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石木ダム
事業推進 長崎県動く
強制収用招くと住民反発
長崎県と佐世保市が川棚町に建設を計画している石木ダムで、県は事業認定申請手続きを進める意向を表明し、事前説明会を開くなど事業認定へ向け動き出しています。一方、地権者やダム建設に反対する住民は「土地収用法に基づく事業認定は強制収用に道を開くもの」として強く反発しています。
(原口一二美)
石木ダム(写真左は予定地)は、川棚川の治水と佐世保市の水不足の解消を目的としています。総貯水量548万d。川棚川の支流である石木川に建設する計画です。総事業費285億円(国125億円、県93億円、市67億円)。これまでに既に132億円以上を支出しています。
県がダム建設の予備調査に着手したのは1972年。県と建設予定地の地権者はダムをめぐって対立してきました。
地権者は「石木ダム建設絶対反対同盟(写真下は団結小屋)を結成し、白紙撤回を求めてきました。1982年、県が機動隊を導入して強制測量を行ってから対立は決定的に。その後、県の切り崩しにより地権者の約8割が同意し、代替地へ移転しましたが、\世帯が今なお反対し続けています。
佐世保市や川棚町は、「水不足解消には石木ダムしかない」「100年に一度の洪水に対処するため」としてダム建設を促進。住民を巻き込んだ決起集会も開かれ、県議会や市・町議会も建設推進の決議を上げています。
一方、ダム建設に反対する住民らはダムに頼らない治水を訴えています。佐世保市でも住民団体が市の漏水問題などを追及。「佐世保市の水は足りている」と県や市の主張に反論しています。住民団体が5月に開いたシンポジウムで、利水・治水それぞれの専門家は「石木ダムは不要」と結論づけました。
反対同盟の地権者やダム建設に反対する人々は、事業認定申請に反対する署名を開始。事業認定手続きを行わないよう求めるとともに、ダムの必要性について第三者機関の設置と専門家を含めた公開討論会の開催を要求しています。
ダム反対の動きが広がる中、住民団体が県知事あてに提出した先の署名を県がコピーし、「情報を共有する」目的で関係自治体に配布するという事件が発覚しました。住民の正当な権利を逆手にとった県の行為に住民団体は、「反対の動きを押え込むためのもの」だと強く抗議しました。
県は、事業認定は住民参加の機会が保障され、「オープンな議論ができる」と主張しています。しかし、地権者などがダムの必要性からの議論を求めているのに対し、県は「白紙での議論には応じられない」との立場を崩しておらず、公正な議論ができるのか極めて疑問です。
民主ながさき県政をつくる会の深町孝郎事務局長は、「石木ダム計画には、佐世保市の必要水量への疑問や異常に多い漏水問題などがあります。計画を白紙に戻し、本当に必要なダムかを検証すべきです」と話しました。 |