2012年2月県議会文教厚生委委員会
中学校武道必修化 3月7

【堀江議員】
 
通告をしておりますので、質問させていただきます。

 今日の長崎新聞に、県民の声が次のように載りました。

 「心配なことがある。多くの中学で男子は柔道をしなければならなくなるようだ。データによると、他の競技に比較して柔道は格段に死者が多いらしい。理解に苦しむ。なぜ武道なのか。日本の心ならば、将棋や習字ではいけないのか」ということで、柔道の必修は危険で心配だという声です。

 今回の2月定例会の一般質問の中でも、中学校武道必修化の安全対策についてという質問がありました。この中で教育委員会の答弁としては、柔道と剣道とダンスから選択をすると。柔道の選択の予定は160校、88%が選択をするということ。安全対策として、授業前後に健康診査をする、無理のない指導をする、体育学習サポーター派遣措置を行うというふうな答弁があったと理解をしております。

 そこで質問ですが、授業前後に健康診査をするといっても、その体制、あるいは授業の影響がありますから、具体的にどんなふうになるのか。無理のない指導といっても、無理があるか無理がないかという、そのことがまず把握できていないのではないかという疑問。体育学習サポーター派遣措置といっても、160校に一斉にこれを派遣できるのか、するとすればどういう体制をとるのか。私は、本会議での質問を聞きながら、そういう疑問をさらに深くいたしました。

 通告しておりました、中学校武道必修化の安全対策について、詳しく、一般質問を踏まえた上での答弁を求めたいと思います。

【伊藤体育保健課長】
 現在、確かに委員おっしゃるとおり、
88%の学校が選択で柔道を行っております。

 安全チェックにつきましては、あくまでも我々は研修会の中で、学校の武道指導で健康、安全チェックを行ってくれということでやっておりまして、体制という形をこちらではつくっておりませんけれども、各学校でそのチェックはやっているというふうに思っております。

 現在まで指導要領にのっとって選択実習をしておりまして、昭和33年から昭和63年まで格技という形で柔道は実施されております。男子は必修という形になっております。

 そして、平成元年から現在まで、選択ということで実施をされております。その中で学習指導要領にのっとって柔道は指導されております。そして、この20年間、中学校での授業での死亡事故はあっておりません。ただ、危険なものではないということではございません。学校の先生方がそういうふうに学習指導要領にのっとって実施をしているところでこういう事故が起こっていないということもありまして、そのチェック体制とか、無理のない指導、先ほど言ったみたいに受け身や礼儀作法、それを重点に指導をしていっていると。それから、2人組みで組ませる場合は、その体重や身長差、習熟度、それらを考慮して行うようにという指導は、こちらも十分やっております。

 サポーターにつきましては、柔道の指導に不安を持っている先生方が確かにおりますので、その学校にサポーターを派遣して支援をしていくということで考えております。それから、アドバイザー事業というものがございまして、その地域で研修会を行う時に、柔道の専門家を派遣して研修をしていただくということも来年度は考えております。そういうことで、安全対策につきましては、こちらも十分配慮しながらやっていきたいと考えております。

 それから、事故が起こるのは、時間前とか、そういうところでふざけあったり、そういう場合に事故が起こる可能性があると思いますので、その辺を十分気を付けるようにと、研修会の折に常に言っているわけでございます。一応、そういう指導をしております。

【堀江議員】
 今の体育保健課長の答弁を聞いて、安全対策は十分やっているという最後の答弁でしたけれども、聞いている範囲では安全対策はやっていないというふうに私は感じますね。

 例えば、安全チェックの体制は各学校でと。人的な配置も予算もなくて、どんなふうにやるのか。まずそこからいきましょうか。

【伊藤体育保健課長】
 学校におきましては、健康面のチェックという部分につきまして、学校の体育教師が時間前にそういうことを児童生徒から聞くことでチェックをしていっていると理解をしております。

【堀江議員】
 そうすると、本会議で答弁した授業前後に健康診査をするという意味は、時間外に体育の先生が生徒に聞くということですね。授業前後にどういうふうに健康診査をするのか。ただ先生が聞くだけを健康診査をしたというんですか。そういうふうに聞こえますけど。

【伊藤体育保健課長】
 そういう体制というものにつきまして、我々は、体制づくりという指示はしておりませんけれども、文部科学省におきましても、そういうチェックをきちっとするようにという文書が来まして、それをきちっと学校の先生方に、武道研修会の折にお伝えをしているところでございます。

【堀江議員】
 非常に県民が不安に思っている、安全対策は本当に大丈夫かと。本会議の議員の質問に答えて、授業前後に健康診査をしますと言った割には、体育の先生が生徒に聞くだけというのは、これはとても授業前後にチェックをしたとは思えませんね。

