◆憲法改正について
 日本共産党の中田晋介です。党を代表して知事に質問いたします。

 十月二十八日、自民党が今の憲法を全面的に改正する「新憲法草案」を発表しました。 翌二十九日には、ワシントンで開かれた日米安全保障協議委員会で、在日米軍基地を再編強化する「中間報告」が合意されました。そして三十一日には、民主党が「憲法提言」を発表しました。これらの動きは「憲法を変える」「米軍基地を強化する」という、まさに、21世紀の日本の進路と県民の将来を左右する重大な出来事であります。 これについての知事の見解を質問します。

 第一に、自民党の「新憲法草案」は、戦力不保持と交戦権の否認をさだめた憲法9条2項を削除して、海外での武力行使にたいする歯止めをはずしました。そのうえで、自衛軍の保持を明記しました。その自衛軍は自衛のほか「国際的に協調して行われる活動に参加する」と書いて、海外での軍事活動に道を開いています。まさに、日本をアメリカいいなりに海外で戦争をする国につくりかえるものであります。

 つづく民主党の「憲法提言」も「必要最小限」あるいは「抑制的」という条件付きですが「武力の行使」に踏み出す点では、自民党と共通の立場に立っています。

 これに対して、平和の保障である「憲法9条を守ろう」という運動が全国で大きく広がっています。昨年、大江健三郎さんや梅原猛さん、澤地久枝さんら9氏が呼びかけた「九条の会」は、今、全国に三千六百作られました。長崎でも、土山秀夫元長崎大学学長や原爆遺族会の下平作江会長、カトリックの高見三明長崎大司教さんたちの呼びかけで、県下に三十の九条の会が作られています。

 被爆県の知事として、日本を再び戦争をする国につくりかえる九条改憲に反対すべきと思います。知事の見解を質問します。

◆米軍基地再編について
 第二に、佐世保米軍基地強化に対する知事の対応について質問いたします。 日米安全保障協議委員会による在日米軍再編に関する中間報告は「地球規模で自衛隊が米軍を補完して共同作戦を展開する」ことと「そのための司令部の一体化をはじめ在日米軍基地の再編強化」を打ち出しました。これは、従来の日本防衛と極東有事に備えるという日米安保条約の範囲をはるかに超えて、世界中で日米が一緒に戦争をする体制づくりであり、一層強化した米軍基地が二十一世紀のはるか将来まで日本に居すわりつづけるという計画であります。

 これに対しては、強い国民の反対の声を呼び起こし、各県の知事がいっせいに反対の表明を行っています。

 稲嶺沖縄県知事は、米軍普天間基地の名護市辺野古移設の新しい案について「県としては県外移設をもとめており、この案はちがう」と反対を表明しています。

 神奈川県の松沢知事は、ワシントン州から米陸軍第一軍団司令部が同県のキャンプ座間に移転することにたいして「地元の意向を無視したやりかたで到底承服できない」と反対 北海道の高橋はるみ知事も米軍戦闘機訓練の千歳基地への移転に反対。

 山口県の井関知事は、空母艦載機部隊が岩国基地に移転することに「騒音のたらいまわしであり、容認できない」と反対し、 九州では、鹿児島県の伊藤知事が、沖縄の米軍空中給油機の鹿屋基地への移転にたいして「問題の原点である沖縄が反対しており、その事情を考えると賛成できない」と反対を表明。宮崎県の安藤知事は、米軍戦闘機訓練の新田原基地への移転に「騒音や事故の心配が払拭されない」と反対しています。

 今回の中間報告には、佐世保基地の名前は出てきませんが、佐世保ではすでに中間報告を先取りする形で米軍の基地強化が行われています。

 その中心は「海軍遠征攻撃群」という先制攻撃部隊の配置であり、その中核となる大型強襲揚陸艦「エセックス」の母港になっています。「エセックス」は総排水量4万トンで海兵隊を乗せて空母に匹敵する上陸作戦を行う艦船です。イラクのファル−ジャ攻撃にも「エセックス」の海兵隊が参加しました。

