9月県議会 文教委員会  2008年9月25〜26日
長崎県教育振興基本計画の審議
@国旗・国歌を尊重するとりくみについて

【堀江県議】
  私も幾つか質問したいというふうに思います。
 まず、55ページの今回新たになった、「ふるさとを学ぶ教育の推進」の中で、「我が国に関する指導の充実」というのが今回追加をされました。

 私は、126ページ、「伝統文化の継承」の中で、「郷土に誇りを持ち、豊かで活気ある地域社会を実現するためには、郷土の歴史や伝統文化を正しく理解し、次の世代へ確実に守り伝えることが重要です」という文言がありますね。これは長崎県の教育振興基本計画ですから、長崎県の郷土の歴史を学ぶということは、その方向は当然だというふうに私は思います。

 それなのに、長崎県の教育振興基本計画なのに、なぜ我が国に関する指導の充実が出てくるのか。これは長崎県教育委員会が国の教育振興基本計画をつくっているんですか、それがわからないというのが1点。

 それから、今、論議になっております国旗、国歌を尊重する取り組みに努めますと。具体的に何をするのか。
 先ほどの質疑の中で、「国歌を歌えるよう指導する」。今やっているじゃないですか。今もうできているでしょう。小学1年生に上がったら、みんな国歌を歌えるじゃないですか。それなのにどうして明記をするのか。

 明記をすることと、このことによって現状と何が変わるのか。まず、2点質問します。

【寺田教育長】 
 長崎県も、当然、我が国の一部でありまして、その我が国の歴史や文化、伝統を学ぶということは、国の振興基本計画、あるいは学習指導要領に基づいてきちっと教えていきましょうと、そういう趣旨で、ここにも記載したものでございます。

【江頭義務教育課長】
 「歌えるように」という文言を付加したのは、指導要領の改訂に伴うものでございます。

【堀江県議】
 教育長は、国がそういうふうになっているので、国の部分も長崎県には学ばなければいけないからというような答弁だったと思うんですが、今回の長崎県の教育振興基本計画がつくられた根拠というのは、教育基本法の第17条の2ですね。

 「地方公共団体は、その地域の実情に応じ定めるよう努めなければならない」。国と同じものをつくれと言っていないんですよ。その地域に応じてつくりなさいと言っているんです。わざわざ掲げなきゃいけないのか、我が国に関する指導の充実を。長崎県の教育振興基本計画であれば、長崎県の実情がどう反映されるのか。

 私が、さっき126ページを述べましたように、長崎県郷土の歴史を、県民の子どもたちが学ぶというのは、当然至極なことだと私は思うんですが、わざわざなぜ我が国に関する指導の充実を掲げなきゃいけないのか。

 これは国の法律に基づいてつくる基本計画ですから、当然ですよ。でも、国と同じことをつくれとは言っていない。だから国がつくりなさいということで、そこに掲げてあるから、県の教育振興基本計画にもつくりましたという答弁だけでは、私は納得ができませんので、我が国に関する指導の充実というのを入れた理由を、もう一度教えてください。

 それから、国旗・国歌を尊重する取り組みの問題ですが、学習指導要領で国歌の問題が出ているのはわかりましたけれども、私が質問したのは、ここに掲げていることが現実どう現場にかかわってくるのかという質問です。

 取り組みを尊重すると、尊重する取り組みに努めますということで、では何をするのかといった山田(博)委員の質問に答えて義務教育課長は、「国歌を歌えるよう指導する」と言ったでしょう。だから私が言ったように、国歌は今だれでも歌えるじゃないのと言っているのよ。だからわざわざ振興計画に明記をすることが現場にどう影響するのか、これを言っているんですから、そこを答弁してください。

【前田総務課企画監】
  2月にお示しした教育振興基本計画(案)におきましては、このAのところが@でした。
 主な取り組みの一番目は、「郷土に関する学習機会の拡充」ということで記載をいたしておりまして、今回、@の部分、「我が国に関する指導の充実」を新たに記載いたしております。

