2月県議会 文教厚生委員会 3月9日
長崎県病院企業団設立について
質疑と反対討論
【堀江議員】 
 病院企業団の設立は医師の確保も目的の一つでございますが、医師不足がなぜ起きるのかということについて。

 まず1点目は、医療はお金がかかる、この認識があられるかどうかということの質問です。

 人間を相手にしたサービス労働は、技術が発展するほど人間の手がかかります。例えば自動車を考えた場合、生産技術が上がれば自動車の生産台数というのは1人当たり当然上がってまいります。

 ところが、医療は技術が上がれば医者が要らない、こういうふうにはなりません。一般的には技術の進歩は人間の負担を軽くしますが、医療や福祉、教育など、人間を相手にしたサービス労働の場合は、技術が発展するほど逆に人間の手が多くかかるという特徴があります。

 例えば、1人のドクターが今まで診ていた、あるいは内科、外科、そういったこれまでの診療体系でも内科といった場合、今では消化器、肝臓、胸部、循環器、細かく専門科になりました。

 例えば、レントゲンがなかったころにはレントゲン師というのは要らなかったんですが、レントゲン師も必要になってくる。医学が進歩すると新しい専門家も必要になります。

 そうなれば、国民の数は同じであっても医学や医療技術の進歩は産業技術とは反対に技術が進歩すれば人が必要になる。そういう意味では医療というのはお金がかかるんだと私は思うんですけれども、この点について、まずどんなふうにお考えでしょうか。基本的な見解で申しわけないんですが、まずお尋ねいたします。

【矢野病院事業管理者】
 委員おっしゃるとおりでございまして、GDP比で8%の医療費を日本がかけているということが先進諸国の中で低いと言われていることは皆さんから言われているところでございます。

 したがいまして、総枠が多いか低いかということに関しまして、今、先進諸国の中で比べますと医療費総額というのが抑えられているということが現状であることは事実であるというふうに思っています。

 ただこの場合、これが提供とスタントのバランスをどうするかということに最後は行き着くわけでございまして、そこは大きな政治問題として日本で解決していかなければいけない問題ではないかというふうに思っています。

【堀江議員】
 私は医療にお金がかかると思っている、その私の基本的な見解と矢野病院事業管理者の答弁は同じという認識で思っています。実際に世界の主要国の中で日本の置かれている予算にかかる額というのは低いということも今答弁の中で言われました。

 そこでお尋ねなんですが、私は医師不足と言われる一つの主な理由として、国が医療費抑制政策をとってきたことだというふうに思っております。医師不足も本来であればお金を出すべきところを出していない、ここに私は問題があるというふうに思っているんですね。

 医師数抑制を閣議決定して以後、ドクターの数を減らすというふうな状況がとられてきました。結局そこにはお金をかけないという政策の一つのあらわれだと私は思っているんですが、先ほどのお答えの中で政治の問題という発言がありましたが、私は県の、特に医療にかかわる分野の責任者として、国に対しこうした医療費抑制政策を改めるべきだということを申し上げるべきではないかというふうに思っているんですが、そのことについては過去、長崎県として国に申し上げたことなりがあるのか、あるいはそういう考えがおありなのか。機会に教えてください。

【矢野病院事業管理者】
 知事から国に対してどういう要請があったかということは明確には記憶していませんが、常にそういう共通認識は持っているつもりでございます。
 ただ、今おっしゃいまいたように、お金をかけさえすれば今の医師不足ということがすっと解決するかということには、そうばかりではないということは申し上げたいと思います。

 今、委員がおっしゃいましたように、消化器科とか、呼吸器科とか、いろいろ医療が進んできました。医者はみんな患者を治したいと思いますから、自分の実力が発揮できるような、そこの精神的なところでしたいというふうな意欲で今進んでいます。

 そういたしますと、人口が少なくなって患者さんがほとんどいないようなところに行く人たちと、それから、そういう自分の実力を発揮する、医療の進歩に連れながら変わっていく医療に対応できるような教育、それから、自分の研さんを積みたいというギャップがだんだん広がってきていますから、これが偏在、都会集中型とか、長崎県でいえば長崎集中というふうになってきて、周辺部が非常に過疎になってきていますので、これはお金だけではなくて、もうシステムの問題だというふうに私は感じています。

