中田県議の一般質問の詳細
 県当局の答弁も全文紹介
    2001年12月5日

1.被爆県から自衛隊参戦に反対する平和の声を
[質問・中田議員]
日本共産党の中田晋介でございます。党を代表して知事に質問いたします。
 第一に自衛隊の佐世保からの参戦問題であります。11月26日自衛隊の護衛艦「さわぎり」が佐世保港を出港し、インド洋に向かいました。すでに11月9日佐世保を出港している「きりさめ」「くらま」「はまな」の3隻と合流し、アフガニスタンに対する米軍の武力攻撃への支援をおこなうもので、合わせて900人が乗り組んでいます。
 これは、戦後56年ではじめて実際に戦争がおこなわれている戦場への派兵であります。自衛隊がおこなおうとしている攻撃中の艦船への燃料補給や兵員の輸送、武器の整備・修理などは、国際法上武力行使の一部とされており明白な戦闘行為であります。これが、戦争を放棄し武力行使を禁止している憲法に違反していることは明らかであります。
 攻撃開始以来米軍が投下したミサイルは3000発をこえ、空爆は住宅地、病院、学校にまでおよび、市民の死者は千人以上、避難民はすでに数万人にのぼり難民となっています。ユニセフ・アフガニスタン事務所は「戦争で食料支援ができなければ、この冬40万人のこどもたちが死亡する危険が迫っている」といっています。
 6千人の死者を出したニューヨークなどへのテロは凶悪であり絶対に許せませんが、それを理由に、こうして罪もないアフガニスタン国民に大きな被害を与え、苦しめる権利はだれにもありません。一刻も早くこの戦争を中止しテロ根絶は国連が中心になって法の裁きのもとに進める正しい道にたちかえるべきであります。
 本県は1990年「自由と平和の尊厳に関する長崎県宣言」をおこない被爆県としての平和の決意を世界に示しました。それには「子孫に美しく豊かな地球を引きつぐことは、今を生きる私たちに課せられた責務である。今日世界は不信と対決の時代から、対話と協調の時代へと転換しようとしている。ここに、私たちは全人類の自由と幸福ならびに世界の恒久平和をめざす」と掲げています。知事はこの宣言の立場で、佐世保からの自衛隊の憲法違反の戦争参加に反対し、戦争の中止を求める平和のこえをあげるべきではありませんか。お考えを質問いたします。

[答弁・金子知事]
 中田議員のご質問にお答えいたします。今回の自衛隊の派遣についてのおたずねでございますが、佐世保港などからの自衛隊の派遣は、米国で発生した同時多発テロ事件に関して、国際的なテロリズムの防止と根絶のための国際社会の取組みに寄与するため、わが国の支援協力の一環としておこなわれたものとされております。今回のテロ対策特別措置法にもとづく自衛隊の派遣は国会の承認がなされたものでありますが、国の外交あるいは防衛に関することであり、その意味合いといったことについて私が申し上げることは控えさせていただきたいと存じます。ただ派遣された自衛隊員やご家族のことを思う時、隊員の皆様が無事任務を果たされ元気な姿で帰還されることをせつに願うとともに、世界の平和を希求する立場から多くの人命が犠牲になることはできるかぎり避けるべきであると考えており、今回の事態が一日も早く解決されることをつよく願うものであります。


