イラクへの自衛隊派兵をめぐる意見書をめぐって

  小泉内閣が計画するイラクへの自衛隊派兵について、日本共産党から「憲法違反の派兵で、平和を求める被爆県民を代表する県議会として反対する」という意見書を政府あてに提出する意見書案を提案しました。
  これに対して自民党から「自衛隊の派遣にあたっては慎重に判断を」という意見書案が提案され、公明、民主、社民、無所属の各会派が賛成し共同提案となりました。
  日本共産党は「自民党案は、自衛隊派兵を容認し前提としたうえ、米占領軍支援を人道復興支援といつわるもの」と反対しましたが、国会では自衛隊派遣に反対している民主・社民会派など他会派すべてが自民党案に賛同し、賛成多数で可決されました。

イラクへの自衛隊派遣に反対する意見書・日本共産党案
 
 イラク特別措置法にもとづく自衛隊派遣基本計画が九日閣議決定された。
  計画によると派遣規模は、陸上自衛隊600人、C130輸送機8機、輸送艦護衛艦4隻などである。復興支援活動とともに、安全確保支援活動として米占領軍の兵員輸送など後方支援にあたる計画である。これでは米占領軍の一部として行動することになり、ゲリラ攻撃やテロの対象となることは避けられず、さきに殺害された日本人外交官二人の悲劇をくりかえす危険性は極めて大きい。
  県内の自衛隊員および家族から「国を守るといわれてきた自衛隊がなぜ危険なイラクにいかなければならないのか」「生命の安全は保障できるのか」と大きな不安の声があがっている。国民も、どの世論調査でも自衛隊の派遣反対ないしは慎重にすべきという声が8割以上に達し、派遣賛成は少数である。
   イラクでは、米軍のサンチェス現地司令官が「イラク全土が戦闘状態」と言明しているように各地で攻撃が繰り返されている。特に、米占領軍と行動を共にするものを標的とする攻撃が急増している。これはフセイン元大統領の身柄拘束によっても変わるものではない。このような状況のイラクに自衛隊を派遣することは、必ず自衛隊への攻撃をまねき「支援活動は現に戦闘行為が行われておらず、かつそこで活動する期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域で実施する」というイラク特別措置法第2条の基本原則に違反することになる。
 今回はじめて無反動砲や対戦車弾などを携行しての派遣は、攻撃を受けたら武力で反撃することを前提としており、「武力の行使」を禁止している憲法9条にも、「対応措置の実施は武力の行使であってはなない」としているイラク特別措置法にも違反する事態がひきおこされる。
  よって平和を求める被爆県民を代表する県議会として、政府に対しイラクへの自衛隊派遣を中止し、イラク復興支援は国連を中心に非軍事的な形で行うよう強く要望する。  以上、地方自治法第99条の規定にもとづき意見書を提出する。     

自民党提案に公明・民主・社民・無所属会派が賛同し可決された「自衛隊のイラク派 遣に関する意見書」
 
 3月20日に始まった米英軍によるイラク攻撃によって、イラクのフセイン政権は崩壊に追い込まれた。4月9日に首都バグダットが陥落、14日にはイラク軍の最後の拠点であったティクリットが制圧され、5月1日にはブッシュ米大統領が戦闘集結宣言をした。しかし、その後も治安はいっこうに改善せず、イラク国民の反米感情は高まっており、いまだ米英軍等に対するゲリラ攻撃が続き、11月29日には2人の日本人外交官が殺害されるなど、実質的な戦争状態が続いている。
  また、12月14日にはフセイン元大統領が拘束されたとはいえ、イラク国内の緊迫した状況に変わりはない。 日本政府は、国際社会におけるわが国の責務に鑑み、イラクに対する人道・復興支援のためとして「イラク人道支援特別措置法」を制定し、12月9日にはそれに基づいて自衛隊を派遣する基本計画を策定した。基本計画を踏まえ、今後、自衛隊をイラクに派遣しようとしているが、これは、従来の国連平和維持活動(PKO)や災害援助活動の枠組みとは異なるものである。
  よって、自衛隊を派遣するにあたっては現地情勢を充分把握のうえ、その時期などについて、慎重に判断し、万全を期されるよう強く要望する。以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 
 平成15年12月19日            長崎県議会