 被爆県長崎が日本の防衛とは無関係なアメリカの戦争の攻撃発進基地になっています。また、前畑弾薬庫の針尾移転は、危険な基地の市内でのたらい回しであり、まさに沖縄の普天間基地の辺野古移転と同じであります。針尾地区では、住民過半数の署名で反対の意志が示されています。

 本県の知事も、他県の知事と同じように、このような米軍の基地強化に反対し、その撤去をもとめるべきでありますが、知事の対応を質問します。

◆長崎県の教育問題について
 第三に、教育問題について質問します。

 本県では、一昨年の長崎市の駿ちゃん事件、昨年の佐世保大久保小学校事件、今年平戸市で中学生が妹を殺害しかけた事件と重大事があいつぎました。

 県も「心をみつめる教育週間」「命を大切にする道徳教育」「心の面談シ−ト」などの対策をとってきました。今年7月には、知事が異例の「長崎の子どもを育むための緊急アピ−ル」まで出しましたが、その直後6人の中高生があいついで自殺するという、非常に深刻な事態であります。

 長崎の子どもたちはどうしてこのように心を病んでいるのか。我が県の教育のどこに問題があるのか、ということを真剣に検討する必要があるという立場から質問いたします。 日本が国連の「子どもの権利条約」を批准して十一年経ちました。国連の子どもの権利委員会は条約を批准した国が、条約をどのくらい守っているか、5年ごとに各国政府に報告書の提出を求めて審査を行っています。委員会は、この審査にもとづいて一九九八年六月、日本政府に対し「日本では、高度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、子どもが発達障害におちいっていることを懸念する。さらに、不登校、登校拒否の数が見逃せない数にのぼっていることを懸念する。過度なストレス及び不登校、登校拒否を防止し、それと闘うための適切な措置を取るよう勧告する」と表明しました。

 そして二○○一年八月、国連の経済的・社会的及び文化的権利に関する委員会は「日本に対する最終見解」として「日本が教育システムの包括的な見直しを行うことを強く勧告する。この見直しは、全ての段階における教育が過度に競争的でストレスの多い性格のものになっていることから、生徒の不登校、病気および自殺さえも招来していることに焦点をおくべきである」と表明しています。

 これは、日本の教育全体についての国連からの勧告でありますが、長崎県の教育としても深刻に受け止めるべき内容であります。

 しかし、本県の教育は全く逆の方向にいきました。県は、二○○三年度から高校入試の総合選抜制度を廃止しました。長崎地区5校、佐世保地区3校、諫早地区2校の約一万八千人の受験生に、より広い範囲で受験させ、一層はげしい受験競争を強いています。

 つづいて、地元の強い反対を押し切って、諫早高来分校、西陵東長崎分校、有馬商業、長崎式見、長崎南商業と身近な小規模校をつぎつぎと廃校にしました。

 これらの措置で、子どもたちをより広い範囲での競争にかりたてる一方、一人ひとりの子どもを大切にする少人数学級については、かたくなにその実施をこばんできました。

 それが、まさに国連の勧告が指摘をしたような本県教育の深刻な事態を招いているのではありませんか。いまこそ、競争的なシステムをやめ、すべての子どもを大切にする教育への転換をはかることを強く求めて、教育長の見解を質問します。

◆被爆体験者支援事業について
 第四に、被爆体験者支援事業について質問いたします。

 十月の制度改悪で、これまで三年間、支援を受けてきた人の三分の一の人が制度から除外されました。国が基準を厳しくして面接の答え方ひとつで除外したもので、誰もが納得していません。

 除外された人の声はほんとうに痛切です。長崎市戸石町の七十三才の女性は「同じ家で被爆した姉と妹は認められて、私だけ除外されました。不思議でなりません。どうか認めてください」と訴え、平間町の六十九才の女性は「兄弟四人一緒に被爆したのに、スクリ−ニング検査という短い質問で、私一人除外されて全く理解できません」、古賀町の七十三才の男性は「当時、古賀国民学校の高等科一年で、校庭にいて爆風で吹き倒されました 頭上で光ったのも覚えています。それなのに、なぜ、該当しないのでしょうか。理由を聞きましたが教えてもらえませんでした」と訴えています。

