9月県議会 文教委員会  2008年9月25〜26日
長崎県教育振興基本計画の審議
A教職員の資質の向上について


【堀江県議】
 78ページ、ここに「教職員の資質の向上」というので、これからるる述べられます。平たく言いますと、先生方を人事評価しますと、研修を実施しますということで、先生の資質を向上しますというふうに、これはるる掲げてあるんですが、教職員の資質の向上という時に、教育条件の整備であると私は思います。

 平たく言えば、先生の数を増やすこと。先生の数を増やさなければ、これは大変ですよ。今でも私以上に教育委員会の課長である皆さん方が把握しておられるではないですか。

 さまざまな心身的な問題も含めて出てくるのは、1つは、さまざまな問題を先生たちが抱えて大変な状況にあるからだと私は思っています。

 教職員の資質の向上は、何よりも研修をするとか、人事評価をするとか、そのことを給与に反映するとか、そういうことではなくて先生を増やすこと、それが一番だと思います。

 そこで思うのは、2006年に制定された行政改革推進法です。正確には、「簡素で効率的な政府を実現するための、行政改革の推進に関する法律」この法律では何を言っているかというと、教職員については5年間1万人程度の純減を確保する。先生を減らすということを、一方の法律で決めております。

 増員どころか、これは削減の方法です。そうしますと、この教育振興基本計画も、これは国の法律でしょう。しかし、この行政改革推進法も国の法律ですよ。

 そういう意味では、行政改革推進法の廃止、このことも視野に入れて考えないと、教職員の資質の向上にはならないというふうに私は思いますが、行政改革推進法との兼ね合いの観点はないのか質問します。

【石橋教職員課長
 教職員の定数の問題といいますか、数の問題のご質問であろうというふうに考えておるところでございます。

 ご指摘のとおり、国においては、いわゆる行政改革推進法という部分で一定の削減をしつつも、さまざまな観点でいろんな施策を講じておるというふうに我々は理解しております。

 私ども県教育委員会としましては、国における定数のあり方というのは、標準法に基づいて算定されておるわけでございますので、私どもは国の標準法に基づいてしっかりその定数を確保していくという形で、その中でという方がよく教育効果にあるのかという部分で、これは検討すべきことであろうというふうに考えておるところでございます。

 したがいまして、定数の問題については、そういう枠の、標準法の、国の枠の中でやっぱり検討、整備していくべきものであるかなというふうに私は思っております。

【堀江県議】
  要するに、国は先生方の数は減らすという法律をつくりましたと、しかし、その法律に対しては、長崎県教育委員会としては粛々と認めますということですよね。

 先生方の現場を一番知っているのは、教育委員会じゃないですか。そういう意味では、教職員の資質の向上と、人事評価をする、それを給料に影響させる、それだけで資質が向上しますか。ならないでしょう。

 罰則だけ与えても、管理を行って、強めてなるものじゃないんですよ。やはり先生がきちんと時間をとって、授業の準備ができる、十分余暇もとれる、そういう余裕のある先生方の勤務状況でなければできないんです、資質の向上は。素人が考えてもわかることじゃないですか。しかも、そこには、先生方の数を増やさないとできないと私は思うんですよ。

 私が質問した行政改革推進法との関連があるのかということでは、全く関連がないという答弁ですが、この資質の向上の問題では、こうした一方で、先生方を削減する法律をつくっておいて、資質の向上はあり得ない、このことを指摘したいというふうに私は思います。

 そこで、先生方の資質の向上の中に、83ページ、「指導が不適切と思われる教諭」という文言が新しくできましたね。この基準は何ですか、基準を示してください。

【池田義務教育課人事管理監】
  本年4月1日に、この指導改善教師にかかる規則を改定いたしておりますけれども、その中では、「指導が不適切な教諭等とは、知識、技能、指導方法、その他教員として求められる資質能力に課題があるため、日常的に児童生徒の指導を行わせることが適当でない教諭等」、これは助教諭、講師等を除きますが、「のうち研修によって指導の改善が見込まれるものをいう」というふうに定義をさせていただいております。

【堀江県議】
  定義はわかるんですよ。だれが見ても、だれが判断し、その基準をもう少し明らかにできないんですか。定義はわかるんです。

【池田義務教育課人事管理監】
  例えば具体的なことでございますよね。教師としての専門性や教育的愛情に欠けるというような一つの目安を持つとしますと、例えば教育課程に沿った指導がなかなかできないとか、あるいは教科に関する専門的な知識や技能等が不足しているとか、あるいは児童生徒の掌握ができず、学級経営や生徒指導が適切に行われない等、本来、教諭が教師として持つべき能力、資質に課題がある、あるいはその適性に問題があるといった教諭のことを指しているというふうに考えております。

