2008年3月6日 文教委員会
水産高校実習船の3県共同建造事業についての質疑

堀江県議
 長崎・福岡・山口3県実習船共同建造事業費について。
 3県合同で実習船を建造するという話ですが、これは今まであったのですか。私の認識では、各県1つの実習船というふうに思っているんですが。

山中教育環境整備課長
 共同運航は初めてでございます。

堀江県議
 3県合同は初めてだという答弁でしたが、そうしますと、私が心配するのは、生徒達へのカリキュラムの影響です。そこで現年度、現行の運行計画を示す計画表があると伺っております。
 そこで、委員長にお願いですが、その計画表の提出を求めたいと思っております。よろしくお願いします。

 この資料は、県立長崎鶴洋高等学校の平成19年度実習船「長水丸」の運航表です。これを見て私も理解するのですが、操業方法は、マグロはえ縄、そして三次、四次の、いわゆる底引き網、トロール操法をされます。

 1年間のうち3県が幾つかの期間を区切って、その1つの実習船を使うわけです。そうしますと、ここにあるような底引きもやったり、マグロはえ縄もやったりということはできなくなるのではないかと素人ながら考えるんですが、その点はどうなんでしょうか。

 そして、また、私が聞くところによりますと、マグロはえ縄というのは非常に質の高い操業をしなければいけないので、生徒達はまずトロール、底引き網を実習して、その後、マグロはえ縄を実習するんだというふうにも聞きました。
 そうしますと、底引き網もできなくなるのではないか。なぜなら、今度つくろうという3県合同の実習船は、マグロはえ縄を主とするという実習船になりますから。生徒たちはいきなり底引き網を体験しない、経験しないままマグロはえ縄をするのかと、素人ながらそういう考えもあるんですが、合同になった時にはどうなるのか、そういう話がどこまですすんでいるのか、質問いたします。

米倉高校教育課長
 平成19年度にやっているこのカリキュラムに相当する実習ができなくなるのではないかというお尋ねでございますけれども、実習の中身を見直すことによって、この実習に必要な日数は、そのまま確保できるカリキュラムが組めそうでございます。

 まず、マグロはえ縄は、従来どおりの実習を考えております。トロールにつきましては、現在、全国的に見まして、トロールを実施している学校は非常に少のうございます。そして、また、トロールには、いわゆる水産資源の保護という観点からの問題等もございまして、今はトロールにかえて中期航海といいますか、イカ釣り等を組み入れた、そういうカリキュラムを考えることによって、実習期間に相当する内容を確保できるという見通しを持っております。
 
堀江県議
 今の説明の、「必要な日数は確保する」と言われた意味がよくわからないんですよね。
 私がこれまで聞いたお話の中では、生徒達がトロール操業を体験し、その上でマグロはえ縄をやるというふうに私は理解していたんですね。

 そうしますと、今の答弁では、いろんな事情から、自然保護という立場からトロールということはしないで、イカ釣りなどをするということですが、そういうイカ釣りなんかも、この実習船を使わないんですか。
 3県合同になれば、どんなにしても当然少なくなるでしょう。ドッグ入りの期間もありますから、4ヵ月とか3ヵ月とかだけとなるじゃないですか。それなのに必要な日数は確保するということはどういう意味なのか、説明してもらえますか。

米倉高校教育課長
 まず、実習の期間でございますけれども、この鶴洋高校は、いわゆる海技士の免許を取得するための養成施設にもなっておりまして、海技士を取得するためにはどうしても3ヵ月の乗船実習が必要でございます。ですから、何としても3ヵ月の乗船実習は確保したい。現在、委員のお手元にある平成19年度の運航表によりましても、3ヵ月、いわゆる90日の確保ができるような組み方になっております。
 
 これは、トロールが何回にも分けて実施されておりますけれども、船が大きくなることによりまして、先ほど言ったイカ釣りのような形を導入しますと、一度にできることになります。
 そして、実際、今度の共同運航の場合も、長崎・福岡・山口とそれぞれ各県の中でうまく年間を通して整理をしますと、長崎もこの90日に相当する日数は確保できる、そういうことでございます。

堀江県議
 そうしますと、資格取得に3カ月間の乗船を要するという、そういう意味の必要な日数は確保するというお答えだったということを理解いたしました。

 しかし、問題は、「長水丸」の運航表にありますように、体験、研修とか、あるいは国内の航海とか、国際航海とか、交流乗船とか、海洋観測実習とか、こうしたことも決して無視できないといいますか、実習生として、水産科を学ぶものとして、これは切り捨てられない問題ではないかというふうに私は思うんですね。そういう点はどういうふうに理解したらいいですか。
 
