苦しみ今も カネミ油症事件4
「しんぶん赤旗」2010/3/7
国の責任大きい
         *写真は北九州市での署名活動 2009年5月

  これまで国は、「国に法律上の責任はない」との態度をとり続けてきました。

 しかし、被害者は、油症の原因がダイオキシン類であることを事件発生後から知り得ていた国が「それを隠し、被害者を放置してきた国の責任は極めて大きい」と怒りを込めます。

 油症事件に先立ち、西日本一帯で鶏が大量死するという事件が起こっています。原因は、カネミ倉庫製のダーク油を使用した飼料が原因でした。ダーク油は米ぬか油製造過程で発生する副産物です。

調査していれば

 「このとき国が調査していれば多くの人が救われた」とカネミ油症五島市会の宿輪敏子事務局長(48)は指摘します。

 「わたしたちは国によって甚大な人権侵害を受けてきた。食中毒事件としても公害被害者とも認めず、法的根拠のない認定基準をつくらせ、認定、未認定と分けられた」と告発しました。

 1970年代、裁判所は下級審で国の責任を認め、国は原告に損害賠償の仮払金を支払いました。しかし、その後最高裁で原告敗訴の可能性が高まり、原告が訴えを取り下げました。そのため国は原告に仮払金の返還を求めたのです。

 この仮払金返還問題は、被害者に深刻な精神的苦痛をもたらしました。生活費と医療費で仮払金を使い果たした人の中には自殺した人もいます。

 被害者は日弁連に人権救済を申し立て、2006年、日弁連は国に対し被害者の救済を勧告しました。

恒久救済法早く

 同年、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は質問主意書を提出。仮払金問題の解決とあわせて、国に未認定者を含めた被害者の救済策を求めています。

 被害者の声に押され、2007年、仮払金返還を免除する特例法が成立し、この問題は終息しました。しかし、被害者は治療法も補償もなく、苦しみは続いています。

 被害者たちは、国の責任の明確化や被害者の実態調査、医療費の公的負担、治療法の研究、認定基準改定などすべての油症被害者の全面的な恒久救済法を早急に求めています。

 今年一月末に開いた集会で被害者の一人は訴えました。「40年間の苦しみは口でいい表わせるほど生易しいものではありません。一日も早い治療法の解明とカネミ油症救済法の成立をお願いします」
(おわり)