2004年末の臨時県議会で県住宅供給公社の特定調停問題が、大きな県民負担が生じる形で強行され、県民の批判が高まっています。
勤労者へ良好な住宅および宅地を提供する目的で、県が設立した長崎県住宅供給公社の経営が一昨年末破綻しました。公社の申し立てで、債権者である金融機関と県および公社が、裁判所を交えた話し合いで公社の再建策をつくる「特定調停」の協議が、一年間長崎地裁でおこなわれてきました。
しかし、合意が得られないため、間にはいった長崎地裁が「調停に代わる決定」を12月20日にだし、関係者にはかっています。この決定を、すべての関係者が賛成して受け入れれば「特定調停」が成立し、決定どおりに公社の再建がすすめられます。ひとつでも反対すると調停は成立せず、公社の再建は「会社更生」または「破産」など別の方法を取らなければなりません。
地裁の決定は「県があらたに住宅供給公社に57億円を融資して、金融機関に一括弁済する」という、金融機関の意見に沿ったもので、県民に大きな損害を与えかねない内容で、県議会で大問題になりました。年末にあわただしく決めてしまおうという知事と自民党にたいし、日本共産党などは決定の問題点をあきらかにして慎重な審議を要求しました。
しかし、自民・公明両党は、追求する側が参考人招致や資料提出をもとめて審議半ばなのに、いきなり審議打ち切り・強行採決で、わずか3日間の臨時議会で「決定受け入れ」を決めてしまいました。
賛成は自民、公明、新風クラブ(無所属)の一部。反対は日本共産党、改革21(民主・社民)、県民党、新風クラブの一部。本会議では、改革21(民主)と県民党の議員が代表して反対討論を行い、日本共産党は討論ができませんでした。 この問題に対する日本共産党の態度を明らかにするため、中田晋介議員が用意した本会議討論の内容を紹介します。
日本共産党の本会議反対討論・予定原稿
17条決定を受け入れるという議案に反対する討論を行います。県民の立場から本議案に反対する理由が四つあります。 第一に、この決定では県民にもたらす負担とリスクがあまりにも大きいという事であります。たしかに県には公社を設置し、監督してきた責任があります。同時に、金融機関にも、公社の業務内容を審査して貸し付け、402億円という大きな利子を得てきた貸し付け責任があります。ですから当初の弁済計画提案の、県も金融機関も債権の51ないし52%というほぼ同じ率を債務免除して、協力して公社を再建するという案には賛成できると思っていました。
ところが、9月に修正された弁済計画案では、金融機関の残った債務100億円について県が損失補償する事になり、今度の決定では、債務免除後に残った債務は一括返済し、そのために必要な57億円を県が新規融資することになりました。 損失補償だ、一括返済だと、金融機関の言い分はすべてとおってきましたが、その分、負担をしいられるのは県で、被害をうけるのは県民です。調停協議では、県から金融機関の貸し付け責任について明らかにし、負担とリスクを分ち合うようつよく要請すべきであります。しかし、この決定では金融機関が得てきた利益と、それに基づく貸し付け責任への言及が全くなく、すべてのリスクが県民の負担になっている点は県民として容認できません。
第二に、県と公社の今後の経営体制に信頼が持てません。地裁の17条決定が出たあと、重要なスタートになる21日の住宅公社の理事会は、7人の理事のうち3人が欠席しています。しかも欠席者が、県を代表して公社の再建に責任を負うべき県の総務部長と住宅課長、諫早市の助役という無責任さに驚きます。しかも、その理事会では、一括弁済になって県から57億円の新規融資をうけることについて、初めて聞いたはずなのに「県民に多大な迷惑をかける、何としても返済しなければならない」という理事長からの提起もなければ、議論も一切あっていません。いまからこんな無責任さでは、県民のお金を新たに57億円もつぎ込むことはできません。
ここで57億円を新規融資して、もし半分でも回収不能になれば、今回の債務免除と合わせて県の負担は54億円にもなり、いまの債権全額をうしなうのに匹敵する県民の損害となります。それなら、債権の30%が回収できる民事再生や、
26%が回収できる破産のほうが かえって県民にとって被害が少ない。県民の被害を最小限にくい止めるために、そのような道も慎重に検討する必要があります。特定調停成立を急いで、なんでも金融機関のいいなりになる必要は、まったくありません。
第三に、これだけの事態を引き起こしながら、県の監督責任、公社幹部の経営責任がだれ一人として問われていません。知事は本会議で「調停が成立したら、2月議会にしめす」といっていますが、県民にこのような被害をもたらす調停を受け入れようというのなら、その時点で、あわせて責任の取り方も当然示されなければなりません。
第四に、なんでそんなに結論をいそぐのか、という問題です。これでは、県民に十分な情報も公開されず、意見も聞かないまま決まってしまいます。県の検討もたった一晩では十分に出来たはずがありません。肝心な事すら議論していない住宅供給公社理事会の内容はさきほど述べたとおりですが、県も似たようなものではありませんか。他の県では、こんなあわただしいやりかたはしておりません。北海道と千葉県の先例がありますが、それぞれ決定がでてから3カ月後あるいは1ヵ月後に議会に提案しています。それでも特定調停は成立しています。年末にあわただしく急ぐ必要はありません。
今回の決定は、県民に大きな被害をもたらす危険があります。いま県財政は危機的状況で、あと5年で赤字再建団体になりかねないというときに、県は最大限こうした負担を避ける責任があります。また、誰一人監督責任、経営責任を取らないまま、まともな検討もせずに「とにかく調停成立を」という知事のやりかたは、県民に大きな損害を押しつけるものであり、本議案に反対いたします。
何の責任もとらず、県民へ負担押しつけを強行
−県住宅供給公社の破綻処理問題−
2004年12月22日から27日まで臨時県議会が開かれ、県住宅供給公社の破綻処理問題が審議されました。その様子と日本共産党の見解を紹介します。