。
諫早湾干拓事業への県民の批判の声に、知事は謙虚に耳を傾け、中・長期の開門調査と工事中止を決断すべきです。
日本共産党は、漁民や市民のたたかいと力をあわせ、ムダな公共事業の典型である諫早湾干拓事業の中止と、中・長期開門調査の実現のため全力を尽くします。
諌早湾干拓堤防締め切り9周年
党県委員会が声明出し、街頭から訴え
諌早湾干拓の堤防締め切りから9周年にあたる2006年4月14日、日本共産党長崎県委員会は、右のような「声明」を発表し、中長期の開門調査と、諌早湾干拓事業の中止を、改めて国と県に要求しました。
この日、党県委員会の山下満昭県委員長と西村きえ子県常任委員・元県議は、長崎市の駅前や繁華街で街頭から訴えました。
山下氏らは、「有明海が異変を起こし、多くの漁民が魚や貝が獲れなくなって、生活に困窮している。裁判所も必要と指摘した、開門調査をただちに行うべき」、「たとえ完成しても、際限のない税金投入がつづく諌早湾干拓はね中止すべき」と呼びかけました。
また、「諌早湾干拓や新幹線にキッパリ反対しているのは日本共産党だけ」と強調し、「悪政をただし、県民の願いを実現する日本共産党の議席を伸ばしてほしい」と訴えました。
なお、この声明文は、中田晋介県議によって、金子知事、両副知事、諌早湾干拓室長など県庁の幹部に届けられました。
また、民主団体、労働組合、諌早湾干拓関係団体にも送付されました。
党県委員会の声明文
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