少人数学級について 文教委員会質問  (05年3月7日)

文部科学大臣も「クラスの人数を減らしたい」

[質問・中田県議]
 少人数学級編成の推進について質問いたします。これまでの文部科学大臣、たとえば町村前文部科学大臣は「学級規模については、人間関係の形成や切磋琢磨という面からある程度の規模が必要であるという点から、少人数学級は問題
がある」と、立石県教育長とまったく同じ理由をあげて、少人数学級に消極的な態度を取ってきました。それが中川成彬文部科学大臣になって大きく変化して注目されます。
 それもごく最近、あの大阪府寝屋川中央小学校での教職員殺傷事件がおこって、事件に関して議論された2月23日の衆議院文部科学委員会での答弁であります。「クラスの人数を減らす方にいかないといけないと思う」という重要な文部科学大臣の国会答弁です。課長さんからその関係部分を読んで当委員会にお示しください。

[答弁・池田教職員課長]
 中川大臣は「私も小中学校のころ50人以上のクラスでありましたし、集団的な行動を学ぶためには、ある程度の数が必要ではないかと認識していたが、大臣になってあちこちまわったりして、先生方からいわれるのは、昔の子どもにくらべて、今の子は手が掛かるということがある。自分の妹も先生をしていて、もすこし学級の人数を減らさないと先生方は大変だよ、とききましてクラスの人数を減らすほうにいかないといけないんだなと思う」という答弁であります。

[質問・中田県議]
 お聞きのように学級の人数を減らさなければ、という大臣答弁です。この質問者は日本共産党の石井郁子衆議院議員で、寝屋川中央小学校で事件を起こした少年が、小中学校時代に人数の多いクラスで過ごしたことを明らかにして「いま、子どもたちは非常に複雑な様々な問題を抱えている。そのなかで本当に一人ひとりの子どもに目が行き届き、その子に合わせた指導ができるという点では、30人学級に踏み出す決断を文部科学省がすべきだ」と求めた質問への答弁です。大臣の「学級にはある程度の数が必要だと認識していたが、今の子どもは手がかかり先生方は大変だと知って、人数を減らさなければいけないと思っている」という答弁は大変重要です。
 そこで教育長におたずねいたしますが、大阪府寝屋川中央小学校での事件に関して持たれたこの大臣の認識は、一昨年の中学生による幼稚園児殺害事件、昨年の大久保小事件と重大事件を引き起こした本県でもこういう認識を持つべきではないでしょうか。そして、切磋琢磨という競い合いに重点をおいた学級編成から、一人ひとりに目が行き届くことに重点をおいた学級編成に進むことこそ求められているのではありませんか。教育長におたずねいたします。

[答弁・立石教育長]
 本議会の一般質問でもお答えいたしましたが、学級編成で何人のクラスであれば、一人ひとりに目が届き、何人であれば難しいということは、ハッキリした考えは難しいと思っております。いま40人という編成でやっているのを、30人に減らせば、現在学校が抱えている問題が解決するとは考えておりません。むしろ教師と生徒一人ひとりとの関係のありかたに、いろんな問題の所在がある。そして最近は子どもたちが、仮に人数が減ったとしても、なかなか外に向かって見せない内面的なものの変化が非常に大きいと考えております。40人学級が多すぎて30人学級であれば問題が解決するというふうにはならないと考えております。