[質問・中田議員]
 佐世保からの自衛隊参戦問題について再質問いたします。知事は「自衛隊員が無事帰還するよう願っている。武力行使により、多くの人命が犠牲になる事態はできる限り避けるべきであると考えている。一刻も早く解決に向かうことを強く願っている」といわれますが、そうならないのが戦争じゃないんですか。罪もない多くのアフガニスタンの国民が死者を出し、逃げ惑っている被害はご承知のとおりであります。戦後はじめて戦場へ派遣される自衛隊員も命がけであります。これは実際にあった話ですが、今回佐世保から派遣された自衛隊員が、奥さんと二人の子どもさんを連れて大村の奥さんの実家に挨拶にいった。そしてその隊員は、「もし自分がかえってこれない時には再婚してくれ」と言い置いていったという話であります。このような戦争に対して、テロにも戦争にも反対する声が高くなっています。11月17日のテレビ朝日のニュースステーションの世論調査では自衛隊のインド洋派遣に「支持しない」が53%、「支持する」の38%を大きくうわまわっています。朝日新聞の調査でも「派遣反対」が48%で、「賛成」44%をうわまわっています。
 私たちは、テロ犯罪者は戦争でなく国連が中心になって国際法にもとづいて処罰すべきだと主張しています、その実例があります。1988年スコットランド上空でおこったパンアメリカン機爆破事件があります。この時乗客乗員270名が死亡しましたが、アメリカとイギリス当局は犯人をリビアの国家情報機関員と特定して、リビアに対する犯人引き渡しの国連決議がくりかえされ、経済制裁がおこなわれる中で、リビアは犯人を引き渡し、第三国のオランダで裁判が行われ、今年1月犯人に終身刑の判決がでております。控訴されたため裁判続行中でありますが、こうした道こそテロの実態を明らかにし、国際的にテロを根絶してゆく有効な道であります。知事が本当に人命の犠牲を避けるべきだと考え、県平和宣言の恒久平和をめざすのであれば、いまこそ「戦争やめよ」という声を長崎からこそあげるべきではありませんか。再度質問いたします。

[答弁・金子知事]
 さきほどもお答えしましたように、外交、防衛につきましては国の専管事項であるのでコメントは差し控えさしていただきたいと思います。


[質問・中田議員]まことに残念であります。知事は県民の安全・平和のすべてに責任を負う立場で、場合によっては国の外交防衛の施策で損なわれるときには、県民の利益の立場からものをいう、そういう立場を取るべきであります。このような答弁の繰り返しというのはまことに不十分で残念であります。

2.福祉医療の現物給付と自己負担の引き下げ、介護保険料・利用料の減免、国保資格証明書発行の中止を

[質問・中田議員] 
 第二に福祉・医療問題について、まず、乳幼児・障害者・母子家庭の医療費を助成する福祉医療を現物給付とし、自己負担を引き下げる改善について質問いたします。この点については、七月以来、県と市町村で検討会が持たれてきましたが、その結果はどうなったかおたずねいたします。
 乳幼児医療への助成を、病院の窓口払いのいらない現物給付にするよう求める請願が9月の長崎市議会で全会一致で採択され、9月19日、市議会代表から県議会議長と福祉保健部長に要望がなされました。その要望書によりますと、「少子化対策の推進はいまや地方行政の重要な柱となっており、全国過半数の30都道府県では現物給付方式が導入され子供を生み育てる環境づくりが推進されている。しかしながら現在の医療機関の窓口でいったん支払い、その証明をもって申請して還付を受ける償還払い方式は、乳幼児福祉医療費助成制度の本来の趣旨が十分に生かされたものとはなっておらず、より受給者にとって利用しやすい方式である現物給付方式に変える必要がある」と県に改善を求めています。知事、少子化対策の趣旨を十分にいかすため現物給付を導入すべきではありませんか。
 本県の福祉医療の自己負担「通院・入院一日800円」というのは日本一高い自己負担であります。福祉団体、障害者団体、医療関係者から強い引き下げの要望がでていますが、来年4月からの引き下げができるかどうか、おたずねいたします。
 つぎに、10月から介護保険料が老人世帯で二倍に引き上げられたいへんな状況がうまれています。10月29日、県社会保障推進協議会が「介護保険 110番」という電話相談をおこないましたが相談の7割は高くなった介護保険料についての相談でした。
 長崎市の66歳の男性からは「福江市に94歳の母と63歳の妹が住んでいる。母の年金月5万円でくらしているが介護保険料が払えない。市役所に何とか保険料が減額にならないか相談にいったが『事情は分かるが国の制度なのでなんともならない』といわれた。母に生活保護をとるようすすめたが『国の世話にならずになんとかやっていく』といっている。何か方法はないだろうか。こういうものがいることを国へも伝えて改善を要望してほしい」と訴えがあり、佐世保市の57歳の女性は「夫と二人暮らし84,000円の年金と家賃収入5万円の月13万4千円のくらしに介護保険料が4800円天引きされて生活できない」と本当に深刻な声が上がっています。非課税の老人所帯からは介護保険料・利用料をとらない減免制度が強く求められていますが、知事のお考えを質問いたします。
 つぎに国民健康保険で滞納者から保険証をとりあげる資格証明書の発行が県下で急増しています。県の調査で6月1日に231件だったのが11月1日には1892件と7・7倍であります。資格証明書では病気になって病院にかかるとき診療費の全額を窓口で払わなければなりません。そのお金がなければ診療を受けることができなくなる、まさに県民の命が保障されない事態が広がっています。国保税の滞納があればどうやってそれを払うか。真に払えなければどうやって必要な医療を保障するか。よく話し合いをしたうえでなければ資格証明書は発行すべきではありません。そうしないと、国民の健康な生活を保障した憲法の精神と国民皆保険の理念が損なわれます。県の対応を求めて質問いたします。