【堀江県議】 
 指導が不適切と思われる教諭ですよね、非常にあいまいな表現です。
 前回の教育振興基本計画では、「指導力不足」という言葉が言われました。「指導力不足はどこで判断するのか」と私は質問しましたね、この場で。

 そしたら、「県の教育委員会内で判断します」と。「それはおかしいんじゃないの」と。「県の教育委員会内の判断じゃなくて、同僚の判断であるとか、保護者の判断であるとか、そういう人たちも含めて指導力不足という判断をしないと、それはおかしいのではないか」と私が質問したら、江頭義務教育課長は、「いや、平成20年度からきちんとそういう保護者も入れて指導力不足であるかどうかは評価をします」というふうに言いましたね。

 そうしますと、今回、指導力不足をさらに超えて、指導が不適切と思われる教諭、指導が不適切な教諭じゃないんですよ。指導が不適切と思われる教諭ですよ。だからそこには明確な判断基準はないじゃないですか、明確な判断基準がない。知識が不足していると思われる。先生方それぞれの科目をやるのに、知識があるから、その教科の先生になったわけじゃないですか。

 小学校の先生にしたって、それなりの知識があるから教員採用試験に受かってあるわけでしょう。だから知識が不足していると思われるということは、おかしな話じゃないですか。

 私が言うのは、指導が不適切な教諭じゃない。指導が不適切と思われる教諭というのは非常に判断が難しい。しかも、今、回答した基準は明確な基準じゃないでしょう。だれが見ても客観的に思うような基準じゃないじゃないですか。

 そういう意味では、この指導が不適切と思われるという教諭の具体的な基準のペーパーがあるんだったら出してください。

【寺田教育長】
  指導が不適切な教諭、それから指導が不適切と思われる教諭。この使い分けですけれども、指導が不適切と思われる教諭等については、その正確な情報の集約を行い、改善が必要と思われた教諭に対して指導改善研修を実施しますと。

 ですから、思われる教諭等の定義というのは、今私持ち合わせておりませんが、これについてはしっかりした情報の集約を行い、確かな形で指導が不適切な教諭の認定というのをいたしましょうと、そういう意味です。

 まず、その前提として思われると。いろんなデータから、それを聴取して、しっかり審査した上で、改善が必要なものについては改善の手だてをとりましょうと、そういう使い分けです。

【堀江県議】
 そうすると、私はますますわからなくなるんですけれども、指導が不適切と思われる教諭等の正確な情報の集約。
 例えば先生一人の授業のやり方について40人の子どもたちの保護者が全部その先生のやり方はいいんだと思うかというと、いろんな意見があるじゃないですか。それと同じに指導が不適切と思われるという情報は、例えばこの先生がこうだったということが寄せられた場合に、それは不適切と思うなら思うの基準があるんでしょう。

そうでないと、ただ情報が寄せられたからといって、それで翻弄されるというのはあり得ないと思うんですよ。

 要するに私が言いたいのは、指導力不足をどこが判定するのかと同じように、この指導が不適切と思われる教諭という判断も、結局、県の教育委員会などでやるんでしょう。そうなった時の判断基準というのは、公にしておかないと、先生たちだって納得をしないし、保護者だって納得をしないですよ。そこを言っているんですよ。

 だから、指導が不適切と思われると思うんだったら、例えばどういう情報があった時に指導が不適切と思うのかというガイドラインがあるのであれば出しなさいと、出してくださいと私は言っているんです。

 それとも、そういうのはありませんと、指導力不足と同じように県教育委員会内で、それは算定しますと、あるいは判断をしますということなのか、そこら辺をもう少し明確にしてください。

【池田義務教育課人事管理監】
  今、ご指摘と言われております指導改善研修につきましては、昨年4月に教育公務員特例法の改正がありまして、その法の第25条の中に、指導改善研修についてうたわれております。

 この法の改正に伴いまして、平成20年2月8日付で文部科学省が、「指導が不適切な教員に対する人事介入システムのガイドライン」というのを示しております。このガイドラインに基づきながら、私どもの方は規則の改正等を行っておりますが、この中にも、先ほど言いました指導が不適切である教諭等の定義というのを定められております。

 少し読ませていただきますと、「教科に関する専門的知識、技能等が不足しているため、学習指導を適切に行うことができない場合、あるいは指導方法が不適切であるため、学習指導を適切に行うことができない場合。

 例えばほとんど授業内容を板書するだけで、児童等の質問を受け付けない等、児童等の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導等を適切に行うことができない場合」、(発言する者あり)そういった内容が、国のガイドラインに示されております。