大久保小事件の対策にはじめて「少人数学級」

[質問・中田県議]
 そういうお答えでは、佐世保大久保小学校事件で県教委がだした対策と矛盾することになります。 一人ひとりに目が届く教育という点では、少人数授業と少人数学級があります。文部科学省はこれまで「学級は、40人学級、分かる授業は少人数授業で」といい、本県もそれに従って、少人数授業に力を入れてきました。県下で少人数授業のために386校に557人の先生を配置しているのに、少人数学級への配置はわずか12校13人にとどまっています。ですから、昨年6月1日に佐世保大久保小事件が起こって、10月5日にまとめられた事件の対策をしめした「二次報告」では、再発防止対策の中長期課題の第一にあげた「一人ひとりの児童生徒に目が届く学校教育環境の整備」の第一は「少人数授業の推進」ということでした。私は、これだけの事件を起こしながら今までと変わりないのか、とおおいに不満に思いました。
 ところが、その後大きな変化が起こりました。それがのったのが、この11月に発行され県民に配られた「教育だより・ながさき」の事件特集号です。県教委はここで「子どもの心と向き合う教育システム『長崎モデル』の構築」という見出しで「長崎県独自の教育システムをつくりあげる」とうちだしました。学校で今後、時間をかけてやるべきこととして二次報告と同じ3項目をあげ、その第一は「子ども一人ひとりに目が行き届く学校教育環境の整備」と全く同じですが、内容が変わりました。二次報告の「少人数授業の推進」というところが「少人数学級編成・複数担任制実施などの研究をおこなう」とかわり、初めて少人数学級編成という対策が打ち出されたました。そして、12月9日に出された事件の「最終報告」でも、同じ対策がそのまま「中長期的に取り組む施策」の第一番目にあげられています。
 私は、どうしてこのような変化が起こったのだろうか、と思って、事件に関する県教委の資料を読んでみましたら、次のようなことがわかりました。それは報告書には「この調査と対策の報告をまとめるにあたって、県教委は大学教授など10名の専門家から意見をきき、専門的な観点から事件のとらえ方や今後の対策について示唆をうけた」として、それぞれ記載してあります。二次報告に記載されている「専門家の意見」の「今後の対策及び課題」で出された意見を読んでみますと「児童生徒一人ひとりへのきめ細かな対応を図る観点から、一学級当たりの児童生徒数のありかたについて、研究を深める必要がある」とあります。これは、きめこまかに対応できる学級当たりの生徒数ということですから、明らかに「少人数学級の検討を」ということです。
 また「問題行動等の予兆を感じるためには、学習から離れた時間に子どもと接することが大切である。学校はそうした時間の創出にむけて日課やカリキュラムを改善するなど、努力する必要がある」という意見もあります。これも、学習から離れた時間に一人一人の子どもにしっかりと向き合うには、学習の時間だけ少人数になる少人数授業ではだめで、授業中も、そのほかの時間も担任が一緒にいる生徒の人数をへらす少人数学級でなければなりません。
 この11月の「教育だより・ながさき」でうちだされた長崎県独自の教育システム「長崎モデル」の「少人数学級編成・複数担任制実施」という対策は、まさにこういう専門家の指摘に応えたものになっています。 そこで、教育長におたずねいたしますが、今議会での教育長説明でも2ペ−ジにありますように、「平成17年度の主要事業」の第一に、事件の教訓をしっかりと踏まえ、再発防止に万全を期すとともに、子どもたちが安心してのびのびと成長できる教育環境をつくることが本県の教育行政に課せられた責務である、として本県独自の教育システム「長崎モデル」を構築する、と強調しています。そのなかでも「子ども一人ひとりに目が行き届いた指導・支援が行えるよう、少人数学級編成や複数担任制の実施などについて研究する」とのべています。
 これは、わたくしが述べたような経過をへて、これらのことを「長崎モデル」のひとつの課題として取り組むということですね。

[答弁・教職員課長]
 事件後の対策の、今後時間をかけてとりくむ課題として、少人数学級編成や複数担任制の研究をおこなうこととしております。これは、国の定数の中で少人数授業に当ててきた数を少人数学級の研究に使っていいですよ、という方針が示されたので、それに沿った形で少人数学級をつくってみて、その中でどういうことがあるか研究しようということでございます。

[質問・中田県議]
 答弁がすれ違っております。私が聞いているのは、これだけの重大事件を起こした対策に「少人数学級編成の研究」とあげたら、当然、早急に実施すべきじゃないのか。それは「長崎モデル」の重要な柱じゃないのか、とその位置付けを聞いているのです。教育長がお答え下さい。