[答弁・金子知事]
 つぎは福祉医療の問題でございますが、これにつきましては七月に県と市町村で福祉医療制度検討協議会を設置いたしまして全国の実施状況などをふまえながら、自己負担額、給付方法等の制度全体のありかたについて検討協議をすすめております。現在までに4回の会議を開催しておりますが、県民福祉の向上の観点からさらに検討協議をすすめ、できるだけ早期に結論を出したいと存じます。

[答弁・塚原福祉保健部長]
 まず介護保険料・利用料の減免制度についての市町村への指導についてのご質問でありますが、介護保険料につきましては負担能力に応じた5段階の設定がなされております。市町村民税非課税などの低所得者に対しましては、基準額の50%あるいは25%といった軽減がなされているところでございます。また災害などの特別な場合には市町村の条例によりまして減免ができるなど配慮がなされているところであります。全国的に独自の減免をする市町村が増加をし、県内でも3市町が実施をしておりますが、低所得者の保険料減免については国の方では、保険料の全額免除、一律免除、免除分の一般財源による補填、これは適当ではないという3原則をしめしております。県下の3市町はすべてこの厚生省の3原則にのっとった形で減免の制度を条例でやっているというところでございます。
 県としましては、市町村がこの3原則を守った減免を行うことは可能ではなかろうかと考えております。利用料につきましては、九州地方知事会議等におきまして利用者の負担軽減につきまして引き続き要望しているところでございます。今後とも市町村と十分連携をはかりながら、みなで支え合う介護保険制度がより適切に運営できるよう引き続き努力をしてまいりたいと存じます。
 つぎに、国民健康保険証の返還と資格証明書の発行ということは、実効的な滞納者対策ということで、昨年4月から法の一部改正により義務化されたものでございます。しかしながら、老人保険や原爆医療などの受給者は対象から除外をされております。また災害・病気など特別の理由がある場合には、保険証の返納を求めないという取り扱いになっております。
 制度の運用にあたりましては機械的・画一的におこなうのではなく、特別の事情に該当するかどうか被保険者の個々の生活実態を十分把握した上で、適切に判断するよう市町村を指導して参ります。なお保険税の減免につきましては、市町村の条例に基づき市町村長の判断でおこなわれるものでございますから、県としては適切な助言を行うということで対応してまいります。


[質問・中田議員]
 乳幼児・障害者・母子家庭などへの医療費助成について再質問いたします。今検討中で、まもなく結論が出るだろうということですが、知事はどうお考えなのでしょうか。長崎市議会の要請は、現在県がおこなっている「償還払いの助成方式では、乳幼児福祉医療費助成制度の本来の趣旨が生かされたものとなっていない。
 受給者にとって、より利用しやすい方式である現物給付方式に変える必要がある」といっています。知事はそう思われませんか。すでに過半数の30都道府県で現物給付が実施されており、ちかくは大分県が現物給付にふみきりました。知事がその方が県民に取って利用しやすく本来の趣旨が生かされると考えるなら、その方向で市町村に提案し、議論をリードするべきではありませんか。

[答弁・塚原福祉保健部長]
 補助の給付方法には償還払いと現物給付とあるわけですけれども、79の市町村といろいろご意見があると思いますので、協議会の中で議論さしていただいているという状況でございます。