 それに、20年間事故があっていないと。しかし、部活では事故があっているでしょう。しかも、部活の事故で長崎県は裁判をしているんじゃなかったですか。これは私の記憶違いですかね。柔道にかかわってのこういう裁判はなかったですか。

【伊藤体育保健課長】
 この
20年間で、柔道における中・高校生の部活動と授業での死亡事故は74件ございます。そのうちの授業での事故はございません。

 それから、裁判の件ですけれども、今、壱岐高校で平成16年に起きた、障害を受けた生徒につきまして裁判が行われているところでございます。

【堀江議員】
 課長の答弁を借りれば、危険なものではないということではないという答弁ですが、確かに授業ではなかったでしょう。しかし、部活で
74件もある。先ほど私が紹介したように、1つのデータでやっぱり柔道は危険度が高いと言われているから、県民の皆さんも含めてこういう心配があるんですよね。そういう意味では、これは安全ではないというか、どうとらえるかというのは大変な問題だと思うんです。

 さらに、体育学習サポーター派遣事業は、不安を持っている学校に支援すると。ここら辺は、もう少し客観的な状況できちんと支援をするというふうにはならないんですか。不安を持っている学校というのは、これはどうでもとれますね。

【伊藤体育保健課長】
 一応、体育学習サポーターの活用計画というのを、各地区の学校ごとにアンケート調査をしております。

 体育学習のサポーターを利用したいという学校は50.3%ございます。そのほかの学校につきましては、柔道の経験者がいるので結構だという部分がございます。一応、そういうところに対して支援をしていくというふうに考えております。

【堀江議員】
 50.3
%の学校に、この体育学習サポーターは十分配置できるんですか。

【伊藤体育保健課長】
 体育学習サポーターにつきましては、授業は
1年間に10時間程度、1年、2年、それぞれ授業があるわけですけれども、その12時間か23時間、学校の要望に応えて支援をすると。そこで柔道の考え方とか、基本的な技とか、柔道の教え方とか、そういう部分に支援をしていくというふうにこちらは考えております。

【堀江議員】
 支援をするという言葉はいいんですが、実際に学校で指導する先生にしてみれば、わずかそれだけの時間できちんと柔道の技を自分が身につけて、また逆に生徒に教えるようになるには、私は非常に厳しいのではないかというふうな思いもいたします。

 いずれにしても、新年度から中学校の武道必修化の安全対策は県民の一番不安なことの一つでもありますので、今の答弁では、長崎県が安全対策をとれているとは私は思えないですよ。

 例えば安全チェックの一つにしても、各学校でというんじゃなくて、きちんと県教委として人的配置や財源的な措置も含めてしないと、先生が子どもたちに、「どうか、今日は大丈夫か、熱はないか」と聞いたぐらいでは、私はとても健康面のチェックをしているとは言えないと思いますが、教育次長なり教育長なり、この点について。

 要するに県民が言う、中学校の武道は本当に大丈夫かと、安全対策が長崎県はとれているのかと、これは市町任せになってはいけないと思うんですよ。最後に、この問題についての基本的な見解を教えてください。

【江頭教育次長】
 中学校の武道の必修化についてのご質問ですが、柔道が必修化されたということが喧伝されているわけですが、具体的にいうとこれまでも、平成
24年度以降と同じ時間の柔道が県内の各中学校で行われてきたという前提がまずあります。それぞれの学校で体育の先生が、生徒たちの柔道の指導をすることになります。必修化に伴って、多くの先生が柔道の指導に当たらなければいけないと、これまで体育の教員ではあったけれども、柔道の指導の経験を持たない先生たちがおって、その人たちがその指導に非常に不安を持っていると。

 であれば、そういう人たちに対して集中的に研修を行ったり、あるいは指導方法、子どもの健康面等についてのチェックの指導、あるいは、必要であればサポーターを措置するとかという、これまでの流れの中に必修化に伴って出てくる問題点を改善していくための手を細かく打っていく必要があるというふうには考えておりますし、現実的に理屈の問題ではなくて、そのことに不安をお持ちの保護者であるとか、あるいは先生たちであれば、その不安をいかに吸収し施策として打っていくかということは、私どもも重たい課題として受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

【堀江議員】
 これ以上論議をするつもりはないんですけれども、いずれにしても、これまでやってきたからということではなく、次長が言われましたように、必修化に伴ってさまざまな問題が出てきた、それへの対応を、やはり私としては、各教育委員会任せではなく県教委として率先して安全の確保という立場で取り組んでいただきたいというふうに思っております。