県民あげての運動で3年前から始まった「被爆体験者支援事業」が、6月から大改悪され政府に対する怒りの声が高まっています。長崎被爆地域拡大連絡会(代表世話人・峰松巳さん)から「前の制度に戻すように」もとめて政府に意見書の提出をもとめる陳情が出されました。中田議員が賛成討論をおこない、県議会は全会一致で意見書を議決しました。


「被爆体験者支援事業の拡充を求める陳情」についての中田議員の賛成討論

「被爆体験者支援事業の拡充を求める陳情」について、本委員会が、ぜひその趣旨をくんで政府に対する意見書を決議していただきますよう討論を申し上げます。

 長年の被爆地域拡大の運動の結果、3年前から「被爆体験者支援事業」が始まりました該当する皆さんは「自分たちもこれでやっと被爆者に準じた支援を受けることができるようになった」と喜んでいましたが、突然、この6月から制度が大幅に改悪されてしまいました。これまでの「爆心地から半径12キロ以内に住んでいるもの」という、不合理な居住要件は「長崎県内」に拡大する若干の是正がおこなわれるいっぽう、

1、事業の目的が「被爆体験者の健康の保持と向上」から「被爆体験者個々人の症状の改善、治癒をはかる」とかえられ、

2、医療給付の支給対象も「被爆体験による精神的要因に基づく健康影響が認められる者」から「特定の精神疾患を持つ者」と限定され、

3、「医療受給者証」は「精神医療受給者証」にかわり、医療費支給の対象となる疾患名が記載されそれ以外の疾病は支給の対象から除外されます。

4、「受給者証」更新時の精神科医師による意見書の提出も、現在の3年に1回から、毎年に1回となりました。

 これでは、支援事業の範囲が、格段に厳しく狭いものになり、これまで支援を受けていた被爆体験者の多くが閉め出されることになります。それは前年度実績が14億円あった本事業の予算が、今年度9億円に大幅に減額されていることでも明らかであります。

 陳情は、このような制度の改悪をやめ、元の制度に戻すよう県議会から政府に意見書を提出していただきたいというものであります。

 元々、この制度は、同じ12キロ以内で被爆しながら、たまたま当時の長崎市という行政区域に入っていなかったという被爆者を、同じに扱ってほしいという長年の被爆地拡大の運動がうみだしたものであります。せっかく始まったその支援が後退し、一般の被爆者とのあいだにますます格差が大きくなることは、該当する県民にとって耐えがたいことであります。

 さきに開かれた長崎市議会では、伊藤長崎市長が「被爆者にとって、12キロという苦渋の線引きのなかで、長い年月をかけて、やっと、こういう医療受給者証が実現できた喜びもつかのまに、こういった国のやりかたに、非常に私も怒りを感じていますし、残念に思います。元にもどすべきだというのが当然のことで、今後ももっと運動を続けていきます」と表明しています。長崎市議会も「事業の目的を事業創設時の目的に戻すこと」を政府に求める意見書を満場一致で議決し、近く、市長、議長、市議会厚生委員会が一緒に厚生労働省に要請を行う予定と聞きました。どうか、県議会も市と足並みをそろえて意見書を決議し、政府に強く働きかけていただきますようお願いして討論と致します。


       被爆体験者への支援に関する意見書

 被爆体験者への支援については、被爆体験者精神影響等調査研究事業として、長崎県民の長年の願いであった被爆地域拡大是正運動の結果、平成14年4月1日から被爆体験者の健康の保持と向上に資することを目的として実施されてきた。

 しかしながら、国は昨年の「被爆体験者精神影響等調査研究事業のあり方に関する検討会」の報告書を受け、事業の見直しをおこない、平成17年6月1日から居住要件を長崎県内に拡大する一方で、医療費の対象疾患が限定され個人ごとに特定されること、医療受給者証更新の際の精神科医師による診断を3年に1回から毎年にするなど、大幅な変更がなされ、この見直しによって被爆体験者は大きな不安を感じている。

 よって、国に対して、より円滑に事業運営ができるよう、以下の改善措置を講じられるよう強く要望するものである。

 1、この事業の実施については、被爆体験者の実態に合った内容とすること。

 2、この事業に係る予算に関しては、国の責任において確保すること。

              平成17年7月12日  長崎県議会