[質問・中田議員]
 福祉医療の自己負担についても、日本一高い県民負担になっていますが、そのままにして知事は任期を終わられるつもりでしょうか。任期中に引き上げたものを改善するつもりがあるのなら任期中に改善すべきではありませんか。昨年末、これをあげる時には、まず県が引きあげるように県の補助要綱を変えて、それにしたがって市町村が条例改正を行って県民負担をあげたんですから、今度は下げる時にも県から改める方向でリードを取るべきではありませんか。知事は本議会で改善すると約束していますがどうなんでしょうか。

[答弁・塚原福祉保健部長]
 たしかにご指摘のように県の要綱を変えて市町村が条例を変えてあげたのは事実でございます。それも、この自己負担は老人医療の自己負担にスライドしてあげていくという市町村との合意がありまして、国が上げれば、県も要綱を上げる、それにならう形で市町村が条例をあげていただく。老人医療に準拠していくという考え方の合意があったからそういう形になってきています。今の議論は、そうした老人医療に準拠していくことが適当なのかどうなのか、全く別のいきかたを含めまして検討していますので、そこはリーダーシップも必要かも知れませんが、市町村と対等な協議のなかで結論が出てくると思っておりますのでご理解をお願いいたします。

[答弁・金子知事]
 
その点については、昨年から話があって引き上げましたら、議員ご指摘のような状況になりまして、大変私も早く気付いてちゃんとした指導を事務部局にしておけばよかったなあと反省をしております。できるだけ速やかにそいった経過事情もあるんで、市町村の皆さん方にもご協力いただきたいとお願いをしております。これも一方的にはいきませんのでできるだけ早く結論が出るように今後とも努力をしていきたいと思いますのでよろしくご理解をお願いいたします。


[質問・中田議員]
  現物給付も自己負担の引き下げも、答弁されているように、県民福祉が向上するように、すなわちいずれも実現するように、いま知事も市町村にお願いしているということでありますから、ぜひ来年四月の新年度から実施されますよう強く求めておきます。
 介護保険については、全国310の市町村が独自の減免制度をつくって、払うにも払えないお年寄りを救済しております。全国市町村の一割であります。それだけ独自の減免がおこなわれるということは、やはり国の制度がお年寄りにとって酷だからであります。長崎県は残念ながら、長崎市、三和町、佐々町の一市二町だけで、大変遅れています。現在いくつかの広域圏組合で減免が必要だと検討が始まっています。県が一緒になって推進されるよう強く求めておきます。
 国保の資格証明問題は、国会でも10月25日参議院厚生労働委員会で、日本共産党の質問に、厚生労働省は「よくよく事前に十分な納付相談などもおこないまして適用するというのが妥当だろう」と答えています。どうやってはらうか。払えなければどうやって必要な医療を保障するか、よく話し合い十分な手当てを前提とするよう、市町村につよく要請するよう求めておきます。

