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深刻化する症状
現在、新認定患者を中心に48人がカネミ倉庫に損害賠償を求めて福岡地裁小倉支部で裁判をたたかっています。
カネミ油新認定訴訟です。
原告団長の古木武次さん(79歳・長崎県五島市・写真右)は2004年に認定されました。その後、妻と子ども1人も認定されましたが、ほかの子ども3人は未認定です。
不思議な会社側
古木さん自身、倦怠感や筋肉の痛み、糖尿病、結膜炎、上顎骨髄炎、大腸ポリープ、下痢などの病気とたたかってきました。
妻も坐骨痛、関節痛、下顎骨髄炎、自立神経失調症、肝臓肥大、膀胱炎、腸ポリープ、過敏性の下痢、ほかにも数えきれないくらいの病名をかかえています。
古木さんは、「カネミ倉庫は被害者に未曾有の被害を与えていながら、賠償金は支払わず、被害者の痛みや苦しみを全く理解していない」と強い憤りを口にします。
カネミ倉庫との補償交渉で会社は資力がないことを理由に要求を拒否しています。不誠実な同社の対応に被害者は2008年5月提訴に踏み切りました。
北九州市に住む60代の男性は法廷で、さまざまな病気に苦しんできた40年間を語り、訴えました。「わたしは(認定された)2008年に油症になったのではない。1968年から油症だったはず。これまでの被害を補償してほしい」。
次世代への影響
被害者の検診に取り組んできた熊本学園大学の原田正純教授は被害の実相について証言しました。
油症の症状は「特徴がないのが特徴」だと述べ、一般的な疾患が複数、高い頻度で現れると指摘し、「40年たって症状は深刻化している」と告発しました。
さらに、国の認定基準について、ダイオキシンの経口摂取は人類初めての経験であり、認定基準を定めてもそれは一時点での仮説に過ぎないと強調。「それを定説化することは事実を切り捨てることになる」と批判しました。
油症発覚から40年以上。被害者は高齢化し、救済措置もないまま亡くなった人も多くいます。
同じ油を食べながら認定、未認定と分かれている家族。油症に対する差別を恐れて受診しない人たち。次世代への影響も未解明です。(つづく) |