 2月定例会でもご議論をいただきましたけれども、教育基本法改正に伴いまして、国を愛する態度といった点が弱いのではないか、具体的にそのようなご意見もいただきました。

 その折に、私どもは、「学習指導要領に基づいてやっていること、全国的にやっていることについては、それをすべて書くわけではなくて、本県として力を入れて取り組みたいと申しますか、主な取り組みを記載いたしております」ということで答弁をいたしておりますけれども、その折に、そういうことであっても、このような重要なことは記載をすべきであるというご意見をいただいております。

 そのようなご意見を踏まえて、学習指導要領にのっとって行うことを、ここに記載いたしております。

【江頭義務教育課長】
  基本的に本県の場合には、国旗・国歌等についての指導というのは、従前から各学年で指導をしていただいております。

 ただ、教育基本法等の中で伝統文化、あるいは国を愛するという視点の中で、これまでも従前どおりの指導ではありますが、特活、社会科、音楽等各教科の指導の関連を図りながら、その意義というものを子どもたちに届けていくというようなことになろうかというふうに思っております。先ほどは、音楽に限定したお話しでした。

【堀江県議】
 最後の質問から再質問しますけれども、義務教育課長、私はここに明記することによって、現場にどう変わるのと、学習指導要領で今までやってきていたことじゃないのと、国歌はだれでも今歌えるでしょうと、小学校1年生になったら。

 そういう指導をしているじゃないの。それなのに、ここに明記することによって現場にどう影響がするんですかと言っているんだから、そのことをもう一度答弁してください。(発言する者あり)

【江頭義務教育課長
 基本的には、従前から本県の場合には指導していただいておりますので、その言葉をつけても、現実的に大きく変わることはないだろうというふうに考えています。

【寺田教育長】
  義務教育課長が申し上げましたとおりでございます。
 基本的に、本県では、国旗・国歌の指導はきちっと行っておると思っております。
 したがって、ここに書き込んだという意味は、これをしっかり続けていきましょうということでございます。
 ただ、きょう、松田委員さんからお話がありましたので、この意味をわかりやすく発達段階に応じて解説してやると、意義と意味を教えてやるということについて、新たな取り組みをしたいなと考えたところでございます。

【堀江県議】
  私の今の2つの質問に対しまして、平たく言えば、これまで学習指導要領で長崎県としてはやってきたことを、議会が強く望んだので、「我が国に関する指導の充実」という文言をあえて掲げたと。

 そして、「国旗・国歌を尊重する取り組みに努めます」ということについては、これまでと同じなので、ここに掲げたからといって、今後何ら現場に影響することはないと、そういう理解でいいですか、確認です。変わるのか、現場が。それを答弁してください。

【江頭義務教育課長】
  再度申し上げます。
 現実的には、その言葉がつかずとも、十分にやっていただいておりますので、「そのことを踏まえて、今後、継続する」と教育長が答弁したとおりでございます。

【堀江県議】
私が、この質問にこだわるのは、国旗・国歌の問題は、国民を二分する問題だと思うからです。
 確かに、松田委員のようなお考えもあるでしょう。しかし、国旗・国歌をシンボルにして、国民を戦争に導いてきたという日本の過去の歴史があります。

 そういうことを考えた時には、簡単に国旗・国歌の取り組みを尊重するということでは同意できません。それは、単に気分の問題とか、感情の問題ではなく、歴史の事実として、教育が侵略戦争を進めるための道具に使われてきた事実が、現としてあるわけですから、そのシンボルが国旗・国歌だったわけです。

 それを思えば、わざわざこれに掲げるということは、今後、例えば東京都で起きているように、国旗・国歌にかかわって、さまざまな教育委員会から罰則なりがあるのではないかという危惧も私はするわけです。だから、あえてこの質問をするわけです。

 しかし、今の答弁では、「国旗・国歌の取り組みを尊重する」という文言があっても、現場においては何らこれまでと変わらないという回答がありましたので、ここの我が国に関する指導の充実そのものは、わざわざ掲げる必要はないと私は思いますけれども、そのことを踏まえて次の質問に移りたいというふうに思います。