教育長「子どもたちをみつめる方策として少人数学級

[答弁・教育長
 佐世保大久保小事件が起こりまして、学校の状況、問題点を調査し、一次報告、二次報告、最終報告とつくっていきました。その過程で10名の専門家の意見をいただきました。そのなかにお一人、少人数学級が子ども一人ひとりに目が届くためには重要である、というご意見もありました。そういうご意見も踏まえて、今後どういうことに取り組むか真剣に検討しました。その中で出てきたものの中に、少人数学級が、子どもたちをしっかりと見つめていくうえでどの位の効果があるものか、その有効性をしっかりと研究していく必要があるぞ、という議論になったわけでございます。少人数学級、複数担任制、サポーター制などが、子どもたちをしっかりと見つめていくための方策の方向性として出てきたわけでございます。それを具体的にどういうふうにすすめていくのかについては、国の加配を活用しながら、少人数学級について研究し、その成果、有効性を確認しながら進んでいくことになります。

[質問・中田県議]
 事件を検討し専門家の意見も聞いて、少人数学級の効果を確かめようということになった、ということですが、県下の少人数学級は本年度でわずか12校で、あまりに少ない。もっと増やす必要がありませんか。

教職員課長「実施校を増やすよう検討したい」

[答弁・教職員課長]
 平成17年度も13校にとどまっていますが、国の助成が受けられる対象校は50校以上ありますから今後、対象を広げて実施校を増やすよう検討してみたいと思います。

[質問・中田県議]
 県下の小中学校600校の中で13校はあまりにも少ない。もっと増やすよう努力をお願いします。いま県の負担で少人数学級を実施している県と、研究指定校で実施している県がそれぞれ何県ありますか。新年度のみとおしはどうですか。

[答弁・教職員課長]
 県の単独事業でやっている県が何県か正式な数字を持ち合わせておりません。国の加配でやっているところが20県と聞いております。

[質問・中田県議]
 これはぜひ正確な数字を調査して報告してください。私の調査では、はじめはみな県の負担で実施し2001年度10県、2年度22県、3年度30県、4年度が35県に増え、研究指定校で国の加配によるものが04年度に7県で合計42県です。そして、2005年度は佐賀、石川、岐阜、石川などで県負担の少人数学級がはじまり、実施するのが46道府県、何もやらずに残るのは東京都だけになります。しかし、少人数学級を実施している県といっても、小中学校全学年が30人学級の福島県、小学校全学年が30人学級の長野県、小学校全学年が33人以下の山形県などのすすんだ県と、本県のように研究指定校として13校だけという少ない県もあり、大きな差がついています。そこで、九州各県の状況はどうなっているでしょうか。

[答弁・教職員課長]
 平成16年度の九州各県の実施状況は、大分県で小学1年で30人以下、宮崎県で小学1年と2年で30人以下、熊本県で小学1年、2年で35人以下、鹿児島県、沖縄県で条件付きで小学1年、2年で35人以下です。

長崎は全国最下位クラス 少人数学級の教育効果は歴然

[質問・中田県議]
 佐賀県も新年度から小学1年、2年で35人以下を県の費用で実施しますから、国の費用による研究指定校だけというのは福岡と長崎だけで、立ち遅れは歴然としています。少人数学級の教育効果が大きいことは、はじめ10県だったのがわずか4年で46県に広がったことで証明されています。もし、費用ばかりかかって効果がなければ実施する県は減ったはずです。早くからやっている県は実施の結果を調査しています。ぜひ、これも各県をくわしく調べてご報告いただくようお願いいたします。
  私、進んでいる県である山形県の調査をもらってよみましたが、2003年度の調査で、少人数学級になって、子どものこえで一番多いのが「先生の指導がていねいになって話がよくきける」78%、次が「友だちが増えた」88%、「学校が楽しくなった」74%です。担任の声で一番は「きめ細かな指導」が87%、「コミニュケ−ションの向上」75%、「理解力の向上」66%、「学ぶ意欲がふえた」67%です。その教育効果は歴然と現れています。重大事件が起こった本県こそ、国費を活用した研究指定校の少人数学級に、他県のように県の負担による少人数学級を加えて本格的に実施し、生徒も教師もいきいきと学び成長できる学校をつくるよう強く求めて、質問を終わります。