3.諫早湾干拓事業について
[質問・中田議員]
 第三に、諫早湾干拓事業について質問いたします。有明海の異変はつづき、今年も諫早湾のタイラギが全滅し、毎年10億円の水揚げがあったタイラギ漁が9年連続の休漁になり、加えて佐賀県海域のタイラギ漁も3年連続の休漁になる被害が広がりました。養殖ノリについても昨年より早く色落ち被害が広がっています。そうした中で10月30日農水省の規模縮小案が示されました。「環境への配慮」をうたい、造成農地は半分にするとはいうものの、水門は開けない、干潟は再生しないというこの案で有明海漁場の回復がはかれるのか。いま、するどく問われています。いまこそ、有明海の再生と防災を両立させる道を真剣に考え確立する責任が国にも、県にもあると考えます。
 その点で、県が今年3月策定した「長崎県水産業振興基本計画」に「漁場環境の積極的な保全」対策として「干潟の造成」ということをはじめて掲げたのは非常に重要であります。県議会農林水産委員会も視察にいきましたが、漁場保全に干潟が果たす役割について早くから研究してきた愛知県では、国土交通省の補助事業として、干潟の造成事業が進められていました。
 これを逆に考えれば、日本一豊かだった諫早湾の2900fの干潟を干拓でつぶしたことが、今の有明海漁場悪化の大きな原因であることは明らかであります。県が「漁場環境の保全」対策として「干潟の造成」を掲げるのであれば、まず最初に、有明海漁場回復のための諫早湾干潟の再生を考えるべきだと思いますが、知事のお考えを質問いたします。この点、干潟再生の観点をまったく欠いた農水省見直し案では、有明海漁場の再生ははかれないと考えますがどうでしょうか。  
 次に、昨年おこなわれた農業センサスの調査で、県下の耕作されていない遊休農地は5981fあり、規模縮小案で造成される700fの農地の8・5倍にのぼっています。干拓で農地を造らなくても農地は耕作されずにあまっています。こうした遊休農地の活用をはかり、干拓による農地造成という税金のムダづかいをやめるべきですが、どうですか。
 この事業は土地改良法にもとづく事業で、同法第八条および、施行令第二条は事業が成り立つ要件として「事業のすべての効用がそのすべての費用をつぐなうこと」としています。この費用対効果は農水省の計算で、事業着工時に1.03、現在は1.01とかろうじて効果が費用を上回っていましたが、今度、造成農地が半分になることによって、当然、農水省の算式のうち作物生産効果と国土造成効果が半分になり、費用対効果は0・82と効果が費用より小さくなり法律の求める要件を失います。そんな法律違反を承知で国が事業をすすめることは許されませんし県も中止の立場で対応すべきと思いますが、知事のお考えをおたずねいたします。

[答弁・金子知事]
 諫早湾干拓の問題についてでございますが、諫早湾干拓事業の推進により潮受け堤防が完成し、高潮洪水に対する防災や、排水不良の改善など総合的な効果が発揮されているところでございます。仮に排水門を開門したとしても干潟が再生されるかどうかはさだかではありません。むしろすでに発揮されている防災効果が損なわれるばかりではなく、せまい排水門からの潮の出入りによって湾内漁場への悪影響が生じるものと予測されます。
 また、既存堤防をかさあげし、ポンプ増設をおこなうとなればあらたに莫大な投資と運転経費が必要になります。したがいまして本干拓地に干潟を再生することは現実的に困難であると考えております。いっぽう有明海は近年漁場環境が悪化し漁家経営はきびしい状況にあることから、本県はじめ佐賀、福岡、熊本の四県共同によるに有明海再生に向けた取組みが必要と考えております。県といたしましては有明海再生計画を内容とする特別措置法の制定をはじめ各種対策の早期実施を国に要望しているところであります。

[答弁・真崎農林部長]
 遊休農地を活用すれば諫早湾干拓事業で農地を造成する必要はないのではないかとのおたずねですが、農産物の輸入自由化が進む今日の農業情勢のもとでは、大型機械の導入が可能な平坦でまとまった農地において、生産性・収益性の高い農業経営を推進していく必要があります。諫早湾干拓事業により造成される農地は平坦で区画が整い、効率的な農業が展開できる生産基盤であります。いっぽう本県における耕作放棄地の多くは急傾斜で形状が悪く、農道や耕作道のない棚田や段々畑など比較的生産条件のきびしい地域に多いのが実態であります。このような耕作放棄地を利用することは、機械化が困難であったり、生産効率が劣ることから、干拓地のように生産性の高い営農を展開することは難しいものと考えております。
 次に、費用対効果で法律の要件を失った干拓事業は中止せよとのおたずねでございますが、諫早湾干拓事業の見直し案の費用対効果につきましては国から具体的な検討結果は聞いておりません。見直し案は事業主体である国が提示されたものでありますから費用対効果についてはいずれ国から説明がなされるものと考えております。