 年をとれば記憶もあいまいになり、上手に話せなくなります。しかし、原爆の影響などでいっそう病気がちになり一番支援をもとめています。そういう人たちを無慈悲に切り捨てる国の制度改悪は絶対に許せません。

 県の平成十八年度政府施策に関する要望書では、「一、被爆体験者の実態にあった事業の実施。二、事業実施に必要な財源の確保」とあります。これは、基準を厳しくしてたくさんの除外者を出した国のやりかたが「被爆体験者の実態に合わないので改めてもらいたい」「減らした予算も必要な額に戻せ」と国に求めているのか、確認を求めて質問します。

◆長崎市北部への電車の延伸について
 第五に、長崎市の電車の北部延伸について質問します。

 長崎市北部には、県が造成した滑石・横尾の住宅団地を中心に大きな住宅地が広がっています。この地域への電車の延伸は、住民の長年の切実な要望であります。かつては、六地蔵の坂を電車が登れない、電車が乗り入れるには道路が狭いという障害がありました。しかし、今では坂をのぼれる車両がすでに購入されていますし、横道から滑石・寺川内間の道路拡幅もはじまり、まもなく電車乗り入れの障害がなくなります。

 二○○二年度に、国・県・市・交通業者・学識経験者・市民代表で構成する「路面電車北部延伸検討協議会」は検討の結果、「電車の北部延伸は都市軸に対応した重要な公共交通機関であり、その必要性については異論がない。今後、導入に向けたさらに具体的な調査・検討を進める。赤迫交差点については、早急な改良を検討する」という結論が出されています。そして長崎市からは、赤迫交差点の改良案が提案されています。長崎市は重要課題の一つとして推進しており、県としても意欲的な取り組みが求められますが、県の対応について質問いたします。

◆大型店出店への対策について
 第六に、大型店出店に対する規制について質問いたします。

 佐世保市北部の相の浦地区に、イオン九州株式会社が大型店の出店計画をたて、佐世保市に出店予定地の農用地指定の除外を申請しました。

 この会社の店舗の名前はジャスコでありますが、すでに、佐世保市南部にはジャスコ大塔店があります。三万平方メ−トルの巨大店ですが、計画されている相の浦店は六万平方メ−トルでその二倍の大きさです。四千台の駐車場をもつ九州一の規模の超巨大店舗であります。

 これに対して、県商工会議所連合会、県商工会連合会、県中小企業団体中央会、県商店街振興組合連合会の経済四団体は、出店に反対して、知事と市長に要望書を出しています その中で「このような計画が実現に移されるならば、今まで市民生活を支え、市民の憩い・賑わいの場となり、地域文化の担い手となるなど、多くの役目を果たしてきた佐世保中心地区商店街や近隣商店街は壊滅的影響を受け、小売商業者の倒産・廃業があいつぎ、多くの失業者が生じる恐れがあります。このことは、賑わいの喪失、地価の下落をひきおこし、長年にわたって形成してきた都市の魅力はなくなり「まち」は荒廃するであろうと憂慮いたしております」とのべています。まさにそのとおりで大型店の進出でさびれた商店街は県内にいくつも先例があります。

 そのうえで要望書は「佐世保相の浦地区における開発計画について、その前提となる農地の転用が行われないよう格別の配慮をはらうこと」と、「広域的な観点から長崎県独自の調整機能が果たせる良好な小売商業機能が確保されたまちづくり推進に関する条例の制定」を求めています。

 この地域は、十九億円を投じて、県による農地の圃場整備と排水対策事業が行われた地域であり、知事も農地保全のため開発を認めない立場を表明すべきであります。また要望に応えて、福島県の前例も参考にしながら、独自の調整機能を持った条例を作るべきであります。さらに「小売商業調整特別措置法」を積極的に活用するなどして、この超大型店計画を規制すべきですが、知事の対応について質問いたします。

12月6日本会議
中田県議の一般質問

12月6日の一般質問を掲載します。当局の答弁や再質問の様子については、後日掲載ましす。

一般質問ムービーはこちらから(県議会HPより)