【堀江議員】
 今回の長崎県の病院企業団の設立の問題につきましては、本当に実態として大変だという状況ではなくて、これをしないともう病院がつぶれるというぐらいに深刻な状況だと思っているんですが、ただ、こうした状況を県民が本当にそうなんだと思うほど住民の合意、住民の認識があるのかという時に、私は非常にギャップがあるというふうに思っております。

 特に、例えば富江病院でありますとか、奈留病院でありますとか、先生がもういなくなるから病院そのものがつぶれるかどうかという時に先生の配置を考えた減ですが、しかし、住民からすると、今まで病院に何人分ベッド数が入っていたところがそのベッドが少なくなるとなれば、それは簡単に「うん」と言えないんですよ。そこをこうしないと乗り切れないんだという合意を得ているのかという点では、特に病院企業団が昨年の9月定例会で設立に関してまず議会で決めて、今回の条例についてはそれに伴う条例整備になるわけですが、とりわけ今よりも去年の9月定例会というのは自分たちの病院がどうなるかということがまだ見えていない、不安が先に立ったんですね。

 そういう意味では、この病院企業団の設立の問題は住民の合意を得ているのかという点で、条例を決めた昨年の9月定例会と、そして今2月定例会ですが、その点はどんなふうに今認識しておられますか。

【矢野病院事業管理者】
 病院企業団の設立は、11病院でそのままの状況で発足するということが決まっているわけでございます。

 ただ、そこの中で有識者会議、その他の中で改革ということは考えるということになっているんですけど、スタート時点はあくまでも現状で住民の理解を得ながら進めるということになって、今のお話に出ました奈留病院も富江病院も、今これですぐに切るというお話でスタートするわけではないわけでございます。

 ただ、もう委員よくご存じのように、例えば松浦市民病院ももう窮地になってしまいました。それから、西海市立病院ももうどうにもならなくなってきました。大村市民病院は財政的にもう移しました。周りを見ましても野母でも琴海でもすべてそうでございます。

 それだけ住民とのギャップがある中で最終的ににっちもさっちもいかなくなってからでは、今度はもう再生ができなくなるわけなんですね。

 だから、そういう意味で、我々は企業団をつくって意思決定権が比較的明確になるようにした中で住民にどういうふうな協力をしていこうということでございますから、今、委員がおっしゃったように、もう改革が決まっていましてそれでスタートするということでは現状はないということはご理解いただきたいというふうに思っています。

【堀江議員】
 言われるように11病院で出発するんです。が、やはりいろんなこれまでの協議会での話、あるいは地元の声、実際に医師の勤務をどうするかということを考えた時に、現状が維持できるかということで非常に疑問があります。

 いろんな意味で住民の声を今後聞きながら、そういう要望を聞いて進めるというのが病院企業団の設立ということではあるんですが、私はどうしても疑問はぬぐえないということはこの機会に発言をしておきたいと思います。

病院企業団設立 反対討論
【堀江議員】
 第25号議案「長崎県病院企業団の設立に伴う関係条例の整備等に関する条例」ですが、昨年9月定例会で採択された病院企業団設立に伴う諸整備の条例です。
 県内の地域医療の現状は地域崩壊ぎりぎりのところにいるという矢野病院事業管理者の見解は理解をいたします。しかし、その認識が地元住民には十分に理解されていないというふうに私は思っています。

 自治体病院で何をやってほしいのか、住民自身がきちんと理解をする、その手順が私は必要だと思っております。

 昨年9月定例会での各自治体での決議の状況は何ごともなく全会一致ではありませんでした。私は9月定例会、当委員会には所属しておりませんでしたが、議会運営委員会の中で、各地域の医療体制が現在協議中の段階で、企業団の設立は時期尚早という意見を述べて反対をいたしましたので、その同じ立場で今回も反対をさせていただきます。