[質問・中田議員]
 知事は「水門を開けて干潟が再生するかどうかわからない」と答弁されましたが、これは再生するようにすれば再生するんです。私たち県議会農林水産委員会は先日愛知県の水産試験場を視察しました。ここは干潟の研究では日本で一番すすんでいますけれども、ここでは干潟をつくっています。
 海底から砂を持ってきて全く生物のいない状況で、干満の満ち引きそのままに潮をいれると三か月で生物が住み着き、六か月で見るべき浄化効果を発揮することが明らかにされているんです。干潟がこうした大きな浄化能力を持ち、漁場回復に力を発揮することは証明済みです。だからこそ知事は今年三月のこの「長崎県水産業振興基本計画」に、漁場の保全と回復ということで、「干潟の造成」ということを入れたんじゃないんですか。
 干潟を造成すれば周辺漁場が改善される、愛知県ではそういう国庫補助事業がある。効果ははっきりしています。 だから2900fの諫早湾の干潟が干拓で失われたことがいまの有明海漁場の悪化を招いたことも明らかであります。知事が一方では水産振興計画で漁場の回復のため干潟の造成に取り組むといいながら一方では水門の開放に反対して干潟の再生の道を閉ざすというのは矛盾してはいませんか。

[答弁・金子知事]
 それとこれは別でしてね。私はいろんな干潟の話を聞きまして干潟というのは大事だと思いまして、それはそれで考えてやっていこうということで、それを諫早湾に関係してこのようにいわれると新しい政策ちゅうのはうちだしにくいなあと反省をしてましてね。諫早湾については方法論がいろいろあるでしょう。見解はいろいろあるんです。議員は議員の見解がいちばん正しいと思っておられるでしょうし、私たちは私たちの見解が正しいと思っていてなかなかかみ合わないところなんです。
 ご理解をお願いいたします。


[質問・中田議員]
 知事、それはそれこれはこれということはないと思います。干潟の役割が周辺漁場の回復に有効だと県が掲げるんなら、諫早湾の日本一豊かだった2900fの干潟をつぶしたことが影響を及ぼしている、とだれが考えたってそうなるじゃありませんか。それとこれとは別だ。別のところに干潟を造るというんなら、何よりもまず諫早湾の干潟を再生するのが、この果てしのない有明海の漁場悪化を回復する道だと、別に私じゃなくても普通に考えれば当たり前の話じゃありませんか。

[答弁・金子知事]
 いま干潟の研究開発をしてるんですからね。どうなるか分からんが今後やってみようととっかかったところなんです。


[質問・中田議員]
 この県の水産振興計画が掲げたのは「研究」の段階じゃないんですね。ここにはっきりと「沿岸漁場環境の保全と創造のために、藻場・干潟を造成する」と掲げてあるんです。この点県政が一貫性を持ったものとして、この振興計画にもとづいて、いま最も急がなければならない諫早湾から有明海の漁場回復のために諫早湾の干潟の再生をはかるよう要請しておきます。 
 それから、農水省の見直し案の費用対効果が法律が求める要件を失うといいましたところ、農林部長から、それは国が検討することだと県としては考えていないような答弁でしたが、これまで県は国と一緒になってこの事業を進めてきました。最終的には4百数十億円の県の資金を投入する事業であります。その事業が法律がもとめる要件を失ったのですから、国と一緒に干拓事業はただちに中止をするという立場で、これ以上の税金のむだづかいをやめるよう強く求めておきます。

