米軍佐世保基地の変貌(上)


 ながさき平和委員会はこのほど佐世保基地調査を行いました。在日米軍再編のもとで佐世保基地はどうなっているのか―。日本共産党の山下千秋・佐世保市議の案内で基地の現状を見ました。
 

 山下市議がまず案内したのは、前畑弾薬庫。海岸沿いに、瓦屋根のポゴタ式とよばれる弾薬庫とトンネル式のそれが合わせて34棟。

 それぞれの棟には弾薬の危険度を示す1〜4の数字が掲示されています。数字が小さいほど危険度が高いといいます。トンネル式の入り口には「1」の文字が見えます。弾薬庫の後方には民家が密集。最も近いところは70bしか離れていないといいます。

 44町内会が弾薬庫撤去の住民運動を始めますが、米軍は住民の願いを逆手にとり針尾島弾薬集積所に弾薬庫建設を要求。

 使い勝手の悪い現在の弾薬庫に代わって、日本の「思いやり予算」で艦船が横付けできる近代的な弾薬庫をつくろうとしています。その費用は安久ノ浦湾の埋め立てなど総額1000億円以上といわれています。

 「軍事機密」を理由に米軍が明らかにしないため、新弾薬庫にどれだけの弾薬が貯蔵されるのかは不明といいます。

 山下市議は「住民の要求を逆手にとり、日本の税金で基地増強をはかるやり方は普天間と同じ」と指摘します。

 米軍のLCAC基地に行くためだけの、市議が「LCAC道路」と揶揄する市道を通って崎辺地区へ。LCACは、部隊や物資の輸送をおこなう上陸作戦用の水陸両用艇です。

 現在、隣の西海市横瀬に新基地を建設中(写真上)であり、これが完成すれば崎辺は返還され、跡地は自衛隊が使用する計画です。

 ここに大型桟橋をつくることでさらに多くの自衛艦が配備可能となります。米軍は横瀬に新LCAC基地。自衛隊は崎辺で施設増強。山下市議は、「軍・軍住み分け」だと批判しています。

 軍用道路との指摘もある西九州自動車道のインターチェンジ(IC)工事現場。ICは米軍基地の正門につながっています。

 わずか2・9`離れたところにすでにICがあるにもかかわらずです。「針尾にある米軍住宅から15分以内に基地に到着するため」に米軍が要求したものだといいます。

 しかも、基地が道路から見えないように「シェルター」をつくっています。この道路の建設費は1`あたり約200億円。通常の高速道路建設費の4倍です。

米軍佐世保基地の変貌(下)

 佐世保を母港とする強襲揚陸艦エセックス。接岸する立神岸壁の入り口には監視台があり、カメラがこちらを向いています。

 「エセックスの母港化で佐世保が出撃基地としての役割を担わされることになった」と話す山下市議。゜

 エセックスはここからイラク戦争に出撃しました。同艦は500床、6つの手術室をもつという医療船でもあります。

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 続いて針尾の米軍住宅へ。現在532戸の米軍住宅があります。すべて「思いやり予算」で建設されたもので、1戸当たりの建設費は約4200万円といいます。

 米軍は前畑弾薬庫返還の条件の一つとして住宅建設を持ち出しています。ハウステンボス駐車場を米軍に提供し、高層住宅を建設する予定です。

 佐世保湾内を結ぶ定期船に乗り、海上から調査。横浜港の2・5倍という広大な佐世保港ですが、船が少なく、漁船も貨物船も見当たりません。というのも港の83%が米軍への提供水域となっているためです。

 「佐世保港にはかもめがいないでしょう。人の生活のあるところにしかかもめはいないんです」。

 タンクが並ぶ赤崎、庵崎の貯油所。西海市の横瀬貯油所と合わせ、3施設の貯油能力は約85万`gです。これは米軍貯油施設のなかで第2位。太平洋で行動する第7艦隊が3か月間行動できる量だといいます。

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 削られて茶色になった山肌が見えてきました。前面の海は埋め立て工事中です。横瀬のLCAC新基地建設現場です。建設費250億円。

 崎辺の現基地には7機が駐機していますが、この新基地は12機の駐機設備を予定しています。米軍のLCAC基地は米国に2か所あり、海外にあるのは佐世保だけといいます。

 これが完成すれば太平洋配備の3分の1が佐世保に配備されることになり、出撃基地としての役割がますます鮮明になっています。

 米軍によれば、佐世保基地の任務は燃料貯蔵、弾薬貯蔵、船舶修理、乗組員の休養等の4つとなっていますが、山下市議はこのほかにもうひとつの役割があるといいます。それは「日米共同作戦基地」だということです。

 米海兵隊と佐世保の自衛隊との共同訓練など、米軍と自衛隊が一体となって有事に即応する態勢が進んでいると指摘します。「在日米軍再編計画に『佐世保基地』はありません。なぜなら佐世保ではすでに再編計画を先取りしているからです」。