「しんぶん赤旗」2015/7/26 | |
土地の強制収用ノー 自然守れ 地権者支援の輪 長崎県と佐世保市が川棚(かわたな)町・石木(いしき)川に建設を計画している石木ダムをめぐり、県収用委員会は、地権者に土地の明け渡しを求める裁決を出し、強制収用に向けた手続きを進めています。約50年にわたって反対を続けている地権者13世帯約60人は「ふるさとの豊かな自然を守れ」と呼びかけています。(長崎県・村ア利幸) 「長崎県は生活と人生の破壊をやめよ!」のプラカードを持ち、ハッピとモンペ姿で顔を布やタオルで覆っての無言の抗議が続きます。ダム建設に向けた付け替え道路の工事現場の正面ゲート前などで20〜30人が風雨の日も炎天下の日も座り込みを続けています。 必要性ないのに犠牲はまっぴら 現場はフェンスの一部はすでに取り外されており、重機が入るばかりになっています。 中村法道知事は「地権者の理解を得ながらすすめていく」としながら、6月12日午前5時に県職員や業者による抜き打ちで付け替え道路工事に着手。 同時に県土木部河川課は6月24日に県収用委員会が地権者4世帯の土地約5500平方bを明け渡すよう求める裁決を出したことを明らかにしました(明け渡し期限は、10月30日まで)。さらに県は8日、地権者13世帯が住む家屋などを含む土地、約12万平方bの裁決申請の手続きをしました。 地権者の石丸勇さん(66)は「専門家も必要のないダムと言っている。必要のないダムのために犠牲になるのはまっぴらごめんです。嫌だと言っているのに無理やり土地や家屋を奪う県のやり方は、強盗と同じこと。徹底的に反対していく」と訴えます。 「治水・利水」を掲げるダムですが、戦後起こった洪水は河川改修で防ぐことができ、給水についても佐世保市が人口減となっていることから過大な水需要予測が指摘されています。 会場埋め尽くす350人もの参加が 日本共産党の山下千秋佐世保市議は「『財政が苦しい、県民の要求に応える財源がない』と言いながら、長崎県は185億円、佐世保市は353億円もの巨額な税金を投入しようとしている」と批判します。 反対住民を支えようと運動の輪が広がっています。「石木ダム問題の真実を考える」をテーマに佐世保市で開かれた4日の集会(同実行委員会主催)には、会場を埋め尽くす約350人もの参加がありました。 強制収用に向けた手続きに、石木ダム対策弁護団は法的措置を取ることを明らかにしています。 ダム予定地の川原(こうばる)地区に住む住民が振り返ります。約20年前に結婚して地元に妻を連れてきたとき、「石木ダム反対」の看板があちこちにある川原地区の風景を見た妻からギョッとされた、と話しました。「それほど長い運動で、子どもの頃から見慣れた風景。それが自然だった」と語りました。 同地区は、ダムが完成すれば、ほとんどが沈んでしまいます。山に囲まれ、川には清流が流れ、田園風景が広がる自然豊かなところです。毎年ホタルの季節には「こうばるホタル祭り」が開かれ、今年も多くの人たちでにぎわいました。 地権者の誰もが、口をそろえて訴えます。「ふるさとの豊かな自然を守りたい。強制収用なんて許されるのでしょうか」 |
|
Tweet |