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認定わずか14%
カネミ油症は、カネミ倉庫製の米ぬか油(カネミライスオイル)に、その製造過程で熱媒体として使用されたPCBが混入したことで引き起こされました。
PCBを製造したのは鐘淵化学工業(鐘化・現カネカ)です。
油を食べた人たちは、吹き出物やめまい、吐き気、発熱、しびれ、内臓疾患などの症状に襲われました。「黒い赤ちゃん」も問題になりました。
原因不明の「奇病」がその後、カネミ倉庫の米ぬか油が原因であることが判明。西日本を中心に約1万4000人が被害を届け出ました。
しかし、九州大学油症治療研究班が発表した皮膚症状を中心にした「診断基準」で認定患者はわずか1800人程度にとどまりました。
賠償金は払わず
1969年から被害者たちは裁判に立ち上がり、約1900人がカネミ倉庫やPCBを製造した鐘化、国などに損害賠償を求めて提訴しました。
87年、裁判はカネミ倉庫が一人500万円の賠償金と治療費を、カネカは一人300万円の見舞金をそれぞれ支払うことで和解し、事件は終結したかのように見えました。
しかし、カネミ倉庫はわずか23万円の見舞金と医療費の自己負担分が支払うだけ。経営難を理由に賠償金は支払っていません。
被害者は病気で仕事も満足にできず、医療費の重圧で経済的にも追い込まれていきました。
その後、油症の原因が、PCBが熱変性してできたPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)などのダイオキシン類であることが判明。2004年、国は認定基準にダイオキシンの血中濃度を追加しました。
14000人が届け出
しかし、基準が改定されたことで新たに認定された被害者はわずかです。
事件発生からこれまでの認定患者は全国で1927人(うち生存者1394人。2009年3月末現在)。当時被害を届け出た人が1万4000人だったことを考えればわずか14%に過ぎません。
新認定患者となってもカネミ倉庫から見舞金と認定後の医療費の自己負担分が支払われるだけです。
事件発生から認定されるまでの30数年間、医療費の支払いに苦しみ続けたにもかかわらず、認定以前の補償はありません。
(つづく) |