4.市町村合併について
[質問・中田議員]
 第四に市町村合併について質問します。今年6月、総務省が、全国各県が計画している通り市町村合併が進めば、現在3200の市町村が1140に減り、全市町村の年間歳出総額54兆円のうち4兆円を減らすことができる。その削減効果が最も大きいのは、職員や議員、首長の数を削減することによる人件費の削減分だという試算を発表しました。市町村合併で地方交付税が減り、予算も職員数も減る。議会も議員もいなくなるなかで住民サービスは低下せざるを得ません。
 全国町村会は本年5月「市町村合併のあり方に関する意見」を発表し、地方財源について「地方分権の観点から地方が行う事務事業に見合う必要かつ十分な財源措置を講じるべきで、地方交付税については住民に法令で定められたサービスを保障するものとして適正な水準の維持確保は不可欠である」とし、11月28日の全国町村長大会では「市町村合併の強制を意図した地方交付税算定の見直しは絶対におこなわないこと」と緊急決議がなされています。県はこうした市町村と力を合わせて、政府の地方交付税の削減をねらう市町村合併の押しつけに反対すべきですがどうですか。
 つぎに「合併で市役所、役場が遠くなり不便になる」という県民の強い心配について、県は「支所を置くから大丈夫だ」と宣伝していますが、支所では簡単な手続きはできても少し大事な手続きは本庁まで行かなければできません。なによりも支所には予算を使う権限が全くなく、住民要求の陳情はどんな簡単なものでも本庁まで行かなければできません。
 しかもその支所が地方行革の対象で統合縮小が進められています。長崎市では行政改革大綱に「支所機能の見直しおよび地区事務所の廃止」が掲げられ、市内11か所ある支所の職員数は1992年の93人が、いま65人と30%も減らされ、今後更に減らしていく計画であります。これでは、支所で行政サービスを強めるといってもまったく保障はできません。
 また、議会がなくなり議員が大幅に減ることについて「旧市町村ごとに地域審議会を置いて対応する」としていますが、地域審議会は市町村長に意見が言えるだけで、議案審査の権限も行政チェックの機能もなくとうてい議会に変わる役割は果たせません。 こうしたデメリットをふせたままの県の合併推進を中止するよう求めて、知事の見解をおたずねいたします。

[答弁・金子知事]
 市町村合併の推進につきましては地方分権などの観点から、県としても積極的な情報の提供、助言につとめるとともに、合併協議会に対する財政支援や人的支援をおこなっております。本県では昨年九月に県と町村会が共同して市町村合併連絡協議会を設置し、情報交換を行いながら自主的な合併を推進しております。市町村合併の主役はあくまでも市町村だと認識しており、強制ということはあってはならないし、またできないものと考えております。交付税制度との関係でありますが、現在総務省において地方交付税の見直しが検討されており具体的には、事業費補正、段階補正、留保財源率の三項目があげられております。これは現在の地方交付税制度が地方の合理化、効率化への意欲を阻害しているとの骨太方針をふまえての対応であり、市町村決算の実態にそくしての見直しであると聞いております。まだ詳細は明らかにされておりません。交付税特別会計は42兆円もの借入れを抱えており、いずれにしろ見直しは避けて通れないものと認識しておりますが、地方交付税制度のもつ財政調整機能、財源保障機能を堅持されるよう強く要望しているところであります。


[答弁・溝添地域振興部長]
 市町村合併について、支所では行政サービスが低下する、あるいは地域審議会は議会のかわりはできないというおたずねでございます。この点につきましては、住民の方々も不安に感じられるところであり、先般から県の合併推進要綱、パンフレット等で対応策を含めお知らせをしているところであります。
 いうまでもなく市町村合併の目的はムダのない効率的な行政を行う、高い企画立案能力をもった地方分権の時代にふさわしい市町村をつくり、これまでより質の高い行政サービスを提供しようとするものであります。先月市町村の窓口事務を郵便局で取り扱う郵政官署事務取扱法が成立したところでありますが、これからはより住民に身近な郵便局で各種の申請がおこなわれる、あるいはITの活用により自宅などから各種申請がおこなえる電子自治体の時代も訪れようとしています。このように市町村役場の機能は今後大きく変わっていくものと考えられます。
 また合併特例法では、合併後一定期間議員の在任、定数に関する特例、合併後の町づくりや予算などについて市町村の付属機関として地域審議会を旧市町村ごとに設置して住民の不安に対処するためのさまざまな特例措置が講じられることとなっております。 議員ご指摘の事項につきましてはいずれも合併協議会の重要な協議事項でございます。特に支所の組織、機構あるいは権限などはそれぞれの地域の実情に応じまして住民サービスの低下につながらないよう地域住民の方々も参画していただく法定合併協議会において話し合っていただくことが大事なことであると考えているところであります。


[質問・中田議員]
 この問題で問われているいちばんの問題は、国が地方に対する支出を減らそうとする、特に地方交付税を削ろうとする、だからどこの町長さんも、本当は合併は避けたいんだけれども、そうやってこられては、ということで、合併を考えざるを得ないようにする。ひとつの強制なんです。
 だから全国町村長会はそういう強制はやめよ。地方交付税の悪い方向への見直しはしないようにと緊急決議をしたんです。県もそういった市町村の立場を尊重し守るべきではありませんか。知事の答弁はそういう国のやり方を全部容認してだから合併しなきゃいかん、というまさに国の合併押しつけと同じ立場をとられましたが、これは改めてもらわなければなりませんがどうでしょうか。

[答弁・金子知事]
 決して私は押しつけてはいません。そういう前提に有り得るということを先を見越して、行政というのはやっていかなきゃいかんと申し上げているのでございます



5、サービス残業の根絶について
[質問・中田議員]
 雇用対策として、日本共産党は「法律違反のサービス残業の根絶で雇用の拡大を。これをなくせば全国で90万人の雇用が生まれる」と提案しています。6月県議会でわが党の西村議員から、4月に出された厚生労働省ならびに総務省の通達を、まず県から実行して県庁からサービス残業をなくし、県下の民間企業に広げようと提案し取組みを求めました。ところがその後、県職員組合がおこなった調査が11月5日付けの組合機関紙に発表されましたが、依然として「サービス残業がある」と答えた人が51%と過半数にのぼっています。
 これでは、国と一緒に県が県下のサービス残業をなくす取組みを先頭に立って進めることはできません。どういう具体的な根絶策をとっているか質問いたします。

[答弁・古川総務部長]
 いわゆるサービス残業の根絶に対して県がどのように具体的な取組みをおこなっているか、というおたずねでございます。職員の時間外勤務につきましては事前命令の徹底をはじめ適正に管理をするようつとめているところでございます。ご指摘がありました職員組合のアンケート調査の結果につきましては私も承知をいたしておりますが、サービス残業というもののとらえかたにも様々あるのではないかと思っております。私どもといたしましてはあくまでも所属長により事前命令、事後確認された時間外勤務に関してはその実績に応じて手当てが支給されていると考えております。すくなくとも仕事をしていただく以上はそれに対する賃金はもちろん支払うべきでございまして、きちんと実施されるよう主管課長会議などをつうじて周知徹底を図ったところでございます。具体的には事務事業をこの際もういっぺん洗い直すことや、事前命令を徹底すること、ノー残業デーの拡大、午後7時の退庁アナウンスなどおこなっていますが、今後議員のご指摘もふまえまして職員の労働時間の適正な管理に努めて参りたいと考えております。


[中田議員]
 これまでの知事の答弁を受け、金子県政一期目をふりかえって、最後に一言申し上げます。
 知事は就任ご、すぐ佐世保米軍基地強化のために県有地7900平方米を提供し、その後も被爆地長崎港への米艦船入港や西海町へのLCAC基地建設を容認して、被爆県長崎の平和の願いに背を向けてきました。
 諫早湾干拓は、有明海の漁場環境悪化の原因としてこれだけ明らかになっているのに、あえて無視して「事業の計画通りの推進」を掲げ、市町村合併では政府の方針どおり全国にさきがけて推進しています。
 大型開発、大企業優遇では諫早湾干拓に今年も31億円注ぎ込み、ソニーの諫早工場建設への補助金が15億円、長崎市大波止の夢彩都に無利子融資25億円、長崎サンセットマリーナに貸付と施設買収支援で9億7500万円と注ぎ込みながら、県民の暮らしの面では、今年4月から乳幼児、障害者への福祉医療の自己負担を日本一高くし、お年寄りへの敬老祝い金は、今年4月の改悪でもらえる人はわずか7400人予算で5800万円に減り、一番多かった時期の6万人2億5千万円から実に「人数で8分の1、予算で4分の1」に削減してしまいました。
 このため、県民の暮らしを直接ささえる生活福祉費、環境保健費、教育費の合計が予算の中で占める割合は、一番多かった久保県政の1975年当時の53%から、高田県政一期目の43%、そして金子県政一期目の今33%とちょうど10%づつ落ち込み、暮らしに最も冷たい予算になっています。
 平和の面でも、環境、暮らしの面でも、県民の利益を守れない県政となっており早急な転換が求められています。来年の知事選では真に県民が主人公の県政実現のため全力を挙げる決意を表明して、私の質問を終わります。