2011年2月県議会文教厚生委委員会
成年後見推進支援事業3/14
【堀江議員】
 この成年後見推進支援事業というのは、言葉として出てくるのは初めてと思うんですが、これは具体的にどういう事業なのか教えてください。

【藤田福祉保健課長】
 これは、重度の認知症の方など判断能力がない方に後見人をつけまして、いろいろな法律行為等を代理して行うことでその方々の権利を守るという立場で行う事業でありまして、今回の事業では、その後見人を養成するため、特に法人後見といいまして社会福祉協議会とか、あるいはNPOの場合もあると思いますけれども、そういう法人後見人を養成するための講座を開催したいと考えております。

【堀江議員】
 今は健康な方でも将来、あるいは年齢とかで結局判断能力がなくなると。その時に、今までだったら財産管理をするということが主な仕事でしたけど、これからの時代はライフステージ、その人の人生に合わせて、例えば医療機関との契約も含めてさまざまな権利を擁護と、一言で言うと難しいと思うんですが、そういう状況が出てくるということで、この成年後見制度というのは非常に注目をされている事業だと思っています。

 そこで2番目の質問ですが、この事業は、例えば長崎市の場合は成年後見制度利用支援事業として実施されております。この成年後見制度利用支援事業というのは、長崎市と佐世保市と大村市、あと5町がやっているだけですが、このことと、今言われた成年後見人を養成するための事業との関係はどうなりますか。

【藤田福祉保健課長】
 委員がおっしゃったように、成年後見制度利用支援というのは、介護保険等の中で、例えば後見人を認定する費用、あるいは日常の後見人の活動の費用を助成する制度ということで、実際に後見制度がスタートした、あるいは後見人を指定する時に発生する費用を介護保険なり、あるいは障害の関係の自立支援法でみるという制度で、今回の予算については、そういう制度をうまくやるために人材を育成すると、そのための研修事業ということでございます。

【堀江議員】
 そうしますと、例えば長崎市の成年後見制度の利用支援というのは、判断能力が不十分な認知症、高齢者等で、親族による成年後見人の選任の申し立てが見込めない場合に、市長が親族にかわって家庭裁判所に選任の申し立てを行うということですけど、長崎県の場合は、長崎家裁に成年後見制度を申し込んだ件数は2009年度で10件です。福岡県が63件、熊本県25件、宮崎県22件、佐賀県15件ですから、長崎の場合は自治体が申し立てるということが非常に少ないと。

 一方では、そういう成年後見人になる人がまだまだ少ないという理解でいいんでしょうか。予算の使い方との関連でお聞きします。

【藤田福祉保健課長】
 市町村で制度が進んでいないということですけれども、この後見制度自体が法律的なところがありまして、なかなか制度の理解も、それから後見人を育てることも容易ではないというところに原因があるように聞いております。

【堀江議員】
 この成年後見制度の中で今、争っている一つの裁判があります。後見選挙訴訟という裁判ですが、成年後見人がつくと選挙権を失う公職選挙法の規定は法の下の平等を保障した憲法に反するということで、今年の2月、国に選挙権があることの確認を求めて東京地裁に提訴したという裁判があります。

 これは、選挙制度創設に伴って公選法が改正されまして、被後見人が選挙権を持たないということを規定されました。この訴訟を行った方は、ダウン症で中度の知的障害があるんですけれども、お父様が後見人になったと同時に選挙権を失いました。この方は、選挙の時には欠かさず投票に行って、選挙公報を見て候補者を選んで投票していたのに、選挙のはがきがこなくなったということでの裁判であるわけです。

 この成年後見制度というのは、財産管理だけではなく権利の擁護をするという大きな面と、その一方でこういう制約される面というのも出てきて、その権利の擁護をどう考えるか現場では非常に問題というか、認識が非常に問われると聞いております。

 そういう意味では、今回は長崎県が養成を行うための予算ですが、そういった現在の光と陰といいますか、積極面と消極面といったことも含めて現場の声をよく聞いた上で、どういう成年後見制度であるべきかということも含めた養成になってほしいと思うんですが、そこら辺はどうですか。

【藤田福祉保健課長】
 今の選挙権の問題は私はあまり承知しておりませんけれども、制度を運用する中でいろんな課題、問題が出てくると思いますので、その点に関しては、今回の事業には法務省も入っていただくということになっていますので、その中でまたお話もさせていただきたいと思います。

【堀江議員】
 いずれにしても、この問題は新たに始まった事業ではないんですけれど、進んだところとそうでないところと自治体によって大きく違います。長崎県が初めてこの予算を付けましたので、私としては、現場の皆さん、悩んでおられるワーカーの皆さんを含めて、どういう認識であることがいいのかといった声も聞きながら養成をしてほしいということを要望して、終わります。