米倉高校教育課長
 今ご指摘ありました点につきましては、まず、いわゆる「体験航海(国際航海)」と書いておりますけれども、これは確保いたします。それから、いわゆる沿岸・潜水・海洋観測実習等につきましては、既にその90日の中にもう含まれている内容でございます。
 それから、1年生の体験航海につきましては、鶴洋高校には、もう1隻「すいらん」という船がございますので、その活用を図ることによって実施できると考えております。

堀江県議
 この3県合同の実習船の問題では、もう10年にわたって論議をされた話だというふうに伺っておりますけれども、日本高等学校教職員組合の皆さんが文部科学省に対しまして、合同建造をやめてほしいという要求をいたしております。
 1つは、実習船の構造や漁業種、操業内容は各県で異なり、それを3県合同で1隻にしてしまうことは、教育課程上大きな問題があり、水産実習の本質を弱めるものであるということ。

 それから、3県合同の実習船建造によって、乗組員の大幅削減による失業、転職問題が懸念されるし、身分や処遇の変更が余儀なくされる重大問題で、職務遂行に多大な影響を与えるから、この3県合同の実習船の建造については待ったをかけてほしいという要望も出されております。

 私は、本当に3県合同で水産県長崎の後継者を育てることができるのかということを、この質問でぜひ指摘をしたいと思いました。
 特に、道州制という問題では、確かに知事は議会冒頭の説明の中で「『九州はひとつ』に向けた取り組み」ということで、道州制の九州モデル策定の一つとして、この建造を挙げています。

 しかし、一方で、今回問題になりました県庁の建て替え問題では、「道州制の動向について、その現実には、なお、相当の期間を要するものと考えられる」と。県庁建て替えの問題は、県庁内の整備検討委員会の見解ではありますけれども、県民から見たら、一方では道州制のために実習船を3県合同でつくると言いながら、一方では、道州制はまだ先だから県庁の建て替えをすると。これは県民にとっては、矛盾する話なんですよ。

 この3県合同で実習船を建造するという問題は、県民の間からも指摘されているということを、ここでは申し上げておきたいと私は思うんですが、教育長はこの件について、特に見解をお持ちではないですか。

横田教育長
 政策連合という点では、効率的にした方が、より大型化して安全性と効率性が高まるという観点からこれを行うもので、道州制を前提に今回つくるというふうに決めつける必要はないと思います。これは3県それぞれで運航するよりも、船は大きくなりますから、経費負担等々については、極端に言ったら半分程度になるということでご理解をいただきたいと思います。

 道州制の問題は、知事も繰り返し議会でも申し上げておりますけれども、やはり共同でできるものはやるけれども、国の制度の、いわゆる業務を国が行っているもの、県が行っているものもございますけれども、その中で、国の支分庁で行っているものについては、地方にゆだねていいのではないかという前提もございます。

 それと、道州制の本来のあり方論は、法律の問題がございますので、まだ国の方で相当の詰めが必要なわけですが、その辺についてはまだはっきりした見通しがないという面では、いつまでにというはっきりした問題ではないというタイムラグの問題は確かにございます。
 そういう意味で、私どもとしては、政策連合としてやれるものはやっていこうという立場で、今回取り組んでいるわけでございます。

 県庁の問題については、今から議会で議論をいただくわけでございますが、災害、あるいは防災上、県民の安全を守る意味での防災拠点となる機能というのは、行政機関として、当然の責務として持たないといけないという立場で、耐震性という観点からやはり壊れてしまうわけにはいかない。緊急事態でも、いかに機能を維持するかという観点からの検討が今なされているというのが一つのポイントかと思います。
 
堀江県議
 教育庁、道州制の問題は横に置いたとしても、これまで長崎県1県で「長水丸」という実習船を持って、水産県長崎の後継者を育ててきた。そういう教育設備に対して、3県合同ということでは、少なくとも日数を含めて、責任の問題を含めて、様々な問題が生じることは事実です。
 この3県合同の実習船の建造というのはいろんな問題があるということを改めて指摘をしておきたいと思っております。

横田教育長
 私どもも「長水丸」の建造については、補助金をいただいてつくる前提でおりますが、そういう金目の問題だけではなくて、やはり教育のあり方としての検討もあわせて文部科学省と詰めを行っております。その二つの点からの検討を十分重ねてまいりまして、いけるという判断のもとに、今回こういう予算化をしているわけでございます。
 もちろん水産県長崎としては、そういう船員の養成もございますし、漁労技術の後継も十分検討すべしという観点からも、文部科学省と詰めを行ってきた次第でございます。
 
堀江県議
 この3県合同の実習船の建造につきましては、子ども達の教育カリキュラムをどう確保するのかという立場で当たっていただきたいということを、あえて申し上げたいと思います。