【堀江県議】
  そうしますと、そういったことをどうやって客観的に判断するのかというのが私の質問の趣旨ですよ。

 教育委員会内で校長先生に情報が寄せられて、そしたらその校長先生から教育委員会に情報がくるでしょう。教育委員会で判断するんですか、それともこれまでの議会の答弁であったように、そこには同僚の先生、保護者の意見、保護者の意見はもう平成20年度から入れると言いましたよね。

 そういうふうにきちんと教育委員会内の判断ではなくて、その先生にかかわる人たち、その先生をよく知っている人たちのもとで判断をするのか。せめてそれぐらいはっきりさせないと、今言われたことは抽象的ですよ。取り方によってどうでも取れると私は思います。

 指導が不適切と思われる先生は、どういうふうに指導が不適切というのか、いやそうでないというのか、その判断をどうするのか、そのシステムを最後に聞きますから、そこを答弁してください。

【池田義務教育課人事管理監】
 例えば1つ、2つの情報の中ですぐ判断をするというわけではございません。当然、そういった声は校長先生等から入ってくるわけですので、あるいは校長先生が普段の学校経営の中で教室を見て回ったり、あるいは授業を見て回ったりというようなことをやっておりますので、今の授業はどうかなといったもの、あるいは保護者の声、児童の声、それから先ほど堀江県議さんからご指摘いただきました同僚の声等も当然加味をしながら、それに基づいた指導、あるいは観察、記録等を行ってまいります。

 これを総合的に判断いたしまして、校長の方が、これはやっぱり指導が不適切であると判断をした場合に、市町教育委員会の方に報告をした後、まず、県の教育委員会の方に提出がなされます。

 県の教育委員会は、提出なされて、その後、指導改善審査委員会というのを設けておりますが、ここに審査をお願いいたしまして、そこで一定の判断がなされます。

 この判断の中で、確かに指導改善が必要である、あるいはこれは学校の方でもう少しきちんとした支援を行いながら指導すべきであるとか、あるいはこの先生は大丈夫じゃないかといたような判断がなされます。

 もし審査判定を受けましたら、そこで審査委員会の方から具申がなされまして、それを受けて県教育委員会の方で判断をしていくというふうな、そういったシステムになっております。

【堀江県議】
  私がこの問題にこだわるのは、これまで指導力不足だったのが、指導が不適切と思われるというふうに、これは先生方にとっては大変なことになったからですよ。

 2月の議会で、「管理職が判断するというのではなくて、同僚や子どもや保護者や専門家、そしてその判断を受ける先生自身が納得ができる、そういう評価をしないと大変なことになる」と私が質問した時に江頭義務教育課長は、「保護者もその検討判断する一人に入れたいと、加えたい」という答弁をしました。

 そうしますと、今言った審査委員会の中に、その保護者の皆さんも参加させるんですね。その上で、ご本人も納得するような判断をするということで理解していいんですか。

【池田義務教育課人事管理監】
 まず、指導改善審査委員会のメンバーでございますが、このメンバーの中には、今委員ご指摘がありました保護者も入れながら審査を行っていくことになります。

 それから、本人への確認状況ですが、まず、観察指導に問題があるかなと校長が判断をした場合に、本人に対して校長は今から観察をしますよとか、それから指導を少しこれからやっていくよといったことを、まず本人の方に伝えていく。

 それから、それをずっと続けていく中で、やはりどうしても改善が見られないといった場合に、申請を行う場合ですが、その場合には市教委、または校長の方から書面、または口頭で当該教諭から意見を聴取するといったような形をとっております。

 また、先ほど指導改善審査委員会のお話をさせていただきましたが、この審査委員会も判断をする前の段階で、書面、または口頭で当該教諭から意見を聴取すると、そういったものも中に組み入れてシステム化いたしております。
 以上です。

【寺田教育長】
  指導改善審査委員会のメンバーの中に保護者を入れると。それは当該教諭が勤めているところの保護者ではないと、これは保護者代表という形で別の方に入ってもらうということです。

 なお、保護者や同僚の意見は、校長が判断する時に、その資料として十分受けますと、反映させますと、そういう意味です。

【堀江県議】
 私としては、この指導が不適切と思われる先生たちをどう評価するかという問題は、私がこの間2月の当初予算の時から指摘をしているように、ご本人も十分納得ができるような、そしてご本人を、いわば応援する対応をしないと、これは単におまえはだめだとか、あなたはだめだとか、そういうふうなやり方では何にもならないと思うんですよ。

 だから、ご当人を知っておられる同僚の人、あるいは保護者、そうでなければ判断ができないというふうに私は言っているわけで、指導が不適切なんだと。いわば烙印を押されるわけでしょう、それは、先生にとっては本当に大変なことだ思うので、審査委員会のあり方についても、私が主張したような立場で再度検討していただきたいということを、強く申し上げておきたいと思います。