市町村合併についての質疑                                2000年7月7日 県議会総務委員会
          質問〜中田晋介県議   答弁〜村下晃市町村合併推進室長

【質問 中田県議】 市町村合併については、住民が受けるいい面も悪い面も、正確な情報を県が提供して県民の自主的な判断ができるようにしていただきたいと求めます。
 本会議でも、大きな特例債があると強調されていますが、結局、これは起債つまり借金であります。それで合併に必要な施設やソフトの整備もしなければなりませんし、一方、地方交付税は合併前の額が保証されるのは十年間で、それから減りはじめて、十五年たつと一つの自治体分に減ってしまいます。
 そこで、私が質問したいのは、もう一つ住民への影響が心配される点で、これは県が出した「二十一世紀に向けてのまち作り〜市町村合併を考える」というPRパンフでも「合併して困ることはないの」として「行政区域が広くなり、行政サービスが低下したり、住民の意見が行政に反映されにくくなることはないですか」という問いを立てて、その答えが「現在の役場を支所として活用するから、本所以外でも窓口サービスはこれまでと同じように受けることが可能となります」と回答しているんですが、私はこれは正しくない宣伝だと思うんです。
 長崎市の例で、合併した三重地区などに支所がありますけれども、その支所の業務がどうなっているか実例を調べてみました。 支所でできるのは、出生届、死亡届、婚姻届、離婚届、それから住民票、戸籍謄本、印鑑証明の発行、小中学校の転入学の手続きなどという簡単な業務に限られています。市役所の本所までいかなければならないのは、介護保険の申請、老人ホームの入所、障害者手帳や被爆者手帳の申請・交付、生活保護や児童手当の手続き、建築確認、水道の給水申し込みなどです。こういうものはみんな支所ではできず、本所までいかなければできません。もし、対馬がひとつ、島原半島がひとつということにでもなれば、市役所や役場の本所に車でいっても半日、バスでいけば一日がかりという事態になりはしないか。いくら支所をおいて通信手段が進んだからといっても何でもできることにはならない点をハッキリさせておく必要があります。
 それからもう一つ、このPRパンフでは「行政区域が広くなって、住民の意見が行政に反映されにくくなることはないですか」ということについては、答えとして「住民相談や町政・市政モニターで反映できる」と答えていますが、合併すると肝心の地方議員の数が激減いたします。このことについては、このパンフでも、今日、説明された県の要綱案でも、全くふれられておりません。島原半島の一市十六町が一つに合併すると、現在251人の地方議員が34人の28%に減ってしまいます。対馬六町がひとつになりますと94人の町会議員が26人の28%に減ります。モデル策定委員会がいいます十三区割り案で試算すると、県下全体の地方議員は、1326人から402人、ちょうど30%に減ります。これでは行政に住民の意見の反映をになう議員が身の回りにいなくなりますし、なによりも議会によって行政をチェックする力が非常に減ることは明らかです。
 こういったデメリットの面についても、やはりきちんと示すべきだと思いますが、この点どうですか。

【答弁 村下晃市町村合併推進室長】デメリットについても、今回の推進要綱の中でもいくらか実例をあげてお示しをしております。ただ、市町村合併というのが非常に小規模な市町村に、ぜひ検討していただきたいという立場から、そのデメリットをいかに解消していくか、そのへんを是非考えていただきたいということでございます。
 まず議員がおっしゃいました支所と本所の機能が違う、支所で代替はできないということでございますが、今回のモデル策定委員会の報告書にもございましたが、これからは単なる支所ではなくて、相当の権限をもった「地域行政センター」、つまり地域の住民と一緒になってその地域のまちづくりを考える、あるいは特例法でいう「地域審議会」を設置するなど、そういうシステムをこれから作り上げて、一定、合併後のそういう住民の声を引き上げていくというのも一つの方法かと思います。そのため特例法でも「地域審議会」の制度というのができております。
 そういうことで、必ずしも広いのですべてがだめになるとか、合併すればすべてだめになるということではなくて、合併によって地域住民の意向を十分に反映できる方策を検討していけば、その辺は必ずしもデメリットにはならないんじゃないかというふうに思います。ただ、そういう懸念とか不安というのが、いろんな声もたくさんききますのでそういうものにたいして、どういう方法が一番いいのかというのは、一緒になって検討していきたいというふうに考えております。

【質問 中田県議】 私は支所の問題と議員が減る問題をあげたんですが、支所については、「地域行政センター」などをつくるといいますが、これも結局、地方交付税が減っていく、その中で基準財政需要額も減っていく、そして、支所の職員も全体として一つの自治体分に減っていくわけですから、そんなに支所でなんの手続きでも受け付けるなどということは現実的にできはしないと思います。現実に長崎市の例でみても、周辺にいけばいくほど支所でできる手続きは少なくなっています。このPRパンフや要綱案のように、支所であらゆる手続きができるかのような印象を与える宣伝は改めてもらいたい。
 それから合併すると議員の数が大幅に減って住民の声が届きにくくなり、行政をチェックする議会の力も減ります。この点については、パンフや要綱案でこれだけいろいろくわしく書きながら、一言も触れていないというのは、私はこれはフェアでないと思います。合併すると議員の数がこれだけに減ります。特例で二倍に増やしても一期四年間だけですから、結局次の選挙では先程いったように今の三割以下に減ってしまう。こういう大事な点はちゃんと要綱案にも書いて、正確な情報を県民にも提供すべきだと強く求めます。

【答弁 村下晃合併推進室長】議員の数が減るということは、合併すれば当然でてくるわけでございます。それをカバーするために合併特例法では「地域審議会」というものをつくって地域住民の声を生かしたまちづくりを進めるという新しい制度もできております。単に議員の数が減ったから地域住民の声がまちづくりに生かされないということにはならないと考えております。

【質問 中田県議】しかし、「地域審議会」をつくるといっても、それは任意の協議会であって、議案を審議するわけでもない、一般質問をするわけでもありません。住民の声を反映し、行政を定期的にチェックする議会にかわれません。そんな役割を担う議員が地域の身の回りからいなくなるということは、住民への影響として明らかにすべきではありませんか。

【答弁 村下晃合併推進室長】 合併してひとつの人口規模になれば、法定の議員数は地方自治法で決まっているわけですから、合併して議員数がへっても、これまである同じ人口規模の自治体とおなじになるというふうに考えてもいいんじゃなかろうかと考えております。

【質問 中田県議】 しかし、今までこの地域にこれだけの議員がいて議会があったのが合併でこれだけ減っていなくなるという変化をハッキリ書いて、県民にも知らせるべきだ。要綱にも書くべきだと求めておきます。