つくる会の教科書の採択を求める陳情に反対 文教委員会
長崎県教科書改善連絡協議会 松尾千秋代表から「公立中学校社会科教科書の採択についての陳情書」がだ されました。陳情は「採択されてきた教科書には歴史記述に誤りがあり、慎重に調査の上、自国を愛する観点で評価するように」と、暗に扶桑社の「新しい歴史教科書」の採択を求めています。文教委員会で陳情の誤った立場を明らかにして討論を行いました。
長崎県教科書改善連絡協議会から出されている「公立中学校社会科教科書の採択について」の陳情書について意見を申し上げます。
本陳情は、教科書採択にあたっては、検定に合格した教科書であっても、近隣諸国条項などで事実と相違する記述があったり、善良な日本国民としての意識を育むうえで不適切とおもわれる記述などは絶対に排除するように求め、従軍慰安婦、南京大虐殺問題、蘆構橋事件などについて独自の見解をのべ、それに合わない各社発行の中学校社会科教科書を批判し、訂正を求めるというものであります。
しかし、陳情が主張する見解そのものが、客観的事実に相違したものであり、こんな見解にそった教科書は、さきにおおきな国際問題になった扶桑社の「新しい歴史教科書」だけであります。本陳情は、この教科書の採択を意図するものと思われますが、それでは本県の子どもたちに謝った歴史認識を教えることになり、絶対に容認できません。 歴史的事実について陳情が主張する見解の特徴的な誤りをみてみますと、従軍慰安婦問題について、陳情は「戦地で売春業者が行ったことで軍や官憲の強はない」とのべていますが、そうではありません。はじめは日本政府も民間業者がしたことといっていましたが、被害者本人の訴えと国際的な批判の高まりのなかで、1993年、日本政府は韓国での聞き取り調査と関係機関での資料調査の結果、強制連行の事実を認め「当時、軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と公式に認めて陳謝したものであります。
南京大虐殺についても、陳情は「そういう事実はなかった」といっていますが、それは誤りであります。この中央公論社の「日本の歴史」第25巻では、「南京占領と虐殺事件」の項で、旅団長として南京攻撃を指揮した佐々木到一陸軍中将の「戦場記録」を引用しています。要点を紹介しますと「部隊をまとめつつ前進、和平門にいたる。その後俘虜ぞくぞく投降しきたり数千に達す。激昂せる兵は上官の制止をきかばこそ、片はしより殺戮する。城内に残った住民はおそらく十万内外。その中に多数の敗残兵が混入していることは当然である。抵抗するもの、従順でないものは容赦なく即座に殺戮した。終日、各所に銃声が聞こえ、大平門外の外堀が死骸でうずめられてゆく」という日本軍の指揮官自身のリアルな証言であります。つづけてこの本では「そのごも、みさかいもなく一般民衆に対する虐殺が続くのであり、ドイツ人を責任者として南京につくられた国際救済委員会は、4万2千名が虐殺されたと推計し、ニュ−スは世界に大々的に報道されたが、日本人は、戦後の東京裁判で追及されるまで、この事件を知らないでいた」とのべています。
これが、世界で認められた事実であり、一般の歴史書、知恵蔵やイミダスなど現代用語辞典、百科事典にものっている国民の常識であります。それをきちんと書いて子どもたちに伝える教科書こそ、正しく歴史を教える教科書であり、それを採択するなという陳情の主張は大きな誤りであることを述べて、本陳